俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

人にやさしく

ザ・ブルーハーツの「人にやさしく」という曲が大好きだ
 
2018年にカロリーメイトのCMで使われたので、思い出してしまった。
それ以来、また「人にやさしく」を口ずさむようになった。

 
僕は今年46歳
ザ・ブルーハーツが活躍していたのが1985年から95年だから、ちょうど世代だな。
TV CMやドラマのタイアップ曲も多かったし、テレビやラジオでもガンガン流れ、高校の軽音楽部の友だちがコピーバンドをやっていたりと、ブルーハーツの楽曲は実に身近だった。
ただ、当時のブルーハーツは「ちょっと怖い人たち」という感じだった。
ライブのパフォーマンスもそうだし、街で女性ファンが急に「顔にサイン書いてください!」と近づいたところ、ボーカルの甲本ヒロトは平然と女性器のマークを書いて追い返した(女性は気づかずに喜んで去っていった)とかいう伝説も聞いた。
 
ちょっと気難しい、扱いづらい、近づきがたい人
 
そんな印象を持っていた。
 
イメージ 1


僕のイメージが一変したのが1991年に放送された「島原救済緊急特別番組・夜のヒットスタジオスペシャル」を見てからだ。
 
これは同年起こった島原の雲仙普賢岳の噴火による被害者を救済するためのチャリティー番組として放送されたのだが、当時は単に「チャゲアスが出るなら見てみようかな」くらいの気持ちでチャンネルを合わせていた。
 
この番組に出演していたのはHOUND DOG中森明菜TM NetworkにB'zといった当時(も)大人気のスターたち。正直、THE BLUE HEARTSは認知度では一番下だったと思う。
 
で、出演者は被災者への応援メッセージを交えつつ、歌を歌っていたのだが、このチャリティ番組でCHAGE & ASKAは新曲「SAY YES」を披露。

僕は「ん?新曲を披露?」と違和感を覚えたものだった。
 
一方、THE BLUE HEARTSが選んだのは4年前に作った「人にやさしく」。
ヒロトは特にしんみりとするでもなく、いつもどおり狂ったように舌を出し、体をくねらせ、足を上げ、焦点の合わない目で歌い続けた。
 
当時のパフォーマンスを僕の隣で見ていた父は怪訝な顔で見つめ、向かいに座っていた母は「いやね~、なにこれ?」と眉をひそめた。
 
ただ僕はその歌の歌詞を見ながら「・・・この人たちは・・・なんて、やさしい人たちなんだ・・・」と打ち震えていた。
 
新曲をプロモーションする気もなければ、格好をつける気もない。

ただ「がんばれ」というメッセージを届けるという使命だけで出演していた。

僕は被害者ではなかったけど、ブルーハーツのメッセージはちゃんと”聞こえていた”
 
イメージ 2


 
あれから27年
僕もすっかりおじさんになった。

仕事は楽しいが、はっきりいって生活は厳しい。
とてもじゃないが家族3人が暮らすのに精いっぱい。
家も買えなきゃ車も買えない。
子どもが「私立の学校に行きたい」なんて言おうものなら「うちにそんな金はない。行きたきゃ自分で稼いで行け」と突き放さなきゃいけない状態だ。
今の仕事はやりがいだけで続けている。
家族には申し訳ないが。
 
そんな僕に人生相談をしてくる20代の若者がいた。
「この仕事を続けていって大丈夫でしょうか」
 
こういう相談を受けると、僕は決まってこういう。

「他の仕事ができるなら、他の仕事を選んだ方がいい」
「この仕事では家族は養えないよ。家も車も買えないよ」
「同年代のサラリーマンとどんどん差がついていくよ」
「転職するなら今のうちだよ。俺みたいになったらおしまい。気づいたときにはどこにもいけなくなるよ」
 
おそらくその若者は背中を押してほしかったのかもしれない。
「大丈夫だよ」と言ってほしかったのかもしれない。
でも僕は無責任にそんなことは言えない。
彼の人生がかかっているのだ。
 
結局、彼はこの仕事を続ける決意をした。

「厳しいよ。大変だよ。」
 
~期待外れの 言葉を言う時に
 心の中では がんばれって言っている
 聞こえてほしい あなたにも
 
 がんばれ!