俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

日曜朝の公園は・・・

日曜の朝、久々に運動でもしようと公園へ向かう。

家の近所の公園はかなり面積が広く、

犬を連れた人々の集まり、カワセミの写真を狙うカメラマンの集団、遊戯を携えた親子、運動部の学生などがたくさん訪れる。


僕は一人、ラジオ体操、自己流の運動などを繰り返す。


僕のすぐ近くで、少年野球チームがトレーニングを始めた。

まだあるんだな。少年野球チーム。

しかも30人ぐらいいるぞ。

それだけじゃなく、コーチも5~6人、保護者も10人ぐらい来てる。

結構、大所帯の少年野球チームだ。


懐かしいな・・・。

僕も昔、少年野球チームに入っていた。

補欠が一人しかいない、弱小チームだったけど・・・。


少年たちはサイドステップ、クロスステップで競争をする。

「あ、僕もやったやった!あれ、得意!今でも得意よ!」

と思うのだが、さすがに「俺も入れてくれ!」なんてことを言える勇気はない。

少年達は2チームに別れ、馬跳びで競争をする。

「ああ~、馬跳びも超得意!マジ、ほんとに得意だった。いや、ほんと見せてやりたいよ」


いいな~、僕もやりたいな~

でも僕は無精ひげを生やした独身の35歳のおっさんなのだ。

しかも保護者でもなく、ただの部外者なのだ。


ああ~いいな~。

楽しかったな~少年野球時代。

学校でも一緒、放課後も少年野球で一緒。

仲間っていいよな~。


それに比べると大人の世界って世知辛いよな~。



すると俺のすぐ横を3歳くらいの女の子が駆け抜ける。

なんだ?なんだ?

そのすぐ後をお父さんが追う。


はあ、またか。

またまた「幸せ家族」か・・・。


お父さんは娘を捕まえて「つかまえた~」

娘は大喜びだ。

今度はお父さんが逃げると、娘がキャッキャッ言いながら追いかける

お父さんは10メートルくらい走った後、速度をゆるめ、娘に捕まる。

娘は大喜びだ。


これがお父さんの醍醐味だよな。

ゆっくり走ってあげるのがお父さん

がんばって走っているように見せつつ

つかまってあげるのがお父さん


いいよな~

僕には追っかけてくる人も

追っかける相手もいないもんな~。


一方、少年野球チームは400mのジョギングコースをつかったリレーが始まった。

リレーか・・・。


そういえば、僕が高校生のとき、野球部でこんなランニングをさせられた。

1周200メートルほどのグラウンドを野球部全員でダッシュ

1位と2位の選手が抜ける

3位以下はもう一周、ダッシュをし、さらに1位と2位が抜ける。

ビリのやつはずっと走っていなければならない、というやつだ。

僕は当時、野球部で5番目くらいに足が速かった。

簡単に言えば、3周目で抜けられる計算だ。

だからできれば1周目と2周目はゆっくり走って体力を温存したい。

しかし野球部監督は当然それを許さない。

だから僕は一生懸命走った・・・・・・・・・・・・フリをした。

力を抜きつつ、一生懸命走るフリ!

1周目で1番速い奴と2番目に速い奴が抜け、

2週目に3番目に速い奴と4番目に速い奴が抜ける。

3週目。

 

僕はここぞとばかりに全力を出し

見事にゴールイン!


こんなことばかりしていた。


そしてあれから20年たった今も、

僕は全速力で走るフリだけをしている。

「全力を出すのはまだ先・・・」

そう自分に言い聞かせ、ちょっと苦しい顔を見せながら、余力を残しつつ走っている。

苦しい顔を見せると、どこからか「がんばれ!」という声がかかる。

「うん、僕、大変だけどがんばる!」と答え

一生懸命走る演技に熱を入れる

「ゴールはまだ先、いつか全力を出すときのためにエネルギーを保存しなければ・・・」



20年前と違うこと

それは


自分が今、何番目にいるのか

そしていつ本気を出せばいいかがはっきりしていないこと


だから計算しながら走ることができず

常に全力を出しているやつには、いとも簡単に抜かされてしまうことだ。



「いや、まだまだ・・・ゴールはきっと先だって・・・」



根拠のない言い訳だけがうまくなる。