俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

ねこまんま論争

1月9日放送の「5時に夢中!」(TOKYO MX)において「夫がご飯にみそ汁をかけて食べるのが不快でたまらない。最近は子どももまねをし出して困っている」という主婦の投稿を紹介、ネットでも「家でならいいのでは?」「子どもが外で恥をかかないように夫婦協力して躾をするべき」「子どもが食べてくれるからウチでもやってた」「夕食を作る側からしたらショック」などなど色々な意見が出ている。

僕はいわゆる”ねこまんま”を子供の頃からやっていたし、8歳の息子もねこまんま大好きで彼の夕食はみそ汁にご飯をぶち込むことから始まるくらい。んで妻は妻で”クッパ”の国の人なので汁物にご飯を沈めても気にすることはないし、昼飯はいつも余ったおかずをご飯に載せ、海苔とコチュジャンでグチャグチャに混ぜて食べているらしい。でも家族のために苦労してちゃんとおかずを数品用意している人にとっては”ねこまんま”にされることは嫌なんだろうな。

それにしても”ねこまんま”って、なんであんなに旨いんだろうね?僕は両親が作るみそ汁の中では「キャベツのみそ汁」と「じゃがいもと玉ねぎのみそ汁」がダントツで好きだった。で、白飯も好きだったので最初は白飯とおかずで食べ進めるのだが、みそ汁が残り3分の1くらいになると「このまま飲み干すのは勿体ない!」「最後は大好物のねこまんまで〆たい!」という衝動にかられてご飯を投入していた。なぜか”ご飯にみそ汁をかける”より”みそ汁の中にご飯を投入する”スタイルだった。

その時の母親の気持ちなど当時は知る由もなかったが、今考えればあまりいい気持ちではなかったかもしれない。

もちろん当時も他所のお宅でしようとは思わなかったし、年に数回行ってた祖父母の家でもねこまんまは我慢していた。なんとなく”大人は快く思わない食べ方だ”というのは子ども心にわかっていたようだ。ただ旨そうなみそ汁が出てくると、こっそり一口分だけご飯を入れてかきこんだりしたこともあったなぁ。

そしてこれも理由がわからないのだが、インスタントのみそ汁でねこまんまをしようとは思わなかったし、定食とかについてくる薄くて投げやりに作ったようなみそ汁にもご飯を投入したいとは思わなかった。ねこまんまはやはり誰かがちゃんと丁寧に作ってくれたみそ汁でやりたい、そのほうがウマい、というのがねこまんま好きの矜持だった。

やがて大人になり、僕は2年ほどベトナムで仕事をすることになるのだが、ベトナムでは普通にご飯に汁をかけて食べる習慣があった。これがまあ実にうまかった。沢蟹をつぶして作ったスープとか、ちょっとヌメりのある葉っぱのスープとかいろいろあるんだけど、これをベトナムのお米にかけて食べるとサラサラと胃袋に入っていって何杯でも食えた。特にCanh Chuaという酸っぱいスープ。これをビールの酔い覚ましにご飯にかけてお茶漬け感覚で流し込むとまあ目の覚めるような旨さだった。日本でやっても同じような感覚にはならないだろうけど、ベトナムの蒸し暑いような夜に汗をかきながら流し込むスープ飯、旨かったなぁ。

https://www.vietnamnavi.com/special/5001084

そんで韓国人妻と結婚してからは「ご飯をスープに浸して食べる」というやり方も覚えた。日本のスープカレーのようにスプーンにご飯を取り、スープの中にご飯を浸して食べるのだが、これもまたイケるのだ。僕は特にソルロンタンという牛骨で取った白濁したスープとか、干し鱈のスープなんかが好き。韓国の場合は「スープがメインディッシュ」的なところもあるからご飯と一緒に食べるのが普通なんだろうな。

https://www.konest.com/contents/gourmet_guide_detail.html?sc=2106

こうして我が家は必然的にねこまんま家族となった。

息子は偏食が激しく、みそ汁も”具なし”もしくは”豆腐のみ”しか口に入れないのだが汁の味はわかるようで、アサリのみそ汁(アサリ抜き)には大量にご飯を入れて食べるものの野菜のみそ汁(野菜抜き)には興味を示さない。彼にも彼なりにねこまんまへのこだわりがあるらしい。

それにしても令和の今、ねこまんまを食べている猫なんてこの世にいるのだろうか?

「夏のソバは犬も食わぬ」なんてことわざがあるが「ねこまんまなんて今や猫も食わぬ」

でも人間のご馳走。それがねこまんま

https://www.excite.co.jp/news/article/E1521191303516/