「15、16、17と、あたしの人生暗かった・・・
過去はどんなに暗くとも・・・夢は夜開く・・・・」
なんて、宇多田ヒカルのお母ちゃんの名曲を口ずさんじゃうほど
僕の人生、暗かった・・・・・・
「彼女いない歴が年齢と同じ!」なんて笑えたのも20代前半まで
30代半ばになると、正直気持ち悪い。
もう、自分自身がイタくてたまらない。
そんな僕が一番イラつくのは、当然、いちゃつくカップルを見た時である。
僕が朝、10分寝坊して、3本後の電車になると、奴らはそこにいるのだ。
そう、それは妙に声のデカい高校生カップルだ。
いや、もしかしたらカップルではないかもしれない。
単に中のいいクラスメイトかもしれない。
だが、やつらはいつも満員電車の中で、英単語のクイズを出し合いながら通勤してくるのだ。
あ~あ~、やだやだ。
そりゃ、面倒な単語の暗記も、女の子と一緒なら楽しい勉強になるに決まっているわい。
なんだよ、今日は男が問題を出す番かよ。
僕は聞き耳を立てながら、高校生カップルの会話に神経を尖らせる。
男「えっとね、suspect」
女「え~、いきなりチョー難しくな~い?」
僕「(suspect,suspect・・・なんか、”疑う”とかそんなんじゃない?)」
女「え~、わかんな~い」
男「ブーブー。正解は”容疑をかける”でした」
僕「(よし!)」
女「覚えよ!サスペクト、サスペクト・・・」
男「次の問題。please」
女「え?なにそれ?チョー簡単じゃない?”~してください”でしょ?」
男「あ~、もう一つ」
女「なに?まだあんの?”ちょうだい”とか?」
男「あ~、それもあるんだけど・・・もう一つ」
女「え~なに~?わかんな~い」
僕「(あ~これ、勉強したな~。予備校の先生がビートルズのファンで”please,please me"の歌詞を使って教えてくれたんだよ。"Please please me,oh yeah,like I plese you."で、”私があなたを喜ばせたように、私を喜ばせてください”ってんだよ。だから・・・)」
女「正解は?」
僕「(喜ばせる!)」
男「正解は”喜ばせる”」
僕「(ほらね)」
一人ほくそ笑んでいると、どうやら僕の前に立っているおっさんも高校生カップルの英語のレッスンが気になるらしく、後ろをちらりと振り返った。
モテない同志か?
男「次ね、pursuit」
僕「(persue,persue・・・追い求める、みたいな?)」
女「あ~これ、昨日、習った!!何だっけ?何だっけ?」
男「例文ね、シー、パースー、ハー、ハピネス」
僕「(あ、やっぱり、”追い求める”だわ)」
女「わかった~、追いかける、みたいな感じじゃない?」
僕「(そうそう、そんな感じ)」
男「ブーブー!!」
僕、女「えっ!!」
男「正解は、”追求する”でした~!」
僕はズッコケそうになった。当たってるやんけ!!
すると女は
女「あ~”追求する”ね。追求する、追求する・・・」
僕「(待て~い!!納得すな!お前ので当たってたんだよ!しかも和訳を連呼してもしょうがないだろ!)」
イライラしながら前を見ると、僕の目の前のおっさんが苦笑していた・・・
日本は意外と平和かもしれない・・・・