俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

じゃない方・関取花

関取花さんというシンガーソングライターがいる。

僕が彼女を知ったのは2016年

行列のできる法律相談所』にゲスト出演し、”ひがみソングの女王”として紹介された時だ。

その代表曲『べつに』は、結婚前のモテない30代の僕だったら共感できたかもしれなかったが、当時すでに妻子のいた僕は「ああ、コミックソング歌うブスね」くらいの認識しか持たず、”べつに”たいして印象は残らなかった。

その後ひがみソングの女王はそれなりにおもしろがられ、バラエティ番組などにちょいちょい呼ばれ、ひがみエピソードを披露するようになった。

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その後何日かして、何気なくYoutubeを見ていると、「あなたにおすすめ」として関取花さんの「もしも僕に」がリストアップされているのに気付いた。

しかもその時ですでに250万回以上は再生されていたで、「おかしいな。この人のひがみソングで一番話題になったのって『べつに』じゃなかったの?」と思い、聴いてみたところ、この曲はとんでもなく素晴らしい曲だったのである。


しかも僕には一人息子がいるもんで、この「もしも僕に」の歌詞がドンピシャ!

息子を持つ父親の心を鷲掴みにされてしまったのである。


僕が息子に対して思うことは

「自分のやりたいことは自分で決めて、あとは自分で責任を取ってやれ」

これだけ。

勉強はやりたきゃやればいいし、やりたくなければやらなくてもいい。

人に迷惑をかけないようには注意するけど

それ以上の躾はあんまりしたくない。

お行儀よくなくてもいいし、頭が悪くてもいい。

そこらへんで寝転がろうが、親の言うことに反抗しようが構わない。

俺だってそんな上等な人生を歩んできたわけでもないし

あまのじゃくな性格で学校の先生や親を困らせてきたしね。

自分では「がんばって」「まじめに」「努力して」生きてきたつもりだけど・・・それが収入に直結するわけでもなかったし・・・。

関取花さんの「もしも僕に」は、そんな僕がまさに息子に伝えたいメッセージが満載

しかも・・・歌がすこぶるうまい!

声がきれいだね。ファルセットっていうの?裏声?まあ、とんでもなくきれい。

僕の中で奥田民生さんの「息子」と並ぶ、息子ソングの永久保存版

もしかしたら関取花さんは将来の自分の子供に対してだけでなく

今を生きる若者

中学生や高校生に向けてのメッセージとして書いた曲なのかもしれないので、ぜひとも聞いてほしいね。

ま、普通の親や学校の先生はきっとこの曲を聴くことは勧めてはくれないだろうけど

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それからいくつか関取花さんの曲のPVを見て回ったんだけど

もう一曲心に響いたのが「むすめ」という曲

僕も今年46になるもんで、こういった曲にめっぽう弱い

関取花さんはちょっとずるい。

親父の弱点を見事についてくる。

僕の同僚に娘を二人持つ人がいて、上の娘さんが来年高校に入る年なのだが、「音楽を勉強しに留学したい」と言ってきたそうで同僚を悩ませているのである。

もちろん、同僚は大反対。
大切な娘を、まだ幼さの残る娘を外国になんてやれないし、
その娘さんも小さいころからバイオリンを習っていたとか、ピアノの練習に明け暮れていたとかいうわけでもなく、ボカロに曲を作るのが趣味、といった程度なのだそうだ。
昭和の親なら、まず反対するだろう。

でも・・・関取花さんの「むすめ」
一度聴いてほしいな。

前半だけでもいいから
*もっともPVの後半はエンドロールでリピートしているだけなんだけど。


これ、PVとしてもよくできてるんだよね。

主演の女の子のなんとも言えない表情

思春期特有の感情の揺れを見事に表現したあの顔

それからバレエの踊りを取り入れたしなやかさとちょっとコミカルな動き

一人の教室、夕方の港、風の吹く草原、日が落ちかけた学校の屋上

ソロのダンスもいいが、友だちとのダンスもいい
無理にシンクロさせるのではなく、少しバラバラなところが”それぞれの進路の悩み”を表しているようでなんともいい。

関取花さんの歌い方は「もしも僕に」とはちょっと違う、少し籠ったような声ではじまり、張りのある高音のサビにつながるのだが、シンプルなアコースティックギターがまたその歌声を生かしている。

歌詞はよく聴くとAメロが「むすめ側からの声」でサビが「親側からの声」となっている。
だから娘からの気持ちも、親の気持ちも両方混じっている。

親や教師は「自分のやりたいことを早く見つけて、進路を決めろ」「大学で何を勉強したいんだ!」なんてことを問い詰めちゃいがちだけど、大学入る前から将来やりたいことが決まっている高校生なんてそういない。
そんなことを言っている親だって、絶対に将来の職業を決めたのは就活するようになってからのはずだ。

だからこそ、関取花さんが描く親は「(大学に入って)広い世界に触れてみなされ」「(大学で)夢を見つけなされ」と歌っているのだと思う。やさしい。

この曲は神戸女子大学のTVCMのタイアップに使われたそうだが、この曲を見つけた神戸女子大学はファインプレーである。

もし神戸女子大学が「うちの大学でいろいろ学んで夢を見つけてください」と迎えてくれるなら、僕も子供を神戸女子大学に入れたいな。

ま、うちは息子しかいないんだけど。

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で、つくづく残念なのは

関取花さんがテレビでは「ひがみソングの女王」としてしか紹介されず、ひがみエピソードを話す毒舌アーティストとしての役割しか期待されていないところである。

テレビの世界はあるタレントに一つのレッテルを貼りたがる。

そしてその一つだけを脚色して、おもしろおかしくいじろうとする。

でも関取花に一つレッテルを貼るならば

天才シンガーソングライター

これで十分だと思う。

しかし世の中は不条理だ。

天才が必ずしも評価されるとは限らない。

売れるほうの天才があいみょんだとするならば、

”じゃないほう”が関取花

でも、売れてほしいな。

今年の春からメジャーデビューが決定したということは、評価している人はいるはずである。

テレビに出なくても”曲はタイアップされる”とか”コンサートはいつもソールドアウト”とか

そんなんでいいから・・・評価されてほしいな・・・