俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

フワちゃんのプロレスデビューで思い出す

ここ数日『フワちゃんのプロレスデビュー、プロレスファンが称賛!』『フワちゃんのデビュー戦、感動した!』とネットで騒がれている。僕はプロレスファンであり、フワちゃんのアンチである。だから即座に「けっ!また芸能人が接待プロレスしてもらっていい気になってんだな」と思ったし、「若い奴らは簡単に”感動した”とか大げさに書くけど、実際見ると大したことないんだよな」とも思った。

で、先日録画してあった『行列ができる相談所』(日本テレビ系)を見てみたら不覚にもフワちゃんの頑張る姿に泣いてしまったのである。うわ、俺ダセー。でもフワちゃん、すごかったな。

スターダム】フワちゃんがプロレスデビュー戦で敗れる 上谷沙弥に押さえ込まれ無念3カウント - プロレス写真ニュース : 日刊スポーツ

 

『行列のできる~』で錦鯉・長谷川さんも言っていたけれど、おじさん世代はフワちゃんが苦手だ。タメ口で妙に馴れ馴れしくてお調子者でみんなの人気者で成功者。そんで裏では謙虚で礼儀正しかったりするのがさらにタチが悪い。だから本当は応援なんてしたくないのだ。

でもプロレスに挑戦するフワちゃんは先輩レスラーに謙虚で、プロレスに対して謙虚だった。タレントとして1回だけゲスト出演して、目立って終わるつもりはないようで、基礎からみっちり鍛えてもらって決して羽目を外さなかった。僕らおじさんが仕事帰りに酒飲んだりマンガ読んだり、メタボの腹をさすったり自分の股間をさすったりしていたこの5か月余り、フワちゃんは仕事の合間をぬって必死に体をいじめていた。毎日毎日何時間も基礎トレ、受身を繰り返し、体中あざだらけになっていた。

フワちゃんの体はプロレスファンから見ても実に理想的だった。いい意味で女性らしくない。腰のくびれ、腕や足の湾曲がなく胴回りも手足も太くてまっすぐ。デビューを控えた練習生特有のぽちゃぽちゃした感じもなく、かといってビューティーコンテストのような見せる筋肉でもない。相手の技を受けることを前提にした強い芯に筋肉と脂肪をバランスよく巻き付けたような体が出来上がっていた。

そして本番。運動神経や大舞台での度胸はさすがなものがあるが、やはりちゃんと相手の攻撃を受けてしっかり受身が取れていることに驚く。8歳の息子はフワちゃんに攻撃を加える相手の神谷選手(現役のチャンピョン)に「ムカつく!なぐってやりてぇ」とフワちゃんに肩入れ(そのうち観ていられなくなって退散)。僕もフワちゃんが攻撃を受けるたびに熱くなり、フワちゃんのプロレスに対する”本気”を感じてちょい泣き。最後の二段蹴りを顔面に受け、危険な角度で頭の方から落ちた時はヒヤッとしたが、神谷選手もデビュー戦のフワちゃんを「ちゃんと技を受けられる子」と認めたからこそのあの攻撃だったのだろう。

フワちゃん、お疲れさまでした。今回はネットの記事通り。プロレスファン納得です。

スターダム】フワちゃんプロレスデビュー戦 異例ともいえる報道陣17社が集結 | 東スポWEB

なお、プロレス初挑戦のフワちゃんはネットでインリン・オブ・ジョイトイやLiLiCoのプロレス動画を観ていて、くりぃむしちゅーの有田さんに「(本番は)おふざけの要素をどういれたらいいか?」という相談をしたところ、「小橋建太VS佐々木健介戦を見ろ!本気でやれ!」と怒られたらしい。・・・わかる。

HUSTLE 2006 Tajiri & Yingling vs RG & Great Muta - YouTube

2005.07.18 プロレス 世紀の豪腕対決! 小橋建太vs佐々木健介 - YouTube

ちなみに僕がフワちゃんにぜひ見ておいてもらいたかった試合が1つある。それはある女子レスラーのデビュー戦だ。その選手の名は広田さくら。1996年にデビューし、その後引退、復帰、結婚、出産を得ながら未だにリングに立つベテランである。へなちょこと呼ばれながらもそれを個性にし、唯一無二のキャラクターでリングに笑いを振りまく広田。大物レスラーから新人レスラーに至るまで愛されいじられ続けるレジェンドレスラーの一人である。

僕は彼女のデビュー戦をあるテレビ番組で見た。今から26年前、練習生だった広田がデビューするまでを追ったドキュメンタリーだった。「辞めたいと思ったことはないの?」と質問されると「はい、いつも思ってます」と答えるなど終始へなちょこだった広田は、練習中も気合が伝わらず師匠の長与千種に怒鳴られ、苦笑され、ダメ出しをされ続けた。自分がうまく出せない広田に対し長与は往復ビンタを喰らわすと涙声で「自分がうまくできるかわからなくて怖かったです・・・」と本音を漏らす広田。長与は優しく抱き寄せ

長与「なんで言わなかったんだよ~」「最後に一つだけ聞かせて。なんのために(リングに上がるの)?」

広田「・・・自分のためです」

長与「そうだよな。お母さんのためじゃない。自分のため。忘れんな。」

そう肩をぴちゃっと叩いて去っていく熱血師匠・長与千種。体育会系の僕も胸熱の名シーンであるが、哀しいかな今ではコンプライアンス上、再放送できないんだろうな・・・。

広田のデビュー戦は「ディスカバリー・ニューヒロイン・タッグトーナメント」。各団体の看板レスラーと若手有望株がタッグを組んで参加する大会で、なんと長与千種のパートナーとして指名されたのだ。他の団体は若手のエース級が出ているので、広田の起用は大抜擢というか大博打だ。しかも相手は全日本女子プロレスアジャ・コング田村欣子選手。勝ち負けはもう関係ない。広田にできることは根性を見せることのみ。そして広田はその通りの姿を見せた。アジャのダイビングボディープレスをまともに受けながらも2カウントで返し、投げっぱなしのジャーマンスープレックスさえも返した。そして最後はアジャコングに裏拳を出させて敗れるという、最高のやられっぷりをデビュー戦でやってのけたのである。(Youtube上に残っていないのが残念!)

フワちゃんも大変だったろうが、デビュー戦でアジャコングと戦わなければならなかった広田も相当な恐怖だと思う。

それにしてもあの時のへなちょこレスラーが今も現役で戦っていること、誰からも愛され、女子プロレス界で唯一無二のポジションを確立しているということは感慨深い。ダメな奴ほど先輩に可愛がられ、しごかれる。そんなレスラー・広田さくら(旧姓・広田さくら)よ永遠なれ。

【女子プロレス GAEA】これでもまだ真面目にやってるほう 長与千種 vs 広田さくら 1998年6月21日 クラブチッタ川崎 - YouTube

【女子プロレス GAEA】パワーボムに新人・広田失神!? デビル雅美 vs 広田紗久良 1997年1月19日@後楽園ホール - YouTube

フワちゃんも続けてほしいな、プロレス。