通勤電車の中で、なんとなく読みたい本というものがある。
小説でもなく、PHP文庫モノでもなく
何も考えずに読めるような頭のゆるい本
僕の場合は大抵は旅行記やエッセーものがそれにあたるのだが、
今回、図書館で借りてきた、さくらももこ『またたび』(新潮社)
やられました・・・・。
あとでネットでブックレビューを見たら、みな一様に「つまらない」という感想が。
ああ、買わなくてよかった・・・・・・・
この本、さくらももこ自身が編集している雑誌『富士山』の企画で、
世界中の観光地を2泊3日ぐらいで行ってくるというもの。
だが決して旅行本ではない。
ヨーロッパに行けば、金に糸目をつけず小物やガラス製品などを買いまくり
中国へ行けば現地の人がたまげるくらい大量の中国茶を購入する。
ヨーロッパでは中華料理を食べ、アジアではフレンチを食べ、ワインやビールを飲んで大騒ぎ
エステやマッサージは毎日欠かさず、
食べて寝て、買い物してマッサージしてもらう。ただそれだけ。
正直、読んでいて腹立たしくなるくらいの大名旅行
日本人旅行者が世界中で笑われ、カモにされる典型のような旅行。
しかも、この旅行は編集者が全て手配し、現地のコーディネーターもつけてくれるため、さくらももこは好き勝手をするだけ。
バックパッカーの旅になるような苦難の行程や仰天エピソードもない
「旅行っていいな」という感想よりも
「金持ちっていいな」という感想を持たせてしまう本だ。
いやしかし、さくらももこってのも偉くなったものだ。
特におもしろいわけではないのになんとなく見てしまう、日本の空気のようなアニメになってしまった。
実写化も度々されるし、グッズの売れ行き、エッセーなども好調と聞く。
ただ、この人の魅力は『ちびまる子ちゃん』の世界観に通じるような”ありきたりの日常にある面白さ”であったり、
「夫のトランクスを履いている」「便秘の時、肛門に指を入れて出した」というような、”女性らしさ”をあざ笑うかのようなエピソード
そしてキレと毒のある語り口調だったと思う。
しかし、少なくともこの本に関して言えば、文章にまったくキレがない。
「裕福になったとたん、”庶民感覚”を忘れてしまい、読者との心理的な距離を産んだ」
「昔は島田洋七のように、売れるためなら強引にでも面白エピソードを作ったのに、今は何を書いても売れるため努力しなくなった」
そんなことを感じさせる作品。
まあ、この本がたまたまつまらなかっただけということも考えられるので、断言はできないが
今のさくらももこを見ると、僕はこの人のことを思い出す。