開いている。
僕の部屋は開いている。
何が開いてるかって色んなものが開いている。
まず部屋のドアが開いている。
僕の部屋はアパートの階段から一番奥にあるから他の住民が僕の部屋の前を通ることはない。
だから部屋の中にいる時はドアは開けっ放し。
僕の部屋はドアを開けると部屋の中の全てが見える。
キッチンと部屋をしきるドアも取ってしまった。
ついでにベランダの窓を開ければ風通しはかなりいい。
部屋に入ると押入れが開いている。
閉めればいいじゃないかというかもしれないが、開け閉めが結構面倒臭い。
たんすというものを持たない僕は、毎日使うシャツだのパンツだのが押入れに放り込んであるのだ。
当然トイレも開けっ放し。
使っている時もそうでない時も。
ドアを閉めると狭いし臭いし暑いし暗い。
開けっ放しのトイレはなかなかに気持ちがいい上に、テレビの音も聞こえていい。
キッチンもいろんなものが開けっ放しだ。
まずトースターが開けっ放しだ。使った後のまま、次に使われる機会を待っている。
シンクの下、キッチンの上の棚の扉が開けっ放しだ。
それぞれに食材やら調理道具やらが入っている。
塩のふたもコショーのふたも砂糖の袋も開いている。
冷蔵庫はさすがに閉まっているが、炊飯器のふたは開けっ放し。
シャワールームも全開だ。
シャワーが終わったらドアは開けっ放し。
そうすれば中が乾燥するだろうから。
歯磨き粉のふたもシャンプーのキャップもシェービングクリームも制汗スプレーも、みーんなみーんな開いている。
僕は口だって開けっぱなしだし、チャックだってよく開いている。
“しまりがない”と人は言う。