フジTV系列『めちゃ×2イケてる』の『AKB以外だらけの大運動会』を見た。
これが実に実に素晴らしい企画だった。
正直、1時間のレギュラー放送ではもったいないくらいの、充実した内容だったのだ。
が、やはり”AKB以外”ではスペシャルを組めないあたりがなんとも”らしい”感じがしてほほえましかった。
その日、フジテレビに呼び出されたのはAKB48以外の女性グループ
SDN48
SUPER☆GIRLS
アイドリング!!
の8組80名
僕はたまたま実家に帰省しており、両親とともにテレビを見ていたのであるが、父親の驚きようと言ったらなかった。
そりゃそうだ。
御年72歳の父親はテレビで女性が複数集まっているとすべてAKBと認識していたし、僕だって名前くらいは知っていたが、実際に並んでいるのを見ると「こんなにいたのか!!」と改めた驚いたもの。
で、普通だったらありえないアイドルグループ同士の組み合わせを
悪意たっぷりに実現させるのが『めちゃイケ』のすごいところである。
AKB48、SKE48、NMB48、SDN48など、同じ系列のグループが並ぶことはもちろん問題ない。
また、すでに終わっているモーニング娘の元メンバーとほかのアイドルグループが並ぶのも問題ないだろう。
が、それ以外の組み合わせはさすがに番組制作側も意図的に避けていたと思う。
ま、アイドルグループ2組を番組に呼んでも代わり映えをしないというのもあるし、AKB以外を二組呼ぶ意味というのもないだろうが、それ以上にお互いのチームの対立というのも考えたのではないか。
しかし『めちゃイケ』はそれをやってのけたのである。
それも悪意たっぷりに。
番組冒頭、岡村隆史と加藤浩二はあまりにもどストレートに企画の趣旨を説明。
加藤「なんで”AKB以外”なんですか?これだけ集まってもらって失礼ですけど、AKBを見たいという人が多いと思うんですけど」
岡村「ま、正直、今、AKBが一番じゃないですか?」「(この人たちは)負けてるじゃないですか?」
(苦笑いをするアイドルグループ)
岡村「でも、AKBを超えるグループがこの中から出てくることは間違いないんですよ!」
つまり、現時点でAKBより劣っていることを出場アイドルグループに自覚させたうえでの企画。
すごいな~。
でもそこは昨今のバラエティ慣れしたアイドルたち
割り切って「自分自身が目立つこと」「番組エンディングで歌うこと」を目標に気持ちを切り替える。
おもしれ~・・・これで少し上のところからAKBのメンバーが見てたらもっと面白いのに


が、岡村の煽りはまだ止まらない。
それぞれのチームに「ライバルはどこですか?」と質問
いいぞ!そのむき出しのライバル心、最高だ。
しかしライバル視された ぱすぽ☆は「ライバルはSUPER☆GIRLS。コンセプトが私たちとかぶってるから」
とアイドリング!を無視
確かにぱすぽ☆のコンセプトは「みんなで作るアイドルユニット」で、SUPER☆GiRLSのコンセプトは「みんなで育てるアイドル」
どっちが先かはわからないが、確かにまるかぶり。
おまけにどっちも名前に「☆」がついている。
うちの親父が区別がつかなくてもしょうがない。
さらにSDNにライバルを聞くと、同じセクシー系の恵比寿マスカッツを指名
SDNの大堀が「うちは艶のあるお色気。恵比寿マスカッツは下品」と煽れば
恵比寿マスカッツも「SDNの虎南は元々うちのメンバーだったくせに!」と応戦
一触即発になりそうなところだが、AV女優とグラビアアイドルで構成された恵比寿マスカッツを「触ってよし」と判断した岡村はセクハラを敢行。
ここらへんの対応も、病気前にだんだん戻ってきているぞ岡村君!
「ももちんです!」「私が世界で一番かわいい」と調子に乗る嗣永に加藤浩二の蹴り突っ込みが炸裂
嗣永と加藤のカラミは番組内でオチとして計4度放送され、嗣永は見事役割を達成。
視聴者に強烈なインパクトを残した。
0点だね。次回からは桃色クローバーZと交代だ。


番組はアイドル大運動の様相で進んでいくが、往年のアイドル大運動会と違うのは「和気あいあい」とした雰囲気がなく、
バラエティならではのライバル関係むきだしの戦いが面白い。
ここには会場で盛り上がってくれるファンもいない。
そして目の上のタンコブAKBがいない。
そのためか、各グループが実に生き生きと下品な本性を晒していた。
それが実に小気味いい。
特に「崖っぷち!」「ここで目立たねば!」とあせるアイドリング!
ひたすら下品に攻める恵比寿マスカッツ
芹那以外は目も当てられないが、大きくなりすぎて衣装が入らない野呂さんやクラブママ風の大堀さんなどの強烈キャラを有するSDN
など、バラエティ対応がしっかりしているグループは強い。
結成まもない彼女らには焦りがなく、「どうしても売れなければ」「どうしてもここで目立たなきゃ」という意識がまだないのだろう。
最後は相撲対決を制したSDNが優勝
秋元プロデュースのグループが勝ってしまったのがなんとも悲しいが、番組としては非常におもしろかった。
久しぶりの『めちゃイケ』のあたり企画だと思う。
「フジテレビはもう見ない」
「(嫌なら見なきゃいい発言の)岡村はオワコン、鬱が治ってない」
と言っていた連中は、この企画を見られなかったんだろうな。かわいそうに。
また、それぞれのアイドルグループのファンはどういう目で見ていたんだろうか。
「俺たちのアイドルをバカにするな!!」という目で見ていたのか
「ついに『めちゃイケ』に登場だ!あ!今のシーンおいしい!いいぞ!がんばれ!」という目で見ていたのか。
ファンの心理を考えても実に面白い。
おそらくこの企画はK-POPでは成り立たない。
なんたってこの企画のおもしろさは「AKBの下でイマイチ パッとしないアイドルグループが」「意地とプライドをかけて戦う」というところにある。
そしてゲームの勝敗よりも「より目立つこと」「司会者にいじってもらうこと」にかけた現代アイドルの芸人魂がなんともミモノなのだ。
この、ありそうでなかった企画
これが実現できたのは、やはり悪意を堂々と出せるバラエティ番組だからこそだ。
ロンドンブーツよりも、雨上がりよりも、Wコージーよりも
だれよりも先に手を出したナイナイの(もしくは『めちゃイケ』の)勝利と言えるかもしれない。
僕はこれといってアイドルのファンではないので、新しいアイドルグループが出てくるたびに
「やめとけばいいのに」
「飽和状態ではファンの食い合いになるだけだよ」
「二匹目のどじょうはいないのに」
「ちゃんと高校に行って、大学に行って就職したほうが、あの子たちの将来のためにはいいのに」
なんて思ったりする。
現在、日本ではテレビに出られないご当地アイドルなどを含めれば2000人あまりのアイドルグループメンバーがいるらしい。K-POPを入れたらさらに50~100はプラスされることになるだろう。
もはやだれでもアイドルになれる時代ではあるが、それでもやはり売れるには狭き道なのだろう。
僕は今後もどこかの誰かのファンになるということはないだろう。
またしばらくは遠くから「最近のアイドルは似たようなのばっかりで区別がつかん!」と嘆くことだろう。
が、たまにこうしてじっくりアイドルたちを眺めるのも悪いものではない。
やっぱり夢を追って必死に頑張っている若い人たちを見ると、
自分もがんばらなくては、と思うのである。
この中で生き残れるのは本当にごく一部だろう。
また、トップアイドルとなっても、待っているのはバッシングだったりする。
それでも人は夢を追いかけるのだ。
そして僕はテレビを見続けるのである。

夏草や 兵(つわもの)どもが 夢のあと