息子の授業参観にて思ったこと。それは
先生からしたら、あの子の存在はありがたいだろうな
ということ。
先日、小学4年生の息子の授業参観に行ってきた。
授業参観って、なんかいいよね。僕が通っていた学校ではないけど、小学校ってのはやはり懐かしく、青臭くていい。父親になっておいて良かったなぁと思う。
僕は子供の頃から勉強も運動も得意だった。学級委員もよくやったし、児童会選挙に当選して書記長にもなった。通信簿もほとんど◎で女の子にもモテた。最初のモテ期だった。
ただ息子はそうではない。まだ”やる気スイッチ”が全く入っていない。運動も勉強も大嫌いで、中でも数学と漢字が苦手だった。最初は放っておいたら3年生の時学校の先生の方から「ご家庭でも勉強を見てあげてください」と泣きつかれた。そんで僕が仕事から帰ってから漢字と算数の勉強を見るようになった。で、漢字のほうは毎日こつこつやってたら人並みにはできるようになったのだが、算数は相変わらずだった。ひっ算の中の単純な足し算、引き算、掛け算も間違えるし、文章題となると壊滅的だった。引き算を使うのか、掛け算を使うのか、全く見当がつかないようである。ま、最近は我が家も電子マネーで支払うので”お釣り”の概念が育たないこともあるかもしれない。幸いなのは、息子は勉強ができなくてもあまり気にしていないことで、「0点じゃなかった」と喜んでいるのである。「他の子より勉強ができなくて落ち込んだりしない」というのはまあ、今の時点ではいいことなのかもしれない。
くしくも授業参観は算数の授業だった。前回の授業参観にも来ている妻から「息子はクラスで一番背が高いのに最前列に座っている」「建前は”目が悪いから”だが、メガネをかけるのが嫌いらしくモニターを見る時以外はメガネをかけていない」「姿勢がすごく良くて後ろから見るとまじめに聞いているように見えるが、実は全く聞いていない。どこを勉強しているかさえもよくわかっていない。」と聞いていた。
確かに息子は最前列で先生からしっかりマンツーマンで指導を受けていた。若い女性の担任が「じゃあ、38ページの1番の問題を解いてみてください!」と言うと同級生たちは一斉にノートに書き始めるのだが、息子は「ん?」という顔でキョロキョロしはじめる。先生が息子の机に横に立ち、黙って「ここ!」と指をさす。その後先生は息子の横から教室全体の様子を見守るのだが、その間もうちの息子がわかっているかどうかを気にかけてくれている。こんな感じで完全に「できない子」「ぼーっとしてる子」「バカな子」認定を受けているのである。先生のあまりの熱血指導ぶりに他の子たちが「〇〇君、いつも先生に怒られてる!」「可哀そう!」「先生ひどい!」と親たちに報告しているそうなのだが、当の本人は怒られているという自覚がないようで、あまり気にしていない。むしろ「ぼーっとして話を聞いていない」という自覚があるようで、「先生にたまに注意される~」と笑ってごまかしている。(*父親である僕に怒られるほうが怖い様子)
そんな息子だが、実は目立ちたがりなところがあり、先生が「これわかる人!」と聞くと「はい!はい!」と賢い同級生に混じって手を挙げるのである。「絶対にわかってないよな」というのは先生も僕もわかっているのだが、あまり無視するわけにもいかないので1時間に1回は指してあげると、やはり間違えるのである。ひどいときには「え~っと、え~っと・・・忘れた・・・」なんてドリフのコントみたいなことを笑顔でするのである。
今回の授業参観でも
先生「この図形の形、昨日勉強したね。覚えているかな~?」
息子「平行四角形!」
先生「え?何ですか?もう一度言ってください!平行・・・?四辺形だね!間違えないように、ちゃんと覚えましょう!」
先生「平行四辺形の残りの2辺を書くとき、何を使いますか?」
児童A「三角定規!」
児童B「コンパス!」
先生「そうだね。」
息子「分度器・・・」
先生「・・・あ、うん、分度器でもできなくはないね・・・」
先生「平行四辺形の特徴、覚えているかな?」
児童A「平行の線が2組あります!」
先生「そうだね。他には?わかる人」
児童B「はい!向かい合う角の角度が同じです!」
先生「はい、よくできました」
息子「あ~~、そうだった。思い出した(笑)」
先生「思い出した?それは良かった。じゃあ教科書をもう一度見てみましょう」
なんて場面が45分間に繰り広げられていたのだが、僕は息子に感心してしまった。そして「ああ、これは先生にとってはありがたい存在だろうな」なんて思ってしまった。
息子はいわば”おバカタレント”の役目を果たしているのである。池上彰さんの番組で言えば坂下千里子さんのような役割。何度説明してもいつも「初めて聞いた!」みたいな新鮮な反応をしてくれ、当たり前の説明を「え~、すごい!」と言って聞いてくれる。「これ、わかるかな?」と問えばちゃんと答えを間違えてくれ、説明する気満々の先生へバトンを渡す。
そもそも各クラスに3割くらいいる賢い小学生というのは先生にとっては結構邪魔な存在で、授業中、何かを説明しようとすると「それ知ってる!」「塾で習った」「俺、答えたい!」なんて主張してくる奴や、「これなんだと思う?ちょっとみんなで考えてみよう」と言っている途中で得意げに答えを言っちゃう奴なんてのもいる。先生はクラスの真ん中くらいのレベルの子に合わせて授業を進めたいのである。教案通り「みんなで考える時間10分!」みたいに進めたいのである。カズレーザーならしばらく黙っていてくれるが、小学生の賢い子たちは空気を読まずに「俺知っているもんね」とアピールしてきて承認欲求を満たしたがるのである。(それをしれっとスルーする先生)
そんな中、クラス認定の”わかっていない子”、”おバカ回答を連発する子”がいると先生は「じゃあ、もう一度説明するね」「みんなでもう一回練習しようか」と言う正当な理由ができ、クラスの真ん中辺のレベルに合わせるべくペースダウンすることができるのである。また「あ~そうなんだ」「なんとなくわかった」といちいち声に出してリアクションをするおバカな息子がいると、先生としてはライブ感がある授業が味わえる、ような気がする。あくまで親バカの勝手な解釈だけど。