俺よ、男前たれ

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武藤敬司引退Special②

Youtubeで「武藤敬司名勝負BEST10」なる動画を観た。

武藤敬司名勝負BEST10 - YouTube

作成主は僕よりもずっとプロレス愛が強くプロレスに詳しい方のようで、その試合に至るまでの背景・流れの解説も詳細で考察も深く非常に面白かった。一方の僕はテレビ、雑誌、ネットなんかでたまにプロレスをチェックするくらいのライトなファンなのだが、それでも武藤選手が大好きで、僕にも僕なりの「武藤敬司の名勝負」がある。そこで自身の記録のために「僕なりの武藤敬司の名勝負・名場面BEST10」を書いておきたいと思う。

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1位 武藤敬司VS高田延彦(1995年10月9日)

 これはプロレスファンならほとんどの人が1位に選ぶであろうベタ中のベタ。とにかく舞台が整いすぎていた。UWFインターが団体の存続をかけて新日本との対抗戦をもちかけたこの日の大会。今と違って団体対抗戦はもっと殺伐としていたように思う。そして第1試合から新日本のレスラーとUWFのレスラーがバチバチにやり合っていてなんとも言えない緊張感が続いていた。でメインイベントはこの年絶好調で新日本のエースとして君臨していた武藤敬司UWFインターの大看板・高田延彦の試合。全てのプロレスファンが固唾を飲んで見守ったし、今、活躍している30代以下のレスラーの中にはこの試合の影響を受けた人も多いと思う。伝説の始まり、といってもいい試合。当時の僕は大学生、一人暮らしのアパートで深夜の新日本プロレス中継を観ながら一人興奮していたな。

 

2位 VS 中邑真輔(2008年4月27日)

もう15年前の試合になるのか・・・時が経つのは早いな。当時のIWGPヘビー級チャンピョンの中邑真輔全日本プロレス移籍後の武藤敬司を挑戦者に迎えたタイトルマッチ。新日本のリングであったにも関わらずなぜか会場も「武藤がこのリングに帰ってきた!」「絶対面白くなる」という期待が渦巻いていた感じ。で始まってみれば終始武藤ペース。出す技は「膝への低空ドロップキック」「ドラゴンスクリュー」「シャイニングウィザード」の3つのみ。この3つをリング上、ロープ際、フェンス際などバリエーションをつけて繰り出すのだが着実に中邑の膝を破壊していく。ベテランらしい省エネの動きながら効果抜群の攻め。そして勝機と見るやロープ越しのネックスクリュー、ムーンサルトで圧巻のフィニッシュ。止まる時は止まり、動くときは素早く動く、緩急のつけ方が絶妙!まさに「これぞ武藤敬司!」という試合。IWGPのチャンピョン相手に危なげない試合で8年ぶりのベルト奪取。カッコ良かったな~。終わってみれば新日ファンで埋め尽くされた会場も大・武藤コール。外敵のはずなのに会場を味方にしてしまうのは本物のスターだよな。

 

3位 VS 天山広吉 (1995年 ?月?日)

この年、よく天山選手とシングルをやっていたと思うが、おそらくUWFインターとの対抗戦の後だったように思う。武藤選手は前の対戦で天山選手に額を割られていて何針か塗った状態で額にテーピングをしている状態だった。で、この年絶好調だった天山選手は大いに武藤選手を追い詰めるのだが、武藤さんは終盤にドラゴンスクリューを決めるとここからはもう完全に自分のペース。天山選手が立てなくなるほどドラゴンスクリューを喰らわすと興奮して頭のテーピングを自らはがし、ミサイルキック→コーナー上からのフランケンシュタイナー→(シュミット流バックブリーカーなしでコーナーに駆けのぼって)天山選手の膝の上にランディングボディープレス→(そのまますぐ)足四の字固めと、フルコースを浴びせて完勝。最後の一連の流れとスピード感は見事だった。

 

4位 VSスコット・ノートン (1995年2月3日)

1995年の武藤さんは1月から3月までが大スランプからの休場、4月から徐々に調子を取り戻し、夏のG1で優勝、IWGP奪取、UWFインターとの対抗戦で高田延彦に完勝、プロレス大賞受賞と下半期見事なまでの大浮上を見せた。で、このノートン戦はスランプ中の一戦。武藤さんはなんとか状況を打開しようとスピードとテクニックで相手を翻弄しようとするが、190cm、150㎏の超竜スコット・ノートンは、武藤さんが繰り出す技を全て力で跳ね返してしまう。すると武藤さんはノートンの前でマットに頭をつけて人差し指を立てながら「くっそ~どうすりゃいいんだ~」と悩みだす。解説の辻さんも「あ~武藤が考えています!」と絶叫。この武藤さんの姿が僕的には滅法男臭くて、色っぽくてカッコ良くみえたな!やっぱり超一流のエンターテイナーだ。やられているのに見ている人達は武藤さんの一挙手一投足にくぎ付け。結局試合は負けてしまったのだけど、負けてこれだけ絵になる男もそういるまい。

プロレスラーのスコット・ノートンの全盛期の腕周りは何cmだったのでしょうか? ... - Yahoo!知恵袋

5位 武藤敬司・リックスタイナー VS 蝶野正洋天山広吉 (1996年 Super Grade Tag League)

新日本プロレス世界タッグリーグ戦で、武藤さんが一度だけリック・スタイナーとタッグを組んで出場したことがあったんだが、これがまあアメリカンで楽しいチームだった。もともとスタイナーブラザースというと、試合中に相手チームをリング外に落としてからのあのポーズが有名。

で武藤さんはそれをオマージュしつつ本家を超えたパフォーマンスをするもんだからメチャメチャ楽しくてカッコ良くて目立ってたな。他の地味で超真面目な日本人タッグチームがちょっとかわいそうだった。

ちなみにこのリーグ戦ではリックは犬のようにBowBowと吠え、武藤さんが頭を撫でてあやすという仲良しぶりをアピール。試合中、武藤さんがドロップキックで蝶野・天山組をリングの外に叩き落すとリックは嬉しそうに吠えながら武藤さんの周りをぐるぐる。武藤さんも興奮冷めやらぬ様子で両足をガンガン鳴らしながらジャンプ。そして例のポーズでばっちり決めてくれた。武藤さんのエンターテイナーぶりは惚れ惚れするね。

 

6位 武藤敬司太陽ケア VS 三沢光晴小川良成(2004年7月10日)

ついに実現した天才同士の対決。さすがにこの対決は実現しないだろうと誰もが思っていたのに、タッグとはいえ両者が肌を合わせるのだ。どちらも全盛期ではなかったけれど、現役であるうちに対戦が実現したことに感謝感謝。

試合は千両役者同士の技の掛け合い、受け合い。もう楽しくてしょうがない!三沢さんはタイガードライバー、エルボースイシーダで厳しい攻めを出せば、武藤さんも三沢さんにドラゴンスクリュー、小川さんにSTFと得意技を惜しげもなく披露。武藤さんが三沢さんを見ながら掟破りのエメラルド・フロウジョンを出せば、三沢さんも即座にシャイニングウィザードでお返し。このやりとりの絶妙なこと。今思えばこのタイミングで良かったのかもしれないな。あの頃は全日本もNOAHも輝いていた・・・。

 

7位 武藤敬司田上明 VS 小橋建太高山善廣(2009年9月27日)

NOAH - Keiji Mutoh & Akira Taue vs Kenta Kobashi & Yoshihiro Takayama - YouTube

武藤さん、小橋さんと言えばファイトスタイルは違うものの、①ムーンサルト・プレスを得意技としていること、②当時オレンジ色のパンツを着用 といった共通点もあり、ライバル団体のトップ選手同士ということもあって比較されたこともあった。

で、これまたついに実現した対決なのだがこれは少しコミカルだった。小橋選手はやや好戦的。ラフファイトも辞さないという感じで武藤選手に襲い掛かる。が、武藤選手はちょっと大げさに怒ったふりをして田上選手になだめられるなど、ちょっとコミカルテイスト。武藤さんと田上さんは接点はないが武藤さんは田上さんのことを「社長」と呼び敬意を表してちゃんと言うことを聞くところもちょっと滑稽。ただ全体的に全力でがむしゃらに向かってくる小橋選手に対し、武藤さんがうまく受けてくれた感じ。僕は小橋選手も大好きなのだが、器用さ・観客の湧かせ方・エンターテイメント性などでは武藤さんに軍配が上がっていたように思う。できれば全盛期にやってほしかったが、これもまあ、まず実現したことを良しとしましょう。

8位 VS 内藤哲也 (2012年1月4日)

実はこの頃、僕は内藤選手のことをよく知らなくて「1度G1で優勝したことがあるよな」「会社からも推されてそう」くらいに思っていた。”天才肌””華やかな衣装”は確かに武藤さんっぽかったが、体が小さくジュニアヘビーの選手っぽく見えたし、結果もなかなか伴わず、同じ新日の高橋裕二郎選手から「内藤ちゃん、引退しろ!」とよくコケにされていた。

DOMINION622 NAITO vs TAKAHASHI Match VTR - YouTube

で、実際の試合は試合中盤で武藤選手がいつもの膝攻めをしてからは一方的な展開。いつもの完勝で終わったのだが、内藤選手は最後はふてぶてしかった。武藤選手から差し出した握手に応じず、悔しそうにリングをさっと降りて去ってしまったのだ。「なんだコイツ、後輩のくせに生意気な。格下のくせに」と当時は思ったな。内藤さんは相手が武藤敬司でも負けない自信があったのかもしれないし、その負けん気があったから今の内藤哲也があるのかもしれない。

ただこの直後、ラジオ番組に出演した内藤選手は苦笑いをしながら「何もできずに負けてしまいましたね」と振り返っていたな。根はいい人なのかもしれない。

ま、武藤さん的には完勝試合の1つ。やはり武藤さんが武藤さんの試合運びで勝つ試合が僕は好きだな。

 

9位 武藤敬司獣神サンダーライガー、CIMA VS 諏訪間・吉野正人ザ・グレート・サスケ (2011年1月24日)

GAORA開局20周年記念と銘打たれた大会で、団体の枠を超えて集まった夢の対戦。この試合ではドラゴンゲートのスピードスター吉野正人選手が異常に武藤さんを意識していた。そして先発を買った吉野選手は武藤選手を相手に「グランドテクニックでもある程度付き合ってやる!」とばかりに武藤さんの寝技に付き合うのだが、武藤さんはいつも通り寝技で相手の上に体を預けながら吉野選手の技術を図る。吉野選手は首や腕を極められないように守りつつ、必死に体勢を変えようとするが武藤選手はうまく体をコントロールして110キロの体をずっと吉野選手の上に載せ続ける。結局吉野選手は試合序盤に動きを封じられ、持ち味を発揮することができなかったが、武藤さんのグランドの上手さといったらなかったな。この頃の武藤さんは若手と試合をするときはまずこうしたグラウンドの攻防で相手の力量を測っていたのだが、常に相手の上に乗るような形で相手の体力を奪っていた。飛んだり跳ねたりが多いジュニアの選手の試合に比べると派手さはないが、柔道で培った武藤さんの寝技の技術は見てて飽きなかったな。

 

10位 武藤敬司丸藤正道、VS清宮海斗モハメド・ヨネ谷口周平(2020年6月6日)

武藤敬司と清宮海斗が初激突!武藤敬司 丸藤正道 望月成晃 VS 清宮海斗 谷口周平 モハメド ヨネ|プロレスリング・ノア - YouTube

清宮海斗選手が初めて武藤さんと対峙したこの試合。若くしてGHCのベルトを獲り、会社の庇護のもと、団体の未来を担うエースに奉られていた清宮選手は「武藤越え」を高らかに宣言。しかし終わってみれば全盛期をとうに過ぎていた武藤選手に軽くあしらわれてしまった。清宮選手の試合を初めてまともに観た僕も「なんだこの若造は?場外戦もショボいし、なんでこの程度で会社にプッシュされてんだ?」と思ったものだ。清宮選手はこの後シングルでの対戦を希望したが武藤さんから「お互いコロナ検査をして陰性だったら・・・」とお茶を濁された。明らかに「まだ早い」という突き放し方だったが、その後武藤さんから”後継者”使命をされることになるんだから、何か光るものがあったのかもしれない。僕にはまだ見えないが。とにかく武藤さんの厳しくも温かい、温かくも厳しい指導が目立った試合だった。

 

番外編

黒師無双 VS カズ・ハヤシ (2002年7月8日)

黒師無双vsカズ・ハヤシ - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)

全日本プロレス30周年記念大会、別名”武藤ナイト”。武藤さんが「武藤敬司黒使無双・グレートムタ」と3つのキャラで1日3試合を行うという無茶苦茶な企画。その第1試合で行われたのがこのカズ・ハヤシ戦。武藤さんにとっては最初の1つにすぎなかったかもしれないが、カズ・ハヤシだって咬ませ犬で終わるわけにはいかない。そこでカズが考えたのは”4人目の武藤””あの頃の武藤敬司”というサプライズだった。前日まで金髪に顎ヒゲ、ブルーのタイツだったカズは、黒髪・シャーベットオレンジのパンツに白Tシャツと、新日本プロレス時代の最も輝いていた頃の武藤敬司の姿で登場。そしてあの頃の武藤のようにロープを使ってジャンピング・リングイン!入場曲もあの頃の武藤さんの入場テーマ曲で今でも僕が大好きな『HOLD OUT』。無条件にテンションが上がるこの曲が流れた瞬間、会場の人もなぜか「武藤コール」(カズ・ハヤシの入場なのに)。

試合は体格とパワーで上回る国師無双が勝ったが、第一試合にしては体力を使い過ぎてしまった武藤さん。観客もカズ・ハヤシがあの頃の武藤さんのムーブメントを出すたびにやんややんやの大歓声。珍しく一杯食わされたムトーさんでした。

武藤敬司 入場曲 HOLD OUT - YouTube