俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

TAROMANにくぎ付け

夜、仕事から帰ると妻が「息子が”タローマン”にハマっている」と報告してきた。タローマン?何それ?ちょっと前まで『チェンソーマン』にドハマりしていた8歳の息子が今度はタローマン?また新しいアニメ?

今年のハロウィンはチェンソーマン - 俺よ、男前たれ (hatenablog.com)

しかし詳しく話を聞くとそれはEテレで放送されている特撮ヒーロー番組らしい。で僕も観てみたのだが、これが結構面白いし、かなり”深イイ”のである。

TROMANは岡本太郎さんの”若い太陽の塔”をモチーフに作られたヒーローで、昭和のウルトラマンのような70年代風の特撮映像で作られているが、その中に笑いやギャグ、岡本太郎の名言・エッセンスがふんだんに取り入れられている。

TAROMAN - NHK

昨年の7月に開かれた岡本太郎さんの展覧会のプロモーションとして作成された番組だそうだが、2023年1月に再放送されていて、妻子はそれを観たらしい。

が、韓国人妻と今年8歳になる息子はこの番組に見事に騙されているのである。韓国人妻は

岡本太郎って知ってる?有名なの?そんなにすごいの?」

「あなたが子供の頃、この番組観たことある?」

「こんな番組作って、よく岡本太郎が許したね」

と「TAROMAN」が本当に1970年代に放送されていたと思い込んでいる。

また、番組の最後にサカナクションのボーカル・山口氏が「僕、子供の頃TAROMANが大好きで、これ当時買ってもらったフィギアなんですけど・・・」なんて演技をするものだから息子は

「あのフィギアほしい!メルカリに出てない?」

なんて言い始めるのである。ただそれくらいよくできた”モキュメンタリ―”(疑似ドキュメンタリー)なので、妻や息子が勘違いするのも無理はない。

息子はもともとウルトラマンが大好きで、ヒーローモノとして楽しんでいるようだ。妻は「こんな番組がよく作れるな?韓国じゃ絶対認められないよ。ふざけすぎてない?岡本太郎に訴えらえるよ。」と言いつつ息子に付き合って観ていたらしい。

TAROMAN - NHK

そうえいば僕も岡本太郎と言えば「太陽の塔」くらいしか作品は知らないし、昔テレビのCMで目を剝きながら舌足らずな話し方で「芸術は爆発だ!」なんて言ってた変な芸術家、というくらいの印象しかない。アートに関わる芸能人がこぞって尊敬するアーティストとして岡本太郎の名を挙げるのですごいアーティストなんだろうけど、素人の僕は正直何がすごいのかがわからない。

1976-1989 岡本太郎CM集 with Soikll5 - YouTube

でもこのTAROMANに出てくる岡本太郎さんの言葉は大人になってすっかり丸くなってしまった僕の心に響きまくるのである。

TAROMANの主題歌にある岡本太郎さんの「自分の中に毒を持て!自分の運命にたてをつけ」「うまくあるな、きれいであるな、心地よくあるな」という言葉・・・。耳が痛い。俺も結婚前は色々なところで毒を吐いていたし、言いたいことが言えていたのにいつのまにか綺麗事ばかり言っていい気になっている気がする・・・。

僕は子どもの頃から天邪鬼でへそ曲がりな子供だった。周りと違うことばかりしようとするし、先生の言うことにいつも反対するし、大人に言われたこと以外のことを選ぼうとしていた。”普通”が嫌でわざと変わったことばかりしようとするちょっとイタイ子供だった。まさに少年・岡本太郎だったはずだ。

なのに結婚もして子供ができて「ちゃんとした大人にならなきゃ」「親としてがんばらなきゃ」なんて思うようになり、仕事でも少しは責任のある立場になって「ちゃんとやらなきゃ」「失敗しないように気をつけなきゃ」なんて思うようになった。仕方がないことなんだろうけど、TAROMANに改めて”同じことを繰り返すなら死んでしまえ!”なんて言われると心が締め付けられる。

[TAROMAN] 岡本太郎式特撮活劇「同じことをくりかえすくらいなら、死んでしまえ」前編 | feat.駄々っ子 | NHK - YouTube

坂上忍という男 - 俺よ、男前たれ (hatenablog.com)

息子がTAROMANに惹きつけられたのは当然であり必然である気がする。

絵を描くのが大好きで、絵描き教室にも通わせたが先生の指示に従えなかった息子

毎日毎日飽きるほどヘタウマな落書きやらマンガやらイラストやらを描き続け(親から見ると)全く絵が上達しない息子

勉強が苦手で図画工作以外は「がんばりましょう」だった息子

友だちの中で同じルールで同じように遊ぶことが苦手で孤立しがちな息子

同年代の子の周りをうめき声をあげながらひたすら走り回っている息子

一人妄想の世界で何時間でも遊べる息子

息子は未だに友だちも少なく、兄弟とも疎遠で、コミュニケーション下手で人見知りの僕の遺伝子をしっかり受け継いでいる。息子も僕もTAROMANなのだ。

息子よ、岡本太郎は言っている。

・でたらめをやってごらん

・いいんだ。岡本太郎の責任でやるんだから。

・人生は君自身が決意し、貫くしかないんだよ。

・自分の価値観を持って生きるということは嫌われても当たり前なんだよ。

・自分の中にどうしても譲れないものがある。それを守ろうとするから弱くなる。そんなもの、ぶち壊してしまえ!

・僕はいつも自分が純粋に感じたこと、考えたことを、理解されようがされまいがダイレクトにぶつける。

・孤独であって充実している。そういうのが人間だ。

芸術は爆発だ

なんだこれは!