俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

夫婦だもの・・・その2

午後、昼寝から目を覚ますと妻の姿が見えない。

「まさか家出か?いやいや、妻の実家、韓国だし!そんなにすぐ帰れるようなところじゃないし・・・」

寝ぼけた頭でいろいろ考えてみた。

そういえば、今日はバイトの面接があると言ってたな。

確か4時からのはずだったが・・・

歩いて15分もかからないのに、2時間も前に家を出るとは・・・。

僕はとりあえずバイトの面接が終わるころに迎えに言って話す機会でも作るかと思い、妻にメールすることにした。

すると

妻「迎えには来なくていい」

僕「とりあえず何時に面接終わる?」

妻「外は暑いから家にいて」

妻は全く取り合ってくれないのである。

なんか意固地になってるな、と思い、そのまま放っておくことにした。

僕は別に怒ってはいない。冷静に妻の様子をうかがおうとしていただけなので、余裕があった。

2時間後、バイトから帰ってきた妻は、元気はないがちゃんと「ただいま」とも言う。

晩ご飯も作ってくれる。

が、相変わらず怒った表情でこちらのほうを見ない。

ちょっと話しかけると必要最小限の答えで返し、それ以上は話そうとしない。

これでは「バイトの面接どうだった?」というような話しもできない。

結局妻は夕食を済ませると速攻で皿を洗い、そして夜7時半には「頭が痛いから先に寝る」と言い残し、寝てしまった。

しばらく僕とは関わりたくない、という感じだ。

まあいい。

一晩ぐっすり寝たら気分も変わる。

ほとぼりが冷めたら何か言ってくるだろう・・・。

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翌朝、妻は黙って朝ご飯を作り始めた。

どうやらまだほとぼりは冷めないらしい。

いじけているのか、不貞腐れているのか、

怒っているのか、逆ギレしているのか・・・

これは長引くかな?

でもまあ、妻だっていつまでもこんな状態を望んではないだろうしね。

ま、さすがに1週間も続くようだと関係修復も難しくなるので、その前にはこちらから声をかけようとは思うが・・・

今日か・・・・明日か・・・明後日か・・・・

背中を向けてテレビの前で寝転がっている妻を見ながら

「無理しちゃって・・・早くなんか言えばいいのに」

「『ごめん』でも、『あんなに怒らなくてもいいんじゃない?』でもいいからね、言っちゃえばいいんだよ。それとも自分からは意地でも言わない気かね?ま、こっちは気持ちに余裕があるからね。あと3日は待てるけど」

そんなことを考えながらも、今日もパソコン作業を進めていた。

すると妻はむくりと起きだし

「買い物行ってくる」と行って、出ていった。

これまで、近所のいなげやに行くときでさえ一緒に手をつなぎながら行っていた我らである。

近所のコンビニに行くときでさえ「一緒に行こうよ~」と無理矢理僕を誘ってきた妻である。

なんという意地っ張り!

一人で買い物をしながら、妻は寂しさを噛みしめるはずである。

そんな気持ちになる前に、意地を張るのを止めればいいのに・・・


というか、昨日の晩ご飯がカレーだったんだから

必然的に今日の昼もカレー

買うものなんてないはずなのにね・・・

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その日の午後も妻の機嫌は直らない。

ま、僕が謝るのは簡単である。2回目だし。

でもいつもそれで解決するのが夫婦にとっていいことなのだろうか?

妻は僕に背を向けながら昼寝をしている。

ま、僕はいつでも話し合いに応じる準備はできている。

僕はなんの意地も張っていないどころか、むしろニコニコしながら、悠然と構えている。

が、妻は辛いはずである。

いつも笑ったり怒ったり、はしゃいだり、コロコロと変えていた表情を無理矢理こわばらせている。

いつも嫌がられても僕にくっついていた甘えん坊が一人寝をしている。

いつもおしゃべりで、僕が仕事中だろうが、テレビに夢中になっていようが、ガンガン話しかけてきていた妻が、誰とも話せずにふて寝している。

これはストレスがたまるだろうよ。

僕はだんだん妻が可哀想になってきた。

このまま3日も放って置いたら妻は”寂しくて死んでしまうウサギ”のようになってしまうだろう。

ストレスで胃が痛くなり、食欲が落ち、不覚にもダイエットに成功してしまうだろう。

いつも明るい妻がこんなにやせ我慢をして不機嫌な顔を作り、黙り込んでいるのはなんとも不憫だ・・・


妻は長い長い昼寝を敢行している。

もしかしたら本当は起きているのかもしれない。

いつも聞こえるいびきが聞こえないのは

不貞腐れて眠くもないのに寝ようとしているのだ。


もう2~3日、なんて思ってたけど、ここらが限界かな?

ふとカレンダーを見ると、なんと明日は義母の誕生日

妻は国の母親に電話をかけるはずである。

本当は明るい声で元気よく「おめでとう!」と言いたいはずなのに、それもできまい。

様子のおかしい娘の様子にオモニは気づき、「どうしたんだ?喧嘩でもしたのか?」と聞くはずである。

わざわざ日本まで嫁に出した長女が、家族も知り合いもいない日本で、唯一の味方になってくれるはずの夫に冷たくされて泣いているなんて知ったら、義母もまた泣くかもしれない。

義母は僕を信じて妻を嫁に出してくれたのである。

これは申し訳ない。

妻が昼寝から目覚めたら、ちゃんと話し合おう。

幸い、僕は冷静だ。

妻が怒ろうが、泣きわめこうが、落ち着いて対処できるはずだ。

せっかくの3連休の後半2日を、喧嘩したまま終わって新しい週に入るなんてね。

今日中にすべて清算してしまったほうがいい。

うん。そうしよう!!



白鵬が9連勝を決めた頃、妻はむくっと起きだした。

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