目が覚めると、そこは浅草だった。
その日、僕は確か東武線に乗っていた。
本来なら春日部で降りなければならなかった。
しかし、仕事疲れか人生疲れか
うっかり寝過ごしてしまった。
電車が止まり、駅員に揺り起こされた。
「お客さん、終点です」
ぼ~っとしたまま電車を降りると「浅草」の文字。
ああ、乗り過ごした。
ツイてない・・・。
このまま折り返し電車に乗るか。
でも待てよ。
せっかく浅草まで来たんだし・・・。
僕は駅を出て、浅草を歩き始めた。
浅草に来るのは2回目。
始めて来た時は、女性と二人で初詣だったんだよな。
(恋人ではなかったけど・・・)
彼女は就職を願い
僕は来年も彼女と初詣に来られることを願った
そして帰り際におみくじを引いたら
やはりというか、当然というか「凶」だった
彼女は「今が凶なら後は(運気は)上昇するだけだ」「他に人が凶を引く確率が減ったじゃない」と笑い
僕は「どうせ僕には幸せは来ないんだ」と落ち込んだ。
その後、彼女は無事、希望の会社に就職を果たし
僕はおみくじ通り職を失い、自信を失い、彼女と疎遠になった・・・
仲見世通りを歩き、浅草寺へ向かう。
外国人、ご老人、カップル、学生達・・・たくさんの観光客がひしめき合う。
寒風が吹きすさぶ中、仲見世通りだけは熱気を帯びている。
浅草は冬が似合う
浅草は夜が似合う
浅草は人ごみが似合う
仲見世を通り抜け、境内へ向かう。
お賽銭は「ご縁」があるように、5円を投げようと思ったが
財布の中に5円がない。
10円なら2倍の縁があるかもね。
500円なら100倍の縁があるかもね。
う~ん、と・・・じゃ、10円で。
10円なんであまり贅沢は言えない。
とりあえず「今年の残り2週間あまりでいいご縁がありますように」
「あ、できればクリスマスまでに・・・」
「なんだったら、今すぐでも構いません・・・」
そしておみくじへ。
以前、友達から「浅草寺のおみくじはほとんどが凶」
と聞いたことがある。
確かに、前回来た時は僕も友達の女性も共に”凶”だった。
でも、たとえ凶でも・・・
たぶん、今の僕なら大丈夫
きっといい意味に取れるから