俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

草食系の末の世

美恵「息子さんを、私にください」

和子「お断りします。」

美恵「どうしてですか!私たち、愛し合ってるんです!」

和子「お黙りなさい!何も知らない俊夫さんを垂らし込んで!」

美恵「そんな、垂らしこむなんて・・・。私たちは同じ職場で知り合い、チームを組んで仕事をするうちに、自然に信頼しあうようになったんです。」

和子「そんなこと言って・・・本当は俊夫さんを自分の秘書にしようと企んでたんじゃないの?」

美恵「そんなことありません!私は仕事と私情を混同するようなことはありません。」

和子「ああ、嫌だ嫌だ。女が仕事だなんて世の末ね。女の幸せわね、家庭を守ることなのよ!子どもを産み育て、夫に尽くす。それが女の正しい生き方です。」

美恵「そんな、お母様」

和子「あなたにお母様だなんて呼ばれる筋合いはないわ!」

美恵「す、すみません。でも、今は夫婦共働きの時代ですし・・・」

和子「あら?じゃあ、だれが子どもを育てるの?」

美恵「それは・・・別に女性だけが負担する必要はないんじゃないですか?男性だって育児休暇は取れますし・・・」

和子「まあ嫌だわ。俊夫さんにも育児をさせるおつもり?そんなこと・・・・私が俊夫さんを産んだ時は主人に手伝ってもらおうだなんて微塵も思わなかったわ!」

美恵「それは・・・時代も変わりましたし・・・」

和子「時代は変わっても、女は女です。ね、俊夫さん」

俊夫「・・・・・・・・」

美恵「俊夫さん・・・・・・」

和子「俊夫さんには、ちゃんとママがおしとやかで家事に専念してくれる女性を捜してあげますからね。キャリアウーマンなんかと結婚して仕事も家事もやらされるなんて、みすみす不幸になるようなものよ。それまでちゃんとママが面倒を見てあげますから。わかった?俊夫さん。」

美恵「お願いします!俊夫さんを絶対に幸せにしますから」

和子「どうやって?どうやって幸せにするつもりなの?あなた仕事、お辞めになるの?」

美恵「仕事は・・・続けます」

和子「ほら見なさい。自分のやりたいことをやって、その上うちの俊夫さんまで手に入れようだなんて虫が良すぎるわ。私はね、全人生をかけて、全ての愛情を注いで俊夫さんを育てて来たの。それが女の務めなの。あなたにはそれがわかって?もう、顔を洗って出直してらっしゃい!」

俊夫「あの・・・・・・・・お茶でも・・・・」

和子「ずずずず・・・・(お茶を飲む)。いいこと?俊夫さん。あなたはパパのような立派な人になってもらわないと。立派にお仕事をして・・・・・立派に・・・・お仕事して。だから俊夫さんのお嫁さんにはちゃんと家庭をしっかり守れるような方をママが紹介してあげます。ママが認めた人なら間違いないわ。あ、そう!どんな人がいいかしら?三田寛子さん?高田みずえさん?」

俊夫「・・・・・・・綾波レイ・・・」

美恵「?」

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和子「ハーフの方?わかったわ。とにかくママが捜してきてあげるから。ということで、美恵さん。とにかく、あなたとの結婚には反対です。」

美恵「どうしてですか?私はちゃんと仕事もしてるし、年収も1000万近くあります。俊夫さんには苦労をさせません。」

和子「あなたと一緒にいることが俊夫さんにとっては苦労なのよ!だれが俊夫さんの御飯を作るの?だれが俊夫さんの服を洗濯するの?だれが俊夫さんの部屋を掃除するの?今まであたしがそれをしてきたのよ。あたし以上に俊夫さんを幸せにできる自信がおあり?」

美恵「いや、その・・・・共働きが無理なら、俊夫さんはずっと家にいてもらっても構いません・・・・」

俊夫「そんな・・・・・・・主任・・・僕だって・・・」

美恵「会社以外では美恵って呼んで!」

俊夫「あ、はい、すみません。あ、いや、ごめん・・・」

美恵「結婚しても近くに家を構えます。お母様たちの老後の面倒も見ます。孫の顔も見せに来ます。お願いします。俊夫さんと結婚させてください!」

和子「なりません!」

美恵「どうしてですか!」

和子「私はね、仕事をしている女の人が嫌いなのよ」

美恵「・・・・そんな・・・」

和子「とにかく、俊夫さんには、綾波なんとかさん似の古風な女の方を私が捜しますから!」


その夜

俊一「ただいま」

和子「あら、あなた、遅かったのね」

俊一「・・・・・・・・・・ああ・・・・・」

和子「あなた、ちょっと俊夫さんのことで話があるの」

俊一「あ?俊夫のことは全部お前にまかせてあるじゃないか。俺は仕事で疲れてるんだ。シャワーを浴びて寝かせてもらうよ」

和子「待ってあなた!」

俊一「なんだ、うるさい」

和子「・・・・・・・・・仕事って・・・・そんなに大事なの?・・・・・・・」

俊一「・・・・・・・・。働いたことがないお前にはわからん。いちいち仕事のことに口を出すな。お前にも家庭を守る仕事があるだろうが。」

和子「・・・・・・・・・そうね。ごめんなさい」

俊一「・・・・・・・・・・・」


(数日後)

美恵「お願いします。ほら俊夫さん好みの女になりました。絶対に俊夫さんを幸せにします。結婚させてください。」

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和子「あなた、私以上に俊夫さんを幸せにできて?」

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