あらすじ:37年近く彼女がいなかった僕に今年のバレンタインデーに初めて出来た彼女は韓国人。
速攻で結婚を誓い合ったもののその1ヶ月半後に彼女(ジュンちゃん:仮名)は帰国。
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訪韓3日目
朝はロッテリアで朝飯。
年老いた両親がいるのになんでロッテリア?
と思うかもしれないが、両親がそれでいいというのだからしょうがない。
昨日ののり巻きよりはロッテリア、だそうだ。
でも朝から両親とロッテリアで朝飯を食べてるって、なんかシュールだ。
親父なんか70過ぎなのに・・・
朝、9時。
彼女の叔父が運転する車で、彼女の母親、叔父、叔母たちがホテルに迎えに来てくれた。
今日はみんなでソウルの中心から1時間半ぐらい走ったところにある韓国民族村に行くのだ。
それにしてもありがたいね。
だって、叔父さんから見たらうちの両親は「姪っ子の結婚相手の両親」
わざわざ貴重な夏休みを使って観光に連れて行く義理なんてないのだ。
しかも初対面。
が、もともと陽気で、人懐っこくて、もてなし好きのおじさんは、自分が通う教会からわざわざワゴン車まで借りてくれたそうだ。
うちの両親はのちに「韓国の人は優しいね~」と感心していたが、彼女曰く
「家の一族は特別。普通は嫁・姑関係だってあるし、親戚づきあいだってここまで濃くはない」とのこと。
・・・・・・・・やっぱり・・・。

韓国民族村は、日光江戸村のような感じ
広い敷地に、韓国の昔の家(平民、中流、上流階級)、裁判所や牢屋などの建物が展示され、韓国の伝統的な暮らしを紹介している。
お土産を売っている店の人はきれいなチマチョゴリだし、掃除をしたり、マッコリ作りや生糸作りを実演している人も伝統的な韓服に身を包んでいて、格好いい。
派手なアトラクションはなく、ひたすら昔ながらの村を歩く感じ。
若者には退屈な場所だが、うちの両親、特に父親が大喜びだった。
昭和19年生まれの父は、韓国の昔の家屋に懐かしさのようなものを覚えたらしい。
「あ~、藁葺きの屋根!懐かしい!」
「あ~、昔の脱穀機!懐かしい!」
「あ~、納屋!くみ取り便所!懐かしい!」
とにかく・・・・いろんなものが懐かしかったらしい。
また、手先が器用だった父は、若い頃「大工の見習い」「農業」などもやっていたそうだが、韓国民族村でどうもむずむずしてきたらしい。
まず、矢のような棒を輪に通して遊ぶ、韓国の伝統的な遊びに夢中になり、
次に伝統的な木材加工の体験コーナーでは「これは腰を使ってやらなきゃダメなんだよ」と豪快にカンナで木を削り、
さらに民族村のあちこちにある小さな畑に植えられている植物の葉っぱをみただけで
「ああ、これはそばだな」
「あ、これは芋」
「やや!人参の葉っぱが日本と違うぞ!」と言い当ててしまう。
「あ、これは芋」
「やや!人参の葉っぱが日本と違うぞ!」と言い当ててしまう。
負けじと花好きの母親も
僕にはさっぱりわからないのだが、
ここらへんは親世代はさすがなのだ。
僕ら都会のもやしっ子は植物を見てもなんの興味も示さないし、どれが食べられる植物かもいまいちよくわからない。
無人島に漂着したら、親より先に死ぬな・・・。
それにしても彼女のおじさんはいいところを選んでくれた。
両親は韓国民族村を非常に楽しんでくれたようだ。
よかったよかった。


そこでお昼を食べて、とある市場へ。
ここは、観光客はあまり来ない、干物を中心とした市場。
叔父さんはいつもここで韓国海苔を箱で買って、日本に嫁いだ自分の娘に送っているらしい。
「お土産に韓国ノリを買いたい。南大門市場にでも行こうか」と言っていた両親のために、わざわざつれてきてくれたのだ。
ここで両親はカットされた韓国ノリを段ボールで1箱(中には6パックセットが24個入っている)を15000ウォン(約2000円)で買っていた。
帰りに空港のおみやげ物やを見たら、同じ値段で10パックしか入っていなかったから、ずいぶん安く買えた。
交渉まで全部おじさんがしてくれたので助かったな。
その後、ソウル市内にある南山タワーに行った。
まあ、日本で言う東京タワーのようなところで、彼女の両親も昔この丘でデートをしたらしい。
しかしここがものすごい行列で、ケーブルカーに乗るのに1時間、タワーのエレベーターに乗るのに20分くらいかかった。
おじさん、おばさん、彼女のお母さんは
「実は私たちもタワーの上に上るのは初めて。みなさんのおかげでいい経験をした」と言っていた。
そうだろうな。
僕だって東京タワーも富士山も登ったことないもんな。


その日の晩ご飯はサムゲタン
丸ごとの鳥に、もち米や朝鮮人参、その他体にいい食材を詰めて煮たもので、夏ばて防止に食べるらしい。
両親は興味津々に、またいつも以上に食べた。
「辛くない!大丈夫!」と喜んで食べていた。
その後、近くの公園で噴水ショーを見て帰った。
そこで父親は本日3回目のうんこ。
食べ過ぎだよ。
今日はとにかく、おじさんたちが一日ソウルを案内してくれた。
うれしいね。
うちの両親にとっては、韓国の嫁の親族がとてもいい人たちだとわかったこと、
それから一日車で観光をさせてもらったこと、
ダブルでうれしいことだったに違いない。
うち両親はすっかり彼女の叔父さんのファンになってしまった。
両親は明日帰国。
3泊のうち、観光らしい観光は1日しかなかったが、僕がよっぽどのヘマをしなければ、来年の結婚式にはまた韓国に来られるので今回はこのぐらいで我慢してもらおう。
僕はこれまで一人旅が長かった。
一人旅は寂しい分、自由で気まま
海外に出ても、何もしないで文庫本を読んだり、ボーっとしたりしていることが多かった。
両親を伴った海外旅行は気を使う分、なにか別の喜びがあった。
両親がいろんなものに驚いたり、感心したり、興味を持ってくれることはうれしいものだ。
想像もしていなかった息子の国際結婚を、「人生の中に起こったおもしろいことの中の一つ」ぐらいにとらえてもらえれば、これ幸いである。
