俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

アントニオ・リュディガー

サッカーワールドカップinカタール2022において、日本は強豪ドイツと対戦、2対1で逆転勝利。勝ち点3を獲得した。

僕はワールドカップの時だけサッカーを見るような生粋の”にわかファン”で、今回も予選も含めて初めて現在の日本代表チームの試合を観たという体たらく。前半を観ている間は「何だこりゃ?レベルが全然違う。まるで大人と子供だ。よく”目標ベスト8”なんて言えたな。こりゃボロ負けだな」「ドイツ上手いな。パスが面白いように通るし、個人技もすごいし、日本ボール奪いまくるし。ドイツ人は観ていて楽しいだろうな」なんて思ったものだが、終わってみれば日本列島大熱狂の大逆転劇。僕も妻子を起こさぬよう電気の消えたリビングで一人静かに興奮するのであった。良かった、前半でテレビ消さなくて。

日本、ドイツに逆転勝ち 優勝経験国から初白星 サッカーW杯 [写真特集18/38] | 毎日新聞

ちなみに前回大会まではなんだかんだ言って選手の名前と顔は大体知っていたのであるが、今大会は予選も全く見ていないので知らない選手ばかり。『アメトーーク』(テレビ朝日系列)の「サッカーW杯直前 日本代表応援芸人」を見て少し予習をした程度で「金髪寝癖の伊東君がエースで、爬虫類顔のビックマウスが鎌田君、冨安君てのが欧州でも評価が高いDFで、禿のちょび髭が韋駄天・前田大尊(×)、ウエストランド井口みたいなのが遠藤君・・・」なんて覚え方をしていた。

で、日本代表メンバーについて「欧州リーグでも存在感!」「DFの裏への飛び出しがすごい!」「ディフェンスの間を切り裂く変幻時代のドリブル!」「体の大きな欧米人にも負けないフィジカルの強さ!」「相手のディフェンスを置いてけぼりにするスピードと突破力!」なんてメディアが持ち上げるもんだから「そんなにすごい選手ばかりなら優勝できるじゃん」なんて思っていた。

事実、サッカーに詳しい人が観れば伊東君のスピードや遠藤君の体の強さ(デュエルっていうのか?)はドイツに脅威を与えたそうだが、素人の僕にはドイツ戦の前半は本当に肩透かしで「なんだ、いつものメディアの誇大広告か。世界的には大したことないのに仰々しく掻き立てて視聴者を煽るいつものパターンか」とも思った。

この試合で僕が一番印象に残った選手は実は日本代表選手ではなく、ドイツ代表のアントニオ・リュディガー選手だった。この選手がとにかくすごくてインパクト大だった。同じような顔と髪型の他のドイツ人選手の中で黒人選手というだけでも目立つが、身長190センチの立派な体格は日本人選手より頭一つ抜けてでかい。そして体のバネも尋常じゃない。そのヘディングの高さたるやまさに脅威で、高さではとても太刀打ちできず、セットプレーのたびに冷や冷やするほどだった。しかも足が滅法速く、スピード自慢だった日本人選手のドリブルにも大きなストライドであっさり追いつき、長い足でパスコースを塞いでしまう。体幹も強いようで体の小さい選手ではとても突破できそうにない。「こいつは怪物だ・・・」と思った。

あれだけ体がでかくて運動神経が良ければ、日本人選手なんて「すばしっこいサル」くらいにしか見えないんだろうな。プレー中も相手を小馬鹿にしたように笑みを浮かべたり舌を出したりしながら前半は余裕をもって遊んでいた。ちなみに僕は昔ブログで陸上のウサインボルト選手を取り上げ「怪物は幼児性を持つ」というようなことを書いた。今、読み返してみるとリュディガー選手にも当てはまることばかりで驚く。

怪物ウサイン・ボルト伝説 - 俺よ、男前たれ (hatenablog.com)

リュディガー選手は普段からお調子者で、会場を盛り上げるために変な走り方をしたり、相手選手にトラッシュトークをしたりして煽って様子を見るらしい。今回も日本代表をちゃんと舐めていたと思う。ドイツVS日本戦で見せた相手をおちょくるような走りに対しては批判的なコメントがサッカー関係者からも出ているが、おちょくられてプレーが乱れるくらいならその選手はその程度だっただけということだろうし、実際に浅野選手や堂安選手はその反骨心をプレーに反映させて見事勝利をつきつけたのだからいいのではないか?他の国のサイトでも「あれは人種差別だ!アジア人を舐めた態度だ!」「相手への敬意が感じられない!」と怒りの声も上がっているが、人種差別的なジェスチャーでは全くないし、相手を敬意を示した結果大人しいプレーになってしまっては本末転倒。ちなみに僕はあのドリブルについては「あれで足を前に出してセンタリングを防いでいるのかな?浅野選手の急な切り替えに対応するために上体を起こしているのかな?なんにせよあの走りであのスピードなんてバケモノだ」と思ったな。

僕は元々日本代表の選手も知らず、代表チームにも特別な思い入れがないので、特に「舐められた!バカにされた!」とは思わなかったし、「どうだ!ざまーみろ!日本を舐めて後悔したやろがい!よくやった浅野!」とも思わない。きっとリュディガー本人も敗戦は悔しいものの「相手をバカにした報いを受けた」とも思ってないだろう。浅野選手らもドイツ優勢の前評判を覆してやろう、日本代表を見下した奴らを見返してやろうとは思っていただろうが、リュディガーの走りくらいでいちいちイライラしていなかったのではないか。彼らの反骨心は戦前ネットで好き放題書いて、勝てば手の平返しの自称サッカー通たちのコメントにも向いていたのではないか?

とにかくこの試合で僕が「すげー選手だな。次の試合のプレーも観てみたいな」と思ったのはこのリュディガーだけ。もちろん、日本代表チームは応援しているし決勝トーナメントに出てほしいが、選手で一番インパクトがあったのはリュディガー。きっとリュディガーは品行方正なプレーの時より、相手をおちょくっているような時の方が脅威だ。日本代表にもあんな一芸に秀でたヒール、出て来ないかな?

強靭なフィジカル、圧倒的なスピード、旺盛な闘争心。ドイツ代表で攻守に存在感を示すアントニオ・リュディガー | 完全ガイド | FIFA ワールドカップ  2022 完全ガイド by ABEMA