それはある金曜日の夜のこと
僕は両親と嫁と、食後のお茶を飲んでいた。
嫁「ああ、やってましたね」
母「なんて店だっけ?あの、名古屋の」
母「そうそう。あれ。コーヒー頼むといろいろついてくるんだよねぇ」
嫁「トーストとゆで卵でしたっけ?」
母「ね~、コーヒー頼むだけでね~。今度○○(←僕の弟)のとこに行ったら寄ってみようよ~、お父さん」
父「・・・名古屋まで行く用事もねぇべや」
母「孫の顔でも見に行くついでにさぁ」
父「・・・この前、見たべよ」
母「赤ちゃんなんて1週間も観なかったら顔、すっかり変わっちゃうよ」
父「・・・なんでわざわざコーヒー飲みに・・・」
僕「あれ?コメダコーヒーなら、ここらにもあるよ。県道沿いに」
母・嫁「え?うそ!」
母「ねえ、お父さん、行ってみようよ!」
嫁「あ!シロノワール!食べてみたい!」
僕「俺は小倉トーストだな」
母「朝からやってるの?」
僕「ちょっと待って。ん~(スマホで検索)・・・朝7時からやってるね」
母「じゃ、明日は土曜でみんな用事がないから、朝から行ってみようよ」
嫁「いいですね!」


しかし、渋い顔をしている男が一人。
母「ね、お父さん、明日の朝」
父「・・・混んでるだろうよ」
母「そんなのわからないわよ、行ってみなきゃ」
父「・・・並んで入るんか?」
嫁「あ~、それもいいな~」
父「いや、日本人なら朝は・・・]
嫁「あたし韓国人ですけど」
父「あ、そうだね。あの、アジア人ならやっぱり朝はご飯と・・・」
母「お父さん、毎朝パンとコーヒーじゃない」
父「・・・でも、ほれ、駐車場があるかどうか・・・」
僕「あるに決まってんじゃん。県道沿いだし」
父「・・・駐車場が横手にあるか、裏にあるかで・・・」
僕「何が違うの?」
父「いや、ほれ、右折して駐車場に入るのが・・・」
僕「・・・50年以上車運転してるのに今さら駐車場がどうとかって・・・」
父「なら、お前が運転するか?」
僕「俺ペーパードライバーだし」
父「ほらな」
僕「ほらなって・・・」
母「お父さん、お風呂、先は行っちゃいな」
父「お、おう・・・」
風呂に入る父
居間に残る3人
僕「・・・で、あしたどうするの?」
母「なしだね」
嫁「え~」
母「あれ以上何も言わない方がいいね。ふてくされるし」
僕「・・・なんとなく想像できるけど」
嫁「え~・・・お父さん、そんなに嫌なんですか?」
母「あれでね、『俺は嫌だとは言ってねぇよ』って返すんだよ、いつも」
嫁「・・・」
母「『嫌だとは言ってねぇよ。ただ混むんじゃねぇかって言っただけ』とかね」
僕「確かに、直接嫌だとは言ってないね。態度は完全に拒絶だけど」
嫁「お義母さん、お義父さんのマネ、うまいですね・・・」
母「わかってあげて。ああいう人だから]
嫁「・・・」

ちなみに父は僕と嫁が結婚する前に偉そうにこんなことを言っていた。
両親が上手くいっていた秘訣は母が父をうまくコントロールしていたからだが
世の中には意外にこんな親爺が多い
