俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

フリーター、家を買う その3

妻「今日の夫婦会議は、なぜ銀行はあんたに住宅ローンを組んでくれないか、です」

夫「はい!いきなり異議あり!まだ貸してくれないと決まったわけではありません!」

妻「じゃ、なぜまだ契約が進まない?」

夫「それはつまりですね、僕はあの~・・・低所得者じゃないですか?」

妻「重々承知」

夫「しかも・・・・非正規雇用じゃないですか?」

妻「無論承知」

夫「だからですね、『こいつ、本当に金返せるのか?』ってのをよく審査する必要があるわけですよ」

妻「何を他人事みたいに・・・・。返せるんでしょう?」

夫「ええ、そりゃあ・・・・まあ。」

妻「じゃあそう言えばいいぢゃないの」

夫「だからですね、ま、3年分の所得証明を出した訳なんですけど」

妻「けど?」

夫「その・・・・5年分出せ、ってことになって」

妻「なって?」

夫「え~~っと・・・つまり、まだ審議が続いておりまして、まだローンが組めないということですね、はい。」

妻「だからなんでそんなに疑われるの!」

夫「いや、男にはいろいろありまして」

妻「関係あるかぁ!あんた、ほかのローン組んでないわよね?」

夫「ありません!」

妻「車のローンは?」

夫「ありません!というか、車、持っていません!」

妻「マンションは?」

夫「ありません!そんなの持ってたらそこに住んでます!」

妻「確かに。なにか・・・・英会話とか?」

夫「No Thank you!」

妻「・・・・それも習ってなさそうね。」

夫「でしょう?清廉潔白なのに」

妻「借金でもあるんじゃないの?」

夫「ありません!これは唯一の誇りです」

妻「カードの支払いが滞ってるとか?」

夫「私、現金主義です」

妻「ふぅ。じゃあ、単純に非正規雇用の男に不安を感じてだけか。」

夫「でもここ3年間はがんばって稼いだほうですよ。自分の中では」

妻「じゃあ何で貯金がないの?」

夫「年に4回、海外風俗に費やしたからです!」

妻「・・・・・正直でよろしい。で、4年前は?」

夫「あ!僕はですね、4年前は正社員でしたよ。」

妻「へ~、そうなんだ。なんで辞めたの?」

夫「いろいろありまして・・・」

妻「もったいない。お給料だって今よりは・・・」

夫「月20万円×12ヶ月、ボーナスなしで年収240万でした」

妻「・・・・辞めてよかった・・・・かな?」

夫「微妙っす・・・」

妻「でもこれで銀行がお金を貸してくれなかったら、一生家もマンションも買えないってことね」

夫「え!?」

妻「だって、今より給料上がる?」

夫「ま、無理っすね。非正規雇用ですから」

妻「正社員になる気は?」

夫「なる気はある!でもなれる自信はない!」

妻「よね?つまり、今、借りられないならずっとダメ。」

夫「つまり、ずっと借り暮らし・・・・・のアリエッティ?」

妻「ま、そんなとこね」

夫「もし、年を取って働けなくなったら?」

妻「そのときは・・・・・そのときね」

夫「雨ざらしアリエッティ?」

妻「・・・・・そうね」

夫「なんで銀行はお金を貸してくれないの?」

妻「さあね」

夫「貧乏人は一生家が買えないの?」

妻「そうね。」

夫「貧乏人は奥さんに家を買ってあげられないの?」

妻「・・・・・」

夫「貧乏人は幸せになる権利はないの?」

妻「・・・・・落ち着きなさい」

夫「貧乏人は・・・・貧乏人は・・・・奥さんを幸せにできないの?」

妻「・・・・・貧乏人、貧乏人言わない!そんなこと言ってると本当に貧乏神にとりつかれるよ!」

夫「だって!だって!僕は・・・・・・僕にだって・・・ささやかな幸せを・・・・」

妻「家が買えないことがイコール幸せじゃない、というわけじゃないでしょう?」

夫「だって・・・・」

妻「とにかく!今は結果を待ちましょう。ダメだったらまたそのときに考えればいい!」

夫「・・・・・・その考え方は・・・・」

妻「なによ」

夫「・・・・・・意外に嫌いじゃないっす・・・」

妻「よし。じゃあ、次の議題は今日の晩ご飯についてです」

夫「はい!すき焼き!」

妻「却下。今日の晩御飯は納豆ご飯です。」

夫「・・・・・アラッサー(了解しました)・・・・」