僕は、マレーシアに来てからというもの、毎晩のように中古車販売のホームページを見ていた。
生まれて初めての車だが、20年以上ものペーパードライバーが運転するのである。
まず間違いなく、どこかにこすれてたりぶつけたりするだろう。だから新車なんてとんでもない。
まず間違いなく、どこかにこすれてたりぶつけたりするだろう。だから新車なんてとんでもない。
かといって、あまりに古くてボロボロの車ではすぐに故障してしまう。
なんせここはマレーシア。昼間灼熱の太陽にさらされたかと思えば、夕方洪水のようなスコールに見舞われ、エンジンはあっという間にいかれてしまうという。
また、道はガタガタ、運転は乱暴、ぶつけられたらひとたまりもない。
なんせここはマレーシア。昼間灼熱の太陽にさらされたかと思えば、夕方洪水のようなスコールに見舞われ、エンジンはあっという間にいかれてしまうという。
また、道はガタガタ、運転は乱暴、ぶつけられたらひとたまりもない。
そこで、僕が中古車を選んだ条件は
ついでに見た目もちょっとかっこいいものがいい、なんて思っていた。
ちなみに僕はマレーシアではよく利用されている「MUDAH」というサイトと「Carlist.my」というサイトで調べていたのだが、マレーシアで実績NO.1という触れ込みの「Carlist」は一度検索するとその後ことあるごとに広告が現れるようになってしまい、プチ嫌な感じがした。
で、結局ぼくが見つけたのはマレーシアのプロドゥアという会社の”Myvi"という車だった。
こいつがなかなかかわいいのである。
なんでもマレーシアを走っている10台に1台はMyviというくらい、どこでも見かけることができるのだが、ちょっとずんぐりむっくりした体型がなかなかプリティで、僕好みだ。
僕は「MUDAH」というサイトで条件に合うMyviを見つけ、ディーラーにメールを書き、実際に見に行くことにした。
中古車屋はそれほど大きくはなく、狭い敷地に15台くらいがぎゅうぎゅうに並んでいた。
で、僕が目を付けたMyviを見せてくれるのだが、どうもネットの写真で見た印象と違う。
僕「あれ?なんかクリーム色してんな。ネットだともっと白かったように見えたけど」
波多「ああ、光の加減ですよ、ボス(←なぜか僕のことをボスと呼んでいた)」
僕「なんか、車体、低くない?シャコタンっていうか、ヤンキーっぽいっつーか。これで凸凹道を走れるかな」
波多「ああ、前のオーナーが少し改造したみたいで」
僕「あれ?車のエンブレムが違わない?この車、プロドゥアだよね?」
波多「そ~なんですけど、これも前のオーナーの趣味で・・・TOYOTAのエンブレムに変えたようで」
僕「・・・なんで?」
波多「なんかTOYOTAのほうがかっこいいからじゃないですか?PASSO的な・・・」
僕「なんか、内装、キラキラしてない?」
波多「ああ、前のオーナー、若い中華系の女性だったんですけど・・・デコるのが好きみたいで」
僕「全体的にヤンママ仕様になってるのはそういうことか・・・」
波多「でもボス!エンジンは超きれい!タイヤはおニューのYOKOHAMAタイヤですよ!」
そういってエンジンルームを開けて見せてくるのだが、車のことなんて何にも知らない僕にはエンジンを見せられても何がいいんだか悪いんだか、わからない。
わかるのはエンジンルームでヤモリがチョロチョロ動いていることくらいだ。
値段はRM30000、日本円で93万ってとこか。
2009年モデルだから5年落ちで6万キロ走ってて93万・・・・日本じゃ考えられない高さだが、マレーシアでは中古車を売る時も高く買ってもらえるらしい。
2009年モデルだから5年落ちで6万キロ走ってて93万・・・・日本じゃ考えられない高さだが、マレーシアでは中古車を売る時も高く買ってもらえるらしい。
僕はこのクリーム色のMyviをマレーシアの愛車とすることに決めた。
名前は”偽PASSO”にしようか、”PASSOもどき”にしようか、”ギャルMyvi”にしようか。
そんなことを考えていると、波多陽区が「ボス、お支払いは?ローンにしますか?」
と聞いてくるので、ちょっと気取って「いや、一括で!」と答えてやった。
実は僕は車の購入代として母親にお金を借りることになっているのだ。
すでに日本から送金をしてくれたらしいので、3~4日もあればマレーシアの口座に入ってくるだろう。
波多は「ではボス、週末までに手続きを終わらせておきますんで、来週にはもう乗って帰れますよ」と上機嫌で対応、「事故があったらあっしのところに電話をくれれば、すぐに修理に行かせますんで。任せておくんなせぇ」などと調子のいいことを言っていた。
帰りは波多陽区が駅まで送ってくれた。車中で波多は目をキラキラ(?)させながら
波多「いや~、さすが日本人だ。日本人のお客さんは大好きです。みんないい人!日本車も最高!私、今まで車4台乗り換えてますけど、そのうち3台日本車です」
「それに引き替え、中国人のお客さんはダメ!クレームばっかり。1年乗り回した挙句に『お前が故障車を売りつけたんだから、無料で修理しろ』なんていいやがるんですから」
「え?あっしもチャイニーズじゃないかって?ボス、あっしはチャイニーズ、でも中国人はチャイナって言うんですよ、この国では。チャイニーズとチャイナは大違い!チャイニーズ、Good!チャイナ、NO!」
ま、僕にとってはどうでもいいんですけどね。ちゃんと手続きさえやってくれれば。
しかし、1週間後、僕がタチの悪い客になるとは、このとき誰も予想しなかったのである。