現在、時刻は17:10。就業まであと20分だ。この20分をどう乗り切ろうか。
以前、ネットで調べたのだが、会社が制服着用を義務付けたり、業務上必要な物を使ったりした場合、その片づけを含めて「労働時間」となるらしい。就業規則に書いてなくても過去の裁判でそういう判例があるらしい。つまり終業時間前に片づけを始めても怒られる筋合いはないと言える。がまだ17:10・・・。
例えば僕が作業着を妙にゆっくり、ストリッパーのように脱ぐ色っぽいおじさんだったら、17:15くらいから着替え始めてもよいのだろうか?筆箱にシャーペンやら、ボールペンやらをゆっくりゆっくり10分くらいかけて入れながら帰り支度をはじめたら部長に怒られないだろうか?
とりあえず何か別の仕事でもしようかとも思ったが、困ったことに今の僕には20分でキリがつく仕事がない。出張の報告書は明日時間をかけて作りたい。20分で出張目的だけ書いて作業を止める、なんてことはしたくない。顧客から届いている資料に目を通しはじめたら1時間はかかるはず・・・。途中で止めたら明日結局最初から読まなきゃならなくなる。逆にこちらから先方に新しい企画案を添付してメールなんて送ったら先方も「え?帰ろうと思っていたのに!」って迷惑に感じるだろうし、新製品のアイディア出し・・・も今からやるより明日以降、時間に余裕があるときにしたほうが絶対いい。
同期の吉田は・・・パソコンの画面をボーっと見つめ、時が過ぎるのを待っている。
1個下の池田は・・・あいつの席、うしろが壁だからいいんだよな。絶対手元にスマホを置いてなんか見てるよな・・・。
田添さんは・・・手帳を見てスケジュールチェックをしているフリをして、きっとアニソンフェスに行く計画を立てている(はず)。
高嶺の花子さんは・・・ネイルを気にしつつ、指のささくれを引きちぎろうと必死
新人の三池は・・・まだ仕事している・・・すげぇ・・・
中途採用の迫さん・・・もなんか作業している
2年目の市川は・・・完全に帰り支度を終了して瞑想中。課長にめっちゃ睨まれてる・・・
う~ん、なんとかして終業時刻前に会社を出る方法はないかな?「社内点検をします!」とかいってカバンを持ってロビーまで下りてって、17時半ぴったりに会社を出るとか・・・ダメかな?
そもそも「就業時間」って何で決まってるんだっけ?別に時間給ってわけでもないのに。自分の仕事とかノルマが達成していれば帰ってもいいと思うんだけどな。
でも終業時間が決まってないと16:00くらいに帰りだす新人とか出てきそうだな。そのうち「仕事は家でやります」なんて言って午前だけで帰り出す奴も出てきたりして・・・。でもそれってなんで駄目なんだっけ?
まあ、決められた業務とかノルマだけでいいなら外部委託とか派遣さんだけでもいいしな。在宅勤務って絶対サボる口実だろうし・・・。っつーことは社員を就業時間内ずっと会社に置いとくのはプラスアルファの仕事を頼むためなのかもな。会社にとっては就業時間いっぱい社員をこき使ってもいいわけだから、なるべく社員をオフィスに留めておきたいんだろうな。
はあ、あと10分か。
吉田も池田も田添さんも花子さんも市川も、定時組は残り10分仕事を進めずひたすら時間が過ぎるのを待ってるだけだろ?これって会社にとってなんのメリットもないよな。でも会社が「仕事のキリがついたら多少早めに上がってもいい」なんていったら絶対歯止めが利かなくなるよな。市川なんて15時頃帰りそうだもんな。あいつトイレ休憩、たばこ休憩もたっぷりとってるくせに。
ということは、社員に時間いっぱい仕事してほしいなら会社側が10分とか20分で終わる仕事を用意すればいいんじゃね?「チラシ折り」「給湯室の湯飲み洗い」「書架の整理(一段分)」「共有PCフォルダの整理」「簡単なデータ入力(ベタ打ち)」みたいなのをホワイトボードに書いといて、5時以降大仕事を始めたくない奴が自分で選んでやる、みたいな。
・・・というかこれからは生成AIを使えば15分くらいでも企画書・報告書の下書きなんかもできるんじゃね?
そうこういっているうちに定時だ!17時半だ!今日もがんばったな!よし帰ろう!社長の俺が帰らないとみんな帰りづらいしね!