医者「・・・つまり、どうしてもキムラカエラが受け入れられない・・・と、こうおっしゃるんですね。」
患者「ええ。」
医者「それはご苦労されましたね。」
患者「そうなんです。」
医者「この時代、キムラカエラが受け入れられないとなると日常生活でもお困りでしょう?」
患者「ええ。もう毎日テレビをつける度に・・・・」
医者「わかりました。で、具体的にどんなところが受け入れられないんですか?」
患者「えっと・・・まず顔です」
医者「ああ・・なるほど。そこからですか。」
患者「お前の顔、なんやねん!って思っちゃうんです」
医者「う~む・・・」
患者「眉毛描け!と。ヤンキーかっ!と。」
看護士「(医者に) CTスキャンを用意しましょうか?」
看護士「(医者にこっそり) あとモルヒネも打ったほうが・・・」
患者「しゃべりかたもどうも・・・」
医者「わかりました。とりあえず、心臓の音、聞かせてください」
医者「はい、吸って~、吐いて~」
患者「スー・・・ハー・・・」
医者「歌なんてどうです?」
患者「あ~~・・・ダメですね」
医者「ダメですか?」
患者「ええ。聴くと肝臓にきます」
医者「特にどれが?」
患者「”リルハ リルラ”とか、ホットペッパーのやつとか、あと最近の”ディン・ガ・ディンドン♪”ってやつも」
医者「あ~、そりゃひどい。キムラカエラのもっとも”らしい”ものばかりじゃないですか」
看護士「(医者にこっそり)先生、この人、末期症状ですよ」
患者「なんか・・・それで”ロックシンガー”を名乗っているのが許せなくて。コミックシンガーのくせに・・・」
看護士「(医者に)隔離病棟へ入れたほうが・・・」
医者「まあ、まあ。」
患者「なんか聴いた瞬間”汚ねぇ!売れ線じゃねーかっ!”って思っちゃうんです」
医者「ああ、なるほどね。確かにキムラカエラの症状としてよく報告されるものですね」
医者「『Butterfly』なんかもダメですか?」
患者「全く。」
医者「おかしいな~。あれはアレルギーは少ないはずなんだけどな~」
患者「なんか・・・いかにも良さげですけど・・・よくよく聞いてみたら大したこと歌ってなくて。いかにもな言葉を並べてるだけというか・・・」
医者「あんなもんは熱心に聴くものじゃありませんからね。ちなみにあなたはウェディングソングならどんな曲を?」
患者「長渕剛の『乾杯』とか・・・」
医者・看護士「古っ!」
患者「サザンの『心を込めて花束を』とか」
医者「あ、ちょっと新しくしましたね」
患者「BankBandの『糸』とか」
医者「だいぶ無理をされていますね。そして男臭い」
患者「なんかね、『ゼクシィ』あたりのCMに起用されていい気になってる感じと、大したことも歌っていないフワフワした感じを支持してるバカ女がいることがまた腹が立って・・・」
看護士「(ムッ!)」
医者「大丈夫ですか?落ち着いてください」
患者「大した女でもねーのに不思議ちゃん気取りやがって!それがまた女の子に受けてるのが気に入らないんだよ!どこがかわいいんだよ!わかんねーんだよ!」
看護士「(医者に)この人ダメです。鎮静剤打ちましょう!大至急!!」
医者「まあ、待て」
看護士「先生!警察を!」
医者「いや、今、ここで吐き出してもらったほうがいい」
患者「なんでオメーが売れるんだよ!オメーなんかがテレビ出てんじゃねーよ!」
医者「なぜキムラカエラがテレビに出続けられるのか、あなたもわかってるはずです!」
患者「なんだって!」
医者「あなたは彼女が売れ線だということがわかっている!」
患者「うっ!」
医者「彼女の作る歌を聴いた瞬間!『あ~、これ売れちゃうわ』とわかってるはず」
患者「そ、そりゃ・・・そうだけど」
医者「歴代の髪型の中には、意外に好きな髪形もあったはず」
患者「そ、そんなこと・・・・」
医者「認めなさい。あなたはキムラカエラの力を知っている。売れる理由もわかっている。あなたは悔しいのだ。そうでしょう!」
患者「くっ!!」
医者「あなたは女性ウケするもの全般に対するジェラシーがあるのです。自分の好みのものが世間ウケせず、若い女性が作っていく流行に対する反発心があるのです!」
患者「や、やめてくれ!」
患者「うぉ~なんでそれを???」
医者「認めなさい!キムラカエラを!あなたは今、キムラカエラの呪縛にとりつかれている!だからYoutubeでいくつもキムラカエラの動画をチェックしてしまうのです。本当に嫌いなら見なければいい!しかしあなたは違う!鼻歌で”ディンガディンドン♪”と口ずさむのはやめなさい!気持ち悪い!」
患者「うぎゃぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~!!!」
(30分後)
医者「落ち着きましたか?」
患者「・・・はい。取り乱してしまいまして、すみませんでした。」
医者「こちらこそ、ずいぶん荒っぽい治療をしてしまいまして、すみませんでした」
患者「先生・・・僕は治るんでしょうか?僕は素直になれるんでしょうか?」
医者「完治は難しいかもしれません。なんせ、1000万人に一人、出るか出ないかの症状ですから」
患者「そんなに珍しい病気なんですか?」
医者「ええ。キムラカエラを受け入れられない人は日本でも13例しかありません。」
患者「・・・13例・・・」
医者「食べ物で例えれば、白米が食べられない人と同じくらい、珍しい例です。」
患者「え?そんなに?」
医者「白米が食べられないのと同様、キムラカエラを受け入れられないと日本での毎日の生活は苦労することになるでしょう」
患者「先生、なんとかならないんですか?」
医者「完治は難しいでしょう。しかしお薬とカウンセリングで、症状を抑えることはできます。」
患者「先生。お願いします。もうテレビを見るたびにイライラするのは嫌なんです」
医者「まあ、これからゆっくり治療していきましょう。幸い、キムラカエラはしばらくテレビからは消えるはずです」
患者「はあ。」
医者「しかしそれからまた春先頃からウィルスが蔓延していきます。」
患者「・・・」
医者「ママタレとしてまた歌にCMにと引っ張りだこ。離婚してシングルマザーになって、さらに流行は加速するでしょう。」
患者「・・・」
医者「ま、その頃までに、免疫をつけるといいでしょう。まずはこれを1日一回見てください。」
患者「わかりました。ちょっとダウンロードに時間かかりますけど」
患者「はぁ・・・・・」
(病院からの帰り道)
患者「・・・・・・・・・」