「ハロウィンはチェンソーマンがいいって!」
我が嫁はいつも唐突に話し始める。
話を聞いてみると、近所のママ友たちとハロウィンパーティーを企画していて、お金を出し合ってお菓子を買って子供たちに配ることになったのだそうだ。で、子供たちは思い思いの仮装をさせるのだが、息子は「チェンソーマンの仮装がしたい」と言い出したらしい。
ハロウィンで盛り上がるのなんて渋谷の若い人くらいだと思っていたのに、最近は幼稚園や小学校でも年間行事として扱っているらしい。そういえば息子が幼稚園の時も嫁は「セブンがいいって!」と唐突に言ってきたことがあったな・・・。
で、冒頭の”チェンソーマン”である。
そもそも”チェンソーマン”って何よ??アメリカのホラー映画に出てくるあれ?それとも日本のちょっとセクシーなスプラッター映画のあれ?
妻に聞くと「最近夜中にテレビでやってるのよ。マンガも人気なんだって」とのこと。「でも大人が見る深夜のアニメのキャラを8歳の子がわかるのか?」というと「ちょっとエッチなシーンがあってうちの子大好きなのよ」。「・・・」
さらにさらに「主題歌を歌ってるのが米津玄師よ!エンディングを歌ってる人は毎週変わるんだって。すごくない?息子はYoutubeでVaundyの曲めっちゃ聴いてる。今度カーステレオに入れておいてよ!」などとのたまう。
米津玄師にVaundyか。昭和生まれにはきちーな。ただ僕はこれまでも息子が見る『クレヨンしんちゃん』やら『ドラえもん』やらの映画版のおかげでOfficial髭男dism、マカロニえんぴつ、キラキラ武士、あいみょん、菅田将暉なんかを聴くことになり、来年50歳になるおじさんの割に最近の曲を知っているのが職場でも誇らしかったりする。仕方ない、若い同僚の女の子にちょっとでも好印象を持ってもらうためにカーステレオに入れておくか。
にしても小学校低学年でチェンソーマンのコスプレして周りはわかるのか?周りが普通に魔女とかドラキュラとか着てきてたら浮かないか?そんな僕の心配をよそに妻は手作りでチェンソーマンのコスプレ制作にとりかかった。チェンソーマンは上は白のYシャツ、下は黒いズボンなので衣装は既製品で大丈夫。問題は頭部のチェーンソー。妻はこれをフエルトで作るという。製作時間は2日。妻は試行錯誤しながら家事の合間を見つけては縫物に励んだ。僕も妻の指令によってダイソーでフエルトやら綿やらを買い出しに行かされることになった。
おじさんの僕はわからない。そこまで衣装づくりに凝る必要があるのか?ドン・キホーテで既製品買えばいいんじゃない?そんな大事か?ハロウィンって?
でもママ友にはママ友の、表には出さない見栄と闘志と試練があるらしい。裁縫が得意でドレスなんかをちゃちゃっと作れちゃうママさんもいれば、いかにも「私は美魔女よ!」と言いたげに娘とおそろの黒いドレスでキメてくるママさんもいる。すべてをあきらめてドンキや百均で済ますママもいれば、それでは可哀そうだと苦手な裁縫にチャレンジするママさんもいる(我が妻はこれ)。子供が褒められること、それがママの喜びでありプライド!ま、僕はうちでお風呂掃除をしなきゃいけないから関係ないけどね(笑)。
夕方6時半。ママさんたちの戦いは終わり、それぞれの家に帰っていった。我が妻の帰宅後第一声は「ウケたよ!みんなチェンソーマン知ってた!ママさんたちも息子の友達も知ってて、『すごい!』って言われたよ!」。なんでもチェンソーマンを希望する子供は他にもいたのだが、アニメもこの10月に始まったばかりだしママさんたちも「さすがにチェンソーマンは・・・」と躊躇した人も多かったらしい。つまり我が妻の行動力と決断力の勝利。
”悩むくらいなら即行動!”
これってビジネスだけじゃないんだな。僕も勉強になったよ。