僕はお腹の弱い子だった。
朝、冷たい飲み物を飲むとすぐお腹を壊した。
だから小学生ながら、朝からお茶をすすっていた。
僕が子供だった頃、学校でうんこをすることはタブーだった。
友達に見つかったら最後、卒業までバカにされた。
だから小学生の僕は朝起きて、食事をし、20分ほど休憩し、20分ほどトイレにこもり、それから学校へ行くのが習慣だった。
朝、起きてから家を出るまでに最低でも1時間はかかった。
よくテレビドラマやアニメなどで”パンを食いながら走って学校へ行く”とか”ご飯と味噌汁をかっ込んですぐ家を出て行く”なんてシーンがあるが、僕にとってはありえなかった。
そしてその習慣が35歳になった現在でも続いているのである。
(現在は冷たい飲み物を飲んでも大丈夫だが、髭を剃ったり髪型をセットしたりで出発までに平均75分はかかる)
まあ、さすがに今は会社でうんこをしたぐらいでいじめられることはない。
でも、やはりできるならば排便は家で済ませたい。
僕はトイレに他の人がいると、落ち着いて大きいほうができないのだ。
他の人に音を聞かれるのも嫌だし、他の人の音を聴くのも嫌。
自分が個室に入っていて、他の人が小用に入ってきた気配を感じると
反射的に尻をすぼめて息を殺してしまう。
なるべく音がでないように・・・・
そんな僕だから、できるだけ利用する人が少ないトイレを選ぶ。
僕の会社で言えば、地下のトイレがそれにあたる。
個室一つ、小用一つなので、個室に入ってしまえばまずそのトイレを占有できる。
ドアを開けて、個室が埋まっていれば、大抵の人はあきらめてくれる・・・ある人を除いて・・・
それが、「掃除のおばちゃん」だ。
毎朝、8時45分頃
彼女はやってくる。
毎朝、トイレを掃除するのが日課なのだ。
就業時間前に掃除をしたい気持ちはわかる。
しかし! 就業時間前にうんこをしたい人の気持ちもわかれ!
その日、たまたま家でやり残した僕は会社のトイレに駆け込んだ。
するとおばちゃんは僕が個室にいるにも関わらず、掃除道具を持って入ってきたのだ。
反射的に息を殺す僕・・・
おばちゃんは鼻歌交じりに小便器をゴシゴシこする。
ああ~、やべ、で、出る・・・
プリプリプリ・・・
小さな音を立てて、水気を帯びたウンコがしたたり落ちるが
運よくおばちゃんの鼻歌にかき消された。
(匂いはものすごかったが・・・)
おばちゃんは手際よく、床をモップを拭き始める。
個室のドアの下の隙間から
モップの毛先がちらちら見える
なぜ、このおばちゃんは僕が終わるまで待っててくれないんだろう・・・
僕はこのおばちゃんが終わるまで尻をすぼめていないといけないのか?
ドアを隔てて、すぐ隣りにおばちゃんがいて
ドアを隔てたすぐ隣りで尻を出して座っている僕がいる。
この3畳ほどの狭い空間のよどんだ空気の中で
おばちゃんの鼻歌だけが響く密室で(地下のトイレなので窓がないのだ)
じっと息を殺すこと4分45秒
おばちゃんはやっと出て行った・・・
と同時に、緊張の糸が切れた僕の尻から
ボタボタと何からこぼれ落ちた・・・・
はあ、今日も嫌な一日になりそうだ・・・