先日、『ジョブチューン』(TBS)の人気企画「超一流料理人がジャッジ!○○の一押し商品TOP10!」にて、くら寿司が4回目の挑戦。番組史上初の10品全て合格という”パーフェクト”を達成。今年になってブラック企業ぶりがネットで話題になったくら寿司にとっては見事企業イメージの回復の起爆剤となった。
この企画は割と好きで良く見るのだが、ミシュランガイドで星を獲るような高級店や人気店の超一流料理人たちのジャッジは本当に厳しい。スタジオゲストがアホみたいに「うまいうまい!絶対合格!」なんてコメントした後にあっさりと「食材が生かされていない!」「塩気が強い」「少し身が硬い。焼きすぎだ!」「私ならすだちを一絞りして酸味を加える!」「本当にこれ美味しいと思ってお客様に提供してる?」と強烈なダメ出しをしてしまう。僕ら素人では気にならないようなちょっとした違和感をしっかり感じ取って細かく指摘する。値段を抑えてなおかつ味を統一し、バイトでもできるオペレーションで提供しなければならないという不利な条件を持つコンビニやチェーン店相手に時に大人げないほど厳しい意見をぶつける超一流料理人たち。その人たちから10品全て合格をたたき出したくら寿司は大したものである。
が一つ疑問に思うのは、あれほど細かいケチをつける一流料理人たちにも関わらず、揃いも揃って”薬味のネギ”を気にしないのはどういうことなんだろう?
実は僕はこの”薬味のネギ”、”刻みネギ”問題について、ずっと疑問に思ってきたのである。いろいろな料理に当たり前のように入れられている薬味のネギ。あれ、本当にいるか?
僕は別にネギが嫌いなわけではない。普通に食べることができる。が、日本人はあまりにも薬味のネギに無頓着な気がする。つまり何も考えずにネギの載せちゃう人が多い。それは客はもちろん、味にこだわる料理人に至るまでだ。薬味は生ものの臭みを取ったり、素材の味を引き立たせたり、彩りとして添えたりするのが本来の役割だ。
薬味の刻みネギはそば・うどん・ラーメンなどの麺類、みそ汁・卵スープなどの汁物、もつ煮や鍋物、炒め物などなど様々な料理にかけられるが、これらは特に臭みがあるわけでもないし、ネギによって素材の味を引き立たされているわけでもない。立ち食いソバなどでお金がない客が無料の天かすとネギを大量に入れるというのはまあわかる。あれは客の好みで入れるものだし、薬味というよりは”具”として量を増やしたいのだろう。
また彩りになるのもちょっとわかる。冷奴の上にネギが乗っかっているのは確かに見た目にいい。ただ冷奴とネギの味を”合う”と思ったことが僕は生まれてこのかた一度もなく、ネギはむしろ豆腐の味と食感をひどく邪魔しているように思う。
ラーメンの上のネギも見た目はいいが、スープの味に命を懸け、その原材料からこだわって採算が取れないほど高級なものから出汁を取り、手間を惜しまず精魂込めて濁りの無い究極の黄金のスープを完成させたと豪語するようなラーメン屋の店主が、最後に当たり前のようにネギを載せてスープの味をぶち壊しているのを見ると「この人、頭大丈夫か?」と思わずにいられないのである。
さらに話を寿司に戻すと、回転寿司の中でもネギトロ、サンマ、マグロユッケ、牛カルビなどはネギがのっていることが多い。まあ光物は青魚の臭みを取るためなんだろうけど、ネギの臭さのほうが強いからごまかしているだかなんじゃないかとも思う。新鮮なネタならネギなんてなくても旨い。
今回のくら寿司の商品の中にもいくつかネギの乗った商品があって、”超一流寿司職人”達が鬼のような形相で歯ごたえ、下処理、タレとの相性などを舌で確かめていたのだが、ネギのことを聞く人は一人もいなかった。「このネギはどこの産地?お客様に出す何分前に切ったの?どうやって保存しているの?」とか誰か一人くらい聞いてもいいようなものなのに、薬味のネギは全員スルー。俺が審査員だったらマンガ『美味しんぼ』の海原雄山なみに「ネギが素材の微妙な味わいをわかりにくくしている」「何も考えずにネギを載せるのは料理人として怠慢だ。修行し直せ!」くらい言ってやるのに。
ま、実際の僕は50にもなってハマチとブリの味の違いもよくわからないような味音痴なんだけど。