俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

マスク・ド・プライバシー

マスクが大好きだ。

特に冬のマスクは最高にいい。


新型インフルエンザが猛威を振るう昨今、仕事を休むとそのまま収入が減る僕もご多分に漏れず、インフルエンザ対策にいそしんでいる。

手洗いうがいはもちろんだが、最近の置きに入りはマスクだ。


以前はマスクが邪魔でならなかった。

息苦しいし、蒸れるし、ゴムを引っ掛ける耳の後ろが痛いし、

何よりも数日間使い続けたマスクは臭かった。

なんだろう、あの臭いは?

間違いなく発生源は自分なのだが、食べ物の臭いではなく、息の臭いとも違う。

本当に”使い続けたマスクの臭い”とした言いようがない臭い。

僕はお金をケチって、同じマスクを2ヶ月くらいは使い続けるので、捨てる直前はもはやシンナーを吸う中学生のようにラリってしまう。

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が、そんなマスクが今はいとおしい。

正直、職場でもずっとつけていたい。


外出時、僕は背広の上にコートを羽織り、襟を立て、手袋をし、マスクをする。

防寒対策であるが、なんだが全身を包み込まれたような安心感がある。

できればマフラーと帽子、ルーズソックスなども履けたらもっといいのだが

「マフラーは女の子からプレゼントされるもの!」と36年間思い続けている僕は、今までマフラーというものを巻いたことがない。

暖かいニットの帽子もかぶりたいところだが、哀しいことに背広に合う帽子というのはなかなかない。

年配になれば多少は似合うが、若いサラリーマンに似合う帽子というのは未だにデザインされていない。

僕はこれ、デザイナーの怠慢、またはコロンブスの卵だと思うのだ。

「若いサラリーマンに似合う帽子」を流行らせようというデザイナーはいないものか・・・・。

ルーズソックスってのも履いたことないけど、あったかそうだよな。

サラリーマンが履く黒い綿の靴下は指先は蒸れるくせに足首は寒い。本当に最悪の代物だ。

「若いサラリーマンに似合うルーズソックス」ってのも・・・・・・・・・・・流行らないか?

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さて、運よく通勤電車で座ることができたとする。

僕は手袋をしたまま手を組み、あごを引いて顔をコートの中に沈め、目を閉じる。

すると何か、密室の中にいるような不思議な感覚に襲われる。


周りに人がたくさんいるのに、何かプライベートな空間にいるような、安心感がある。

マスクをしたときの、あの息苦しさがいい。

なんだが、世俗と隔たっている感じがするのだ。

タイプカプセルの中にいるような、エジプトのミイラにでもなったような、はたまた母親の胎内にいるような、そんな不思議な感覚だ。

周りの人と空気を共有しない

”鼻と口を覆う”ってことは、それだけで非日常であり、隔世の感を感じさせる。


だから僕はマスクが大好きだ。

できれば顔全体をマスクで覆いたい。


日本で覆面ブームが起きて、道行く人、電車に乗る人、職場にいる人、全ての人がマスクをかぶれば、僕はもっと一人の世界にいられるのに・・・

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