俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

ポン酢をジュレに

部下「課長、相席よろしいでしょうか?」

課長「ああ、かまわんよ。今日はお弁当じゃないの?」

部下「ええ、夕べ、ちょっとカミさんと喧嘩しまして・・・」

課長「おいおい・・・君、去年結婚したばかりだというのに・・・」

部下「へへへ。ここ最近、ずっと終電で帰って朝早く家出るもんですから」

課長「もっと奥さんを大事にせんと・・・」

部下「ええ。わかってます。それより課長!ポン酢をジュレにしてみたんですよ!」

課長「は?」

部下「だから!ポン酢を!ジュレに!してみたんです!」

課長「君は何を言っておるのだ?」

部下「課長、しっかりしてください!」

課長「いやいや、しっかりするのは君だよ。人が飯食ってるときにいきなりやってきて”ポン酢をジュレにした”って言われてどう答えればいいんだよ」

部下「・・・・・・・よくやったと。」

課長「言えるか!」

部下「俺もそれをずっと待ってたんだ、と」

課長「待て待て待て!最初からちゃんと説明せい!」

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部下「だからですね、私が先月、プレゼンやったの覚えてます?」

課長「ああ・・・・・・・・・・まあ・・・・・・・(覚えてね~な・・・)

部下「あの時、僕がプレゼンした”ポン酢ジュレ”!」

課長「う、・・・・・うん」

部下「あの時、みんなにボロクソに言われたじゃないですか?」

課長「あ、だよね?だよね?」

部下「でもめげずに試作品を作ってみたんですよ!」

課長「あ、そうなの?勝手に?」

部下「はい、勝手に!」

課長「自分で?」

部下「ええ。自分で!」

課長「ふ~ん・・・・・・で、何を作ったの?」

部下「だから!ポン酢をジュレにしたんですよ!ついに!あのポン酢が!ジュレになったんですよ!」

課長「だから!”ジュレ”ってなんだよ!」

部下「ジュレジュレですよ!」

課長「だからそれを教えろ!」

部下「課長はジュレも知らないんですか!」

課長「ごめんね!で、何よ!」

部下「だから、あの、あれですよ。あの、課長がいつも使ってる、ね?わかるでしょう?」

課長「わかるか!ちゃんと説明しろ!」

部下「まあまあ、課長。落ち着いて、味噌汁でも飲んで。とんかつも冷めちゃうので食べながらで」

課長「余計なお世話だよ・・・・で、ジュレって?」

部下「え~と・・・まあ、ゼリーみたいな?ゲル状の?ジェル状の?」

課長「ゲルだかジェルだかゼリーだか面倒臭ぇーな。1つにしろよ」

部下「だからジュレです!」

課長「一番わかりにくいよ。」

部下「全国のポン酢ファンに捧げる究極の逸品!」

課長「ポン酢ファンっているのかよ?」

部下「いや、全国におそらく2億人はいますね。」

課長「日本の人口を超えてるな」

部下「僕なんて高校の時から『ああ!ポン酢がジュレだったら!』ってずっと思ってましたしね」

課長「うそつけ」

部下「『ポン酢がジュレだったら、世界はもっと平和になるのに!』って」

課長「なるか。どこの世界にポン酢のジュレ化を望むやつがいるんだよ」

部下「いや、もう、僕の友だちもみんな言ってましたよ。『お前は食品会社に勤めていながら、どうしてポン酢をジュレにしないんだ!』って」

課長「お前、友達ほとんどいねーだろ」

部下「ホントに、mixiとかで悪口いっぱい書かれましたもん」

課長「え?ポン酢をジュレにしないから?」

部下「はい。」

課長「すごい友だちだな。というか、そんなグループ抜けたほうがいいぞ」

部下「で、僕はポン酢友だちの期待を背に、やっと試作品を作り上げたんですよ!」

課長「ポン酢友だちって、どんな活動してるの?」

部下「ま、その話はおいといて、で、これなんです」

課長「・・・・・・・ふ~ん・・・なんか・・・・・例えようのない・・・あれだね・・・」

部下「で、これをこうやって・・・」

課長「あ~!!俺の豚カツに!!」

部下「ままま、だまされたと思って食べてみてください」

課長「俺は人にだまされるのは嫌いなんだよ」

部下「そういう話じゃなくて・・・・ほら!見て!ポン酢が染み込まないでしょう?」

課長「本当だ~ポン酢が染み込まな~い・・・」

部下「これまで、せっかくカラッと揚がってたサクサクの衣がいつもビチョビチョになっていたのに!」

課長「っつーか、豚カツにポン酢かけたことないぞ」

部下「ほら!このポン酢ジュレを使えば、衣はサクサクのまま!」

課長「聞いてる?豚カツにポン酢って普通つけないんですけど?」

部下「さ、食べてみてください!」

課長「・・・・・・・・・・・・(一切れ食べる)」

部下「どうです?ポン酢でしょう?」

課長「・・・・・・・・うん・・・・ポン酢だね」

部下「ジュレでしょう?」

課長「・・・・・・・・うん・・・・ジュレだね」

部下「おいしいでしょう?」

課長「・・・・・・・・まあ・・・・・・思っていたよりは・・・」

部下「ね?ね?で、これをお豆腐に掛けたり、サラダにかけたりしてもいいんですよ!他にも餃子、豚しゃぶサラダ、焼き秋刀魚、鳥の唐揚げ・・・」

課長「ポン酢を?」

部下「ええ」

課長「豆腐に?」

部下「ええ」

課長「・・・・・・おれ、お醤油派なんだよね」

部下「サラダは?」

課長「青シソドレ派なんだよね」

部下「餃子は?」

課長「酢醤油派なんだよね」

部下「・・・・ポン酢って普段使いません?」

課長「なべ物くらいかな?水炊きとかね」

部下「あ、熱いものにかけないでください」

課長「・・・なんで?」

部下「溶けるんで。ま、普通のポン酢になっちゃうんで」

課長「・・・・そうか。で、君は自分の定食にはかけないの?」

部下「はい?」

課長「エビフライには?」

部下「あ、僕はマヨネーズソース派なんで」

課長「千切りキャベツは?」

部下「中華ドレッシング派なので」

課長「ポテトサラダには?」

部下「あ、それは合いませんよ。たぶん」

課長「開発辞めしまえ!!」

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