俺よ、男前たれ

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ある意味横綱相撲① 名古屋場所15日目 照ノ富士戦

大相撲名古屋場所15日目千秋楽、横綱白鵬大関照ノ富士との無敗対決を制し、44回目の優勝を全勝で飾った。が、その取り組みは大きな物議を醸した。

が、やっぱりすげぇぜ白鵬関。

好角家ではない、ただの白鵬ファンの僕から言わせてもらいたい。

あのエルボー・・・もといカチ上げは・・・・芸術的だ!

ちゃんとファンを喜ばせている。

~戦う君の歌を 戦わないやつらが笑うだろう・・・ファイト!~

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行司の「待ったなし。手をついて」の声がかかると、白鵬関は心理戦をもちかけた。

悠然と立って相手を見据えたのだ。相手を睨む”視殺戦”ではなく、明らかに”揺さぶり”だった。照ノ富士関もそれに気づいてしばらくは応じていたが、先に蹲踞の(そんきょ)の姿勢を取った。すると白鵬関はその心の内を覗こうとしているかの如く上から見下ろし、腰を下ろした後もじっと何かを覗き込むように見てきたので、照ノ富士はそれを嫌がって何度か目を逸らし、手をついて構えた。

(この心理戦は白鵬が勝っていたように見えた。本当にそうなのかはわからないが、そんなことを想像して観ると相撲はおもしろい)

白鵬は立ち上げると左手で猫だまし的な目隠しからの右のカチ上げ!

その後はわざと大ぶりの横張り手で相手を挑発し、相手がムッとして応じた途端に懐に入って右上手を奪取。照ノ富士が左のおっつけをしてきたらすぐに右手のほうに体を翻しての小手投げ!

白鵬はとにかく対応が早い!照ノ富士のあらゆる攻撃の芽を即座につぶし、先に動くことで相手を翻弄していた。精神的に有利に立ち、経験と反射神経、勝負勘で圧倒した取り組みだったように思う。

白鵬-照ノ富士 千秋楽の一番 令和三年七月場所 SUMO - YouTube

で、立ち合いのカチ上げ。

なにかと物議を醸すこのカチ上げだが、白鵬のそれはもはや芸術の域に達していると思う。左の張り手で相手の顔を(向かって)右に曲げさせるとそこはまさに右カチ上げの軌道上。ボクシングのワン・ツーのように見事に、見事に決まるのである。

よく「カチ上げが来る可能性があるのはわかってるんだから、考えて当たればいいのに!」とか「相手も白鵬にあのエルボーを喰らわせてやればいいんだ!(仕返しが怖いけど)」なんていうカキコミを見かけるが、おそらくそれは無理だろう。

まず白鵬相手にがっぷり四つに組むのはハナから勝ち目がない。だからよほど体が大きいか手が長いといった身体的特徴がない限りは格下の力士は頭から当たって白鵬の体を起こすか、後ろに押し出すしかない。そしてそれは当然、白鵬のカウンター式ワンツーカチ上げの餌食になる。

では思い切りぶち当たらずに相手の出方をうかがったらどうか?それも得策ではない。横綱白鵬が立ち合いで格下の相手に頭からぶち当たってくることはまずないので、白鵬相手に同様のカウンター式カチ上げを決めることはほぼ不可能だし、相手の出方を伺っても横綱は「どうぞいらっしゃい」と招き入れて捕まえてしまう。捕まって組まれたらもう終わりだ。

つまりあのカチあげが決まるのは白鵬横綱相撲ができるからこそなのだ。

かつての曙のように大きくて長い腕で突き放せない限りはあのカチ上げを喰らう可能性は避けられない。

 

「あれはカチ上げではない!エルボーだ!」と文句を言う人もいる。確かに従来のカチ上げではない。単なる突き押しの技術の一つだったカチ上げを、それだけで相手をぐらつかせるほど衝撃のあるものに進化させたものだろう。

 

そういえば2020年のM-1グランプリで「マジカルラブリーのネタは漫才か、漫才じゃないか」なんて議論があったな。これだけ笑いの形が多様化して、みんなが”新しい漫才の形”を生み出して笑いを取ろうと試行錯誤しているこの令和に、「漫才」か「コント」の2つだけでカテゴリー分けしようとする不毛な議論だった。

 

そういえばかつて舞の海さんも合気道とかからインスピレーションをもらって「ぐるぐる舞の海」なんて技を次々生み出して小さい体をカバーしていたけど、その舞の海さんが自分のことは棚に上げて白鵬のことを「そこまでして勝ちたいか?」なんて責めているのは何の冗談だろうか。「僕は小結が精いっぱいだったけど、白鵬君は横綱だから。みんなの見本にならなくちゃ」ってことかな。

 

それにしてもみんな「相撲」とか「横綱」にどんだけきれいな理想を押し付けたいんだろう?

そもそも相撲ってそんなに美しい世界だっけ?力士とか相撲関係者ってそんなに清廉潔癖な人たちばっかりだっけ?

僕は相撲の歴史には疎いんだけどさ、昔の(昭和の)横綱ってみんな聖人みたいな人たちばかりだっけ?

相撲の興行とか、相撲協会の組織とか、相撲部屋のしきたり・人間関係って、そんなに立派なものだったっけ?八百長って言葉の由来って何だったっけ?

そんなことには目をつぶって「相撲は神事だ」「相撲は国技だ」「相撲は伝統だ」「昔の横綱は品があった」って・・・よく言えるなぁ。

白鵬の記録には及びもしない元力士たちとか、ちびっこ相撲大会を10年以上も開催している白鵬の相撲界への貢献度に及びもしない相撲関係者たちとか、自分で考えず教えられた古いやり方しかしてこなかった人たちとかが、よく白鵬にものが言えたもんだなぁ。

まあもちろん言ってもいいんだけど・・・白鵬関の耳に入れる価値があるかなぁ?

そんな声に耳を傾ける暇があったら白鵬関は体を維持し、勝負に勝つための工夫・努力をし続けて行動すると思うけどなぁ。

守るものは他にもあるしね。

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