俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

サンドバックおやじ

それは昨日の帰りの電車内でのこと。

僕は新宿からの下り電車に乗っていた。

夜11時半の電車は、平日だからか、まだ終電まで時間があるからかわからないが

意外なほど空いていた。


僕はつり革につかまり、音楽を聴いていた。

ちなみに僕は音漏れしないように、二つのつり革を持ち、自分自身はそのつり革の間に頭が来るように立つ。

そしてつり革を持った手の親指で両方のヘッドフォンを耳に押し当てる。

まあ、音漏れを批判する記事を書くぐらいなので、僕自身も細心の注意を払いたいのだ。


僕が目を閉じてたまたま「さだまさし」なんぞを聞いていると

なにやら異様な気配を感じた。


左隣りのやつが、不規則にこちらに当たってくるのだ。

なんだなんだ!?と思って目を開けると、隣りのおっさんがつり革を持ったまま、寝ているのだ。


こういうことはよくある。

僕の左隣りのおっさんは、僕と同じように両手でつり革を持ち、そして自身の左腕に頭を乗せたまま

目を閉じていた。

体は右に揺れ左に揺れ、一時(いっとき)も落ち着かない。

そして時々「カクン!」という感じで膝が折れ、ちょっとだけ我に返る

が、とにかく麻酔銃を撃たれたかのような眠気がおそってくるらしく

目を閉じた3秒後に、また乙女心のようにゆれ始めるのだ。


意外とつり革を持つ手はしっかりしている。

また足の裏もしっかりと固定されている。

だからおっさんは体を文字通り「”く”の字」に曲げ、その左右に曲がった腰の部分で

左のサラリーマンに体当たりし、そして右にいる僕にも右腰を当ててくるのだ。


僕はだんだんとムカついてきた。

左でユラユラ揺れているおっさんのことが気になって、さだまさしが耳に入らなかった。

それに時々当たってくるのに「すみません」も言わないこのだらしないハゲ親父を殴りたい衝動に駆られた


しかし、先に手を出したら僕が警察につかまるという、非合理な結果になってしまう。

こういう時は、いつもの妄想暴力に限る。


僕はまず、おっさんのがら空きにあったわき腹に強烈なフックを浴びせた。

するとおっさんはつり革から手を離し、わき腹を押さえてうずくまった。

すかさず僕はおっさんのこめかみに膝を打ちつける。そして打ち付ける!さらにうちつける。

ついに横に倒れたおっさんのわき腹をストンピングストンピングストンピング

そしておっさんがまたわき腹を押さえた瞬間、がら空きの顔面へフリーキック!!!


そんな妄想をしていると、また左のおっさんが僕のほうに崩れかけてきた。

僕の妄想暴力は第二パターンへ


僕はおっさんの正面に回りこみ、おっさんの鼻っ柱に狙いをつける。

拳を握り、第二関節の尖った場所を、おっさんの鼻っ柱に叩きつける!!

眠っている最中にいきなり鼻を殴られたおっさんは鼻を押さえて目を見開くので

すかさず眼球に向かってグーパンチ!もう一つおあけにグーパンチ!

おっさんが目を押さえている間に後ろに回り、

後ろから思い切り股間フリーキック!!

そのままケツを前に押し込み、前倒しに。

追いかけていって首の辺りを真上からストンピングストンピングストンピング

最後はお馴染みの顔面へのフリーキックでゴォ~~~~ル!!


ああ~、本当にこんなに自由に暴力がふるえたら

どんなにすっきりするだろう・・・・


ま、想像するだけでも大分ストレスはとれるんだけどね。

そうニヤニヤしていると、僕の右隣の人が顔を近づけてくる

「な、なんだ!?」と思ってみていると、

なんと右隣のやつも居眠りサラリーマンだったのだ。


そいつは左手でつり革を持ち、右手は左腕の上に載せ、そらにその上に自身の頭を乗せるワンハンドスタイルでフラフラしはじめたのだ。

まだ若そうだが、おでこの辺りはかなりきているサラリーマン。


そう、僕は居眠りフラフラブラザースにいつの間にか囲まれていたのだ!!

その様は、ガソリンスタンドで洗車マシーンに突入したようでもあるし、

ホモ専クラブで2輪車サービスを受けているようでもある(行ったことはないけど)


オイ!僕が何か悪いことをしたとでもいうのか!!

なんだこの拷問は!

というか、くすくす笑って見てるんじゃねーよ、そこのOL2人組!!


後で2人とも相手にしてやるから、この状況をなんとかしてくれっつーの!!


結局、2駅ほど拷問プレイを受けた後、僕の降りる駅に着いた。

はぁ~、なんなんだよ、なんなんだよ・・・・


振り返ると、両脇のおっさんらも同じ駅だった・・・・

僕らはOL2人組の嘲笑に見送られ、電車を降りたのであった・・・・・・