今日はいつもよりゆっくりできる朝だ。
目覚ましテレビを最後まで見て、「今日の占いカウントダウン」でしっかり落ち込んで家を出た。
駅まで歩く道はラッシュ時よりすいていて、ちょっといい気分で歩いていた。
すると、向こうの方からテレビの撮影クルーらしき一団が歩いてきた。
なんだろう?
ラーメン屋の特集か?
はたまた通り魔事件か?
しかしそれにしては和やかな雰囲気だ。
プロデューサーらしき伊達男を先頭に談笑しながら歩いてくる。
僕は突然インタビューされても大丈夫なように、それでいてできるだけ知らないふりをして歩いていた。
そしてそのテレビクルーとすれ違うまさにその瞬間、先頭の伊達男が竹中直人であることに気付いたのである。
どうやら竹中直人の青春時代の思い出の地を再訪する企画らしく、一瞬だけ彼独特の低い響きのある声が聞こえた。
なによりもまして、彼の来ているものが恰好よかった。
ブランドはわからないが、いいモノを着ていることは遠巻きに見てもわかる。
オイラの三万円のスーツとはわけが違う。
しかもお洒落なんだ。首にスカーフなんか巻いたりして。
いいなあ、恰好いいなあ。
渋いなあ。モテるだろうなあ。
今日だけは完敗。
竹中直人は本当に男前です。