俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

長州&武藤ペアはなぜほっこり?

『1億3000万人のSHOWチャンネル』(日本テレビ系)にプロレスラーの長州力さん、武藤敬司さんが登場、二人で秘湯旅を楽しんだ。

僕は子供の頃からプロレスファンで元々二人は大好きだったのだが、今のこの二人の関係はナンなんだろう?なんで見ているだけで嬉しくなっちゃうんだろう?

JKから見たらただのおじいちゃんのじゃれ合いだろうに、この二人の温泉旅がゴールデンタイムの、しかも櫻井翔君の番組で4回も流されていることに驚きを覚える。

いいのかな?でも嬉しいな。

f:id:Yamazy2019:20210628000529p:plain


長州さんは1974年に新日本プロレスに入団。華麗な経歴とは別に入団当初は藤波辰爾選手の活躍の陰に埋もれていたいう。

でも僕が覚えているのはやはり80年代初頭、ゴールデンタイム(金曜夜8時)にプロレスが放送されていた時代だ。藤波辰爾に突如敵意をむき出しにし、以後維新軍のエースとして本隊の猪木・藤波と抗争していた姿だ。当時小学校の5年生か6年生だった僕は猪木や藤波が負けるんじゃないかと冷や冷やしながら見ていた記憶がある。

ジャパンプロレス時代・全日本プロレス時代はほとんど見ていないので、僕が次に長州さんを観た時にはすでに「めちゃめちゃ怖い先輩」「理不尽に怒る人」になっていた。

橋本真也選手が強烈な蹴りで下剋上を成し遂げようとしていた時には得意のラリアートではなく走りこんでのグーパンチで沈めていた(「ちょっとずるい」と思ったな)。またエル・サムライ選手がベルトを強奪してまさに挑戦権をアピールしているその時にジャイアンの母親のように「よこせ!」とベルトを取り上げてしまった(マスコミを含め気まずい雰囲気になった)。さらに凱旋直後の天山広吉選手にフォールを奪われた際には控室でタッグパートナーの橋本らに「俺の体は一つしかないんだぞ!」と叫びながら椅子を投げつけて仕返しの襲撃に行かせてた。

とにかく当時の長州選手は「怖い人」。ファンもマスコミもうかつに近寄れない、バラエティ番組で芸人がいじったり絡んだりするなんてとんでもないことだった。

一時期長州選手を慕っていた後輩も徐々に長州選手のもとから離れていったので、同業者から見ても長州選手は「扱いづらい」「あまり一緒にいたくない」人だったのかもしれない。

 

そんな長州選手が一目置いていたのが天才・武藤敬司選手だ。

この二人の関係は本当に不思議。

武藤選手が入団したころに長州選手は一度新日本プロレスを離脱しているので、最初から上下関係がしっかりしていたわけではない。また当時は長州さんを慕っていたり、同じ軍団で戦っていた後輩は他にたくさんいた。大学の後輩・馳浩選手(現在は国会議員)、佐々木健介選手、谷津嘉章選手、小林邦明選手などなど。でも今も長州さんと親しげにしているという話はあまり聞かない。

さらに長州選手は後輩に舐められるのが嫌いで、伸びてきた芽は徹底的につぶすスタイルだった。橋本真也選手は最も標的にされた一人だったし、UWFインター安生洋二選手や垣原賢人らも周りがヒクくらいボコボコにやられていた。彼らの攻撃に対してはわざと効いていないフリをして格下扱いをするのが常だったように思う。

しかし武藤さんに対してだけは当時からちょっとリアクションが違っていたかな?

 

f:id:Yamazy2019:20210628001147p:plain

一方、武藤さんは武藤さんでちょっと変わったところがある人のようだ。

僕が大学生時代に見ていたころの武藤さんのイメージは「クール、二枚目、冷静、頭脳明晰、大人、エンターテイナー」。プロレスラーと言えば無骨で豪快、理屈が通じなくて悪く言えばガキ大将っぽいイメージがあったが、武藤さんは全く逆のイメージ。だからカッコよかった。

が、のちに雑誌やインタビューで知ったのだが、どんなに怖い先輩レスラーにも理不尽な要求には従わない気の強さがあったそうだ。では生意気で可愛がられなかったというとそんなことはなく、今でも前田明さんや長州さんといった先輩レスラーと笑顔で談笑できるのだから、よほどの”人たらし”なのだろう。もちろん武藤さんの才能、業績、日本のプロレスに与えた影響もあるが、先輩から見てなんとなく憎めない天性の人懐っこさや可愛げがあるに違いない。

 

そんな武藤さんと長州さんの二人旅は実に面白い。

武藤さんは長州さんのことを一応先輩として立てているのだが、いつもの茶目っ気で「長州さん、何言ってんかわかんないっすよ」「また同じこと言ってますよ」などとからかってしまう。そして何度注意されても長州さんを指さしてしまう。

その度に長州さんは「お前、人を指さすなって何回言ったらわかるんだ!」と怒り、武藤さんにからかわれているのがわかると「お前、後で鍋に入れて煮殺してやるからな!」と脅す。すると武藤さんはなぜか嬉しそうに笑うのである。

一緒にアスレチックにチャレンジすれば「敬司!お前、まだ来るなよ!揺らすなよ!敬司!こら!敬司!」と怒り、武藤さんはそれを無視して追い越し、「先にホテル帰ってますよ」と行ってしまう。今年70歳になる長州さんと59歳になる武藤さんのこのやりとりの面白さは何なんだろう?

 

プロレスを辞めてから滅法丸くなり、バラエティ番組でいじられるようになった長州さんは、プロレス関係者以外には非常に低姿勢で、芸人さんにも基本”さん”付けで呼んでいる。そして「俺なんて小峠さんのおもしろさには勝てないよ」と謙遜する。

が、武藤さんには「おい、こら!敬司!お前、また俺をバカにしてるだろう!」と先輩の姿を見せて怒るのである。が、もちろん現役当時のそれとは違う。こんな姿は武藤さん以外には見せないのではないか。だから一緒にいて楽しいのだろう。現在、長州さんが遠慮なく先輩風を吹かせられる相手、それが武藤敬司

で武藤さんはそんな長州さんを軽く受け流し、からかい、今の長州さんを楽しんでしまう唯一の後輩なのかもしれない。現役当時長州さんに因縁がある後輩は決して長州さんに近づこうとしないし、仕事で組まれた対談以外で絡もうなんて思わない。”悪のカリスマ”と言われた蝶野正洋選手も意外と律儀な性格なので先輩・長州さんの前ではリラックスできない。でも武藤さんは先輩として長州さんを立てつつ長州さんで遊んでしまう。これがすごい。

 

いいなあ、こういう人間関係。こんな先輩・後輩関係。ほっこりするな。

僕はこれまでそういう人間関係を築いてこなかった。本気で意見をぶつけあったことも喧嘩をしたこともない、一緒に何かに取り組んだりしたこともない。

先輩に逆らったこともないし、何なら後輩に厳しくしたこともない。

何事も穏便に済ましてきたので、平穏ではあったが、”志の同じ仲間””心では通じ合っている仲間”ってのがいない。

 

だからこそ長州力武藤敬司のおじさんペアに憧れるのかもしれない。

憧れのスーパースター達の老後のじゃれ合いがこんなにほっこりするとは。

まだまだ楽しみがあるな、この世は。

f:id:Yamazy2019:20210628001835j:plain