俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

よだれ出ちゃう

週末、研修旅行へ行ってきた。

仕事なので断ることもできず、しかたなく行ったのだが、こういった旅行は本当に苦痛だ。


何が苦痛って、歯磨きをしている姿を人に見られるのが苦痛だ。


オイラの歯を磨く様子が人と違うと気づいたのは、高校1年のキャンプのときだった。


まず歯ブラシに歯磨き粉をつけ、前歯を磨く。これは普通の人と同じだ。

しかしその先が他の人と違う。

オイラは歯を磨いているうちに、異常によだれがでるのだ。

それはもう、歯磨き粉を全部洗い流すぐらい。

まだ前歯しか磨いていないのに、よだれで歯磨き粉がすっかり取れてしまっている。

よだれは当然、口から垂れる。

気づくと手はもう、よだれでべちょべちょだ。

しかたなしに、洗面台にかがむような姿勢になる。

よだれは口から洗面台へと垂れるのだが、オイラのよだれは粘着力が強いのか、納豆のようにネバネバはつながったままだ。


子供の時から「歯磨きの時はよだれで手がベチョベチョになるものだ」「よだれはネバ~と糸を引いて洗面台に垂れるものだ」と思っていたので、そのまま何の疑いもなしに磨き続けていた。

さらにオイラは歯磨きの最中、よく嗚咽するのだ。

「オエっ!!」「ウエっ!!」「オッ、オオッ!」

高校生のときから、”おっさん”ぽかったのだ。



高1のキャンプのとき、友だちにその姿を見られ

「え!どうしたの?何してるの?」

と言われて気づいた。たしかに傍から見たら、酔ってゲロを吐いているようにしか見えない。


それに引き換え、友だちの歯を磨いている姿はスマートだ。


背筋はピンとまっすぐだし、口の周りに泡をつけていない。

もちろんよだれは垂れていないし、なんだったら歯を磨きながら動き回ることもできる。

オイラにはそれができない。

歯を磨いている間は、洗面台を離れることはできないのだ。


そういえば、昔トレンディドラマで浅野温子が歯を磨いているのを見て俳優になるのをあきらめたこともあった。

「オイラは歯を磨いている姿をドラマで見せられない」
(もっとも、俳優をあきらめざるをえない理由は他に山ほどあったが・・・)


一度友だちに「途中で一回、ペッってやったら?」と言われたことがある。


そこでよだれが出そうになった時に「ペッ」とやったら、歯磨き粉がよだれとともに全部出てしまい、口の中がカラッカラになってしまった。

しかたなくもう一度、歯磨きををつけなおした。
しかし釈然としない。

結局、家ではよだれべちょべちょのまま、洗面台にうつむきながら歯を磨いている。

そして研修などで、だれかと並んで歯を磨かなければならないときは、途中でペッっと吐き出すが、時間をずらして一人で歯を磨くようにしている。


こうしてオイラはまた孤独感に苛まれるのであった・・・