俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

張(はり)さんのトリセツ

AD「じゃあ、もう一度リハ、お願いします。」

張本「え?また?」

AD「ええ、生放送で間違えるわけにはいきませんので」

張本「なんで何度も何度も。別に謝らなきゃいけないことなんて言っとらんぞ」

AD「ええ、ええ、そうですよね?別にメダルに噛みついたわけでもないですしね~」

張本「失礼なことは何もしてない!入江選手を応援してるのに(怒)」

AP「ええ、張本さん、お気持ちはわかるんですが、ここはその~、張本さんに大人になっていただいてですね。」

張本「しかしだな・・・」

AP「あ、我々もね~、そんなに~ね、あれですよね?最近はどうもネットでギャーギャー言う奴が多くなりましたね~」

張本「そんなのにいちいち振り回されてないで、堂々としてたらいいんじゃないのか?」

AP「いやまあ、我々もそうしたいんですけどねぇ~。最近はもう、こういうご時世ですから、早めに処理したほうがいいと申しますか、ね、一応”お騒がせしました”ってことを言っておけば、あとは『のど元過ぎれば・・・』っていいますしね」

張本「そんなもんかね」

AP「ええ、ええ。そりゃもう。我々としましてはですね、ぜひとも番組を続けさせていただいてですね、引き続き張本さんにバッサバッサと切っていただきたいと。」

張本「うん、まあね。私もね、番組は続けたいと思っておるわけですよ」

AP「ですよね?ですよね?もうウチの番組は張本さんのコーナーでもっているようなもんでして、ここだけの話、スポーツコーナーが終わるとちょっと視聴率が下がったりしてますしね」

張本「まあ、そういう人もいるだろうね。」

AP「ですから、張本さん自ら、説明いただければですね、スポンサーも視聴者も納得してくれること間違いなしですよ。番組としてもフォローいたしますので」

張本「まあ、君がそこまで言うなら、やりましょう、私もひと肌脱ぎましょう」

AP「ええ、ええ、お願いします。」

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AD「はい、ではよろしくお願いします。司会の関口さんから話がふられます、張さん、3,2,1・・・」

 

張本「え~、この度はですね、私の説明の言葉が足りませんで、私ももっとちゃんと話せればよかったんですけども、時間の制約などがありましてですね。私はですね、ボクシング連盟宛ての手紙にも書きましたけれども、入江選手の快挙に飛び上がって喜んだ一人です。女性なのによく、あそこまで練習してですね、がんばったと。普通はできません。女性はスタミナがないですから。あんな小さな体でね。なのに清水選手は本当によくやったと、褒めてやりたいね。あれだけね、練習するのは大変なんですよ。体つきもね、女性らしさがなくなっちゃうしね、生理が止まる選手もいるらしいですよ。ましてやボクシングでね、あれで鼻でも曲がったら嫁にもいけませんよ。それなのに清水選手は素晴らしい!アッパレだ!世間では私のことを”女性を下に見ている”なんていう人もいますけどね、私は女性をいつも尊敬してます。女房なんて料理、掃除、洗濯なんか全部やってくれましてね、感謝してます。女房も女のくせに腕っぷしは強かったのでボクシングやってたらいい線いけたんじゃないかと思いますがね。それでも清水選手には適わないでしょう。清水選手はね、やはり女を捨ててね、好き好んで殴り合いに命をかけるだけのことはあります。素晴らしいです!」

 

AD「・・・」

張本「・・・はい、終わり。どう?こんな感じで?」

AP「・・・えっと、いったん休憩しましょう」

 

(会議室)

部長「どうだ。張本さんは?いけそう?」

P「さっきAPから連絡があって、無理そうです。火に油を注ぐだろうって」

部長「まじか」

P「JOC元会長みたいになったらもう降板は免れえませんよ。最悪番組自体も・・・」

部長「・・・どうしたものか・・・」

D「番組で代わりに謝罪文を代読するというのはどうです?張さんには体調不良かなんかで番組休んでもらって」

P「今更そんなことするとまたへそ曲げますよ。難しいんだから、あの人」

部長「なんであの時、誰も止めなかったんだよ」

D「止められるわけないでしょ。というか止めらる人いないでしょ。ちょっと反抗されただけですぐキレるんだから、張さん。関くちさんだってなだめるのがやっとですもん」

P「E川さんもそれで降板させられたしね」

部長「じゃあとにかく、できるだけ張さんにしゃべらせない方向で考えよう」

P「まあ、TBSとして、あと番組として謝罪をして、あとは張さんにちょっとだけ頭を下げてもらう?」

D「ま、”反省しています”ぐらい言っておけばね。」

部長「反省するかね?」

P「ま、反省だけなら猿でもできますよ(笑)」

D「じゃ、張さんには時間がなくなってしまったから10秒だけお願いしますってことにしましょう」

P「あ、それいいかも。10秒だったら余計なことしゃべる暇ないし、お詫びだけ言ってあとは関くちさんにまとめてもらう」

部長「じゃ、おれからも関くちさんに言っておくよ」

 

そして本番

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本文とは関係ありません

*創作です。登場人物は架空の人物です。