俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

チャーシューの評価

先日、近所のショッピングモールにある有名ラーメン店の支店で「とんこつ醤油ラーメン」を食べた時のことである。麵もスープもトッピングの煮卵もおいしく、ラーメンを心から楽しんでいたのだが、最後にチャーシューを食べた瞬間に気持ち悪くなってしまった。厚く切られたチャーシューの脂が口のなかでトロって溶けて、ドロリと胃袋に落ちていったとたんに異様な胸焼けがして、なんとも後味悪く家路に着いたのである。

これは今年50歳になる僕の胃が悪いのであって、決してラーメン屋さんのせいではない。ただ、大人になって、つくづく思うのは「ラーメンのチャーシューは過大評価されているよな」ということだ。

チャーシューって、そんなに旨いか?

上から見たチャーシュー麺のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

子供の頃の私にとって、チャーシューは間違いなくラーメンの主役であった。普通のラーメンには1枚しか乗っていないチャーシューは、それはそれは宝物のような存在だった。好きなものは最後に食べる主義の僕は、一枚のチャーシューを見ながら麺をすすり、チャーシューを見ながらスープを飲み、チャーシューを見ながらメンマをかじった。そして最後の最後に残った愛しのお肉ちゃんを口に頬張ってラーメンを完食するのが常であった。昔、少年野球の試合でホームランを打ったことがあって、その日は父がご褒美にチャーシュー麺を頼むことを許してくれたのだが、あの時の興奮といったらなかった。チャーシュー麺!ああ!チャーシュー麺!最初の一口目からチャーシューを食べても、まだまだ減らないチャーシュー麺!その美しきビジュアル!迫力!説得力!小学生のご褒美の最高峰、それはチャーシュー麺!「父さん!明日もホームランだ!」

和田正人 on Twitter:  "トップでクラブを止めるのがなかなか出来なかったのに、チャー…シュー…メーン!!を意識し始めたらトップでピタッと止められて、正確に打球が飛ぶようになった。恐るべし  #ちばてつや 先生。。。 #あした天気になあれ https://t.co/qqKs0tM557 ...

そもそも子供にとって”肉”は正義であり、その偉大さを一切疑わなかった。ラーメン以外でも、肉のおかずは常に主役であった、とんかつ、から揚げ、ソーセージ。薄いハムですらランクは魚より上だった。カレーライスもじゃがいもやニンジンをすくった一匙はただのつなぎか消化試合。カレー味のお肉が乗った一匙こそがご馳走スプーン。豚汁もまずは野菜を平らげてから最後に肉味噌汁にしてからがご馳走タイム。そんな子供たちにとって、チャーシューがラーメンの主役になることは必然であった。

 が、大人になり、自分のお金で焼き肉を食べに行ったり、とんかつ屋でとんかつを食べたりして、少しずつ舌が肥えてくるとラーメンに乗っているチャーシューに全く感動しなくなる自分がいた。僕が牛肉を食べるようになったのは大学に入って一人暮らしをするようになってからだが、カルビを食べた時のあの驚きはすごかったな。「世の中にこんなに旨い肉があるのか!」と感動したものだ。

 また大人になって、とんかつ「和幸」でロースかつを食べた時も感動したな。僕は神奈川県出身なので豚肉大好きケンミン。我が家はカレーもすき焼きもハンバーグも串カツも豚肉だった。もちろん豚肉料理は今も大好きで、生姜焼き、豚汁、回鍋肉、メンチカツなどにそそられる。(マレーシア料理では”肉骨茶(バクテー)”が大好き)。そして学んだことは「旨い豚肉は脂が甘い。肉も柔らかくてジュ―シー。豚はすぐパサつくから熱を入れすぎない!」ということだった。

 で、話はチャーシューに戻るのだが、豚肉料理の中でもチャーシューのパサパサ感はなんなんだろう?甘いタレに絡めてつまみに食べるとかご飯に載せるとかすれば悪くないんだけど、社員食堂とか中華食堂とか遊園地などで出される中途半端なラーメンに乗ってるチャーシューはゴリゴリと歯触りも悪く、スープに浸して浸してやっと口の中でほぐすことができる。ただ噛んでもジューシーさのかけらもなく、肉の旨味もなくパサパサ。なかなか喉を通らないので最後はスープで流し込む始末。なんで子供の頃の俺はあんなものをありがたがってたのだろう?

https://retty.me/area/PRE999458/ARE1044/SUB104401/100001269363/
これはマレーシアのバクテー(肉骨茶)

 そういえば、昔、家の近くに『よってこや』というラーメン屋の支店があって、そこのラーメンに乗っていたチャーシューだけは旨かった記憶がある。極薄に切られたチャーシューはとろけるほど柔らかく、箸で持ち上げるのも苦労するほどだったが、肉の周りが炭火で焼いた香ばしい味がして旨かったな。当時は「もっと厚く切ってくれたらいいのに!」と思ったが、今思えばあれが正解だったんだと思う。チャーシューを厚く切れば、肉のパサパサ感が悪目立ちしてしまうし、脂身も多くなってしまうからだ。

 今のラーメン屋さんは、ラーメンに載せる前にチャーシューを一枚一枚炙ったり、ローストポークのようにゆっくりと熱を入れてパサパサ感を失くしたりと工夫をしている店も多いようだが、まだまだ「脂身全開!肉のパサつきは脂身で解消!」みたいなところも多い。でもそこまで工夫しなければならないほどチャーシューって大事か?今やラーメンの命はスープであり、麺でしょう?

 チャーシューは昔からのよしみでラーメンの具のメンバーに入れてもらってるけどもう四番は打てないし、なんだったらレギュラーから外してもいいと思う。ラーメン屋さんは「ラーメンにはチャーシュー」という発想から抜け出してほしいし、ラーメンにどうしても肉を載せたいならラーメンに合う肉って他にあると思う。ひき肉ならスープと一緒に飲めそうだし、青椒肉絲のような細切り肉なら麺と一緒にすすれそう。そもそも肉多めのワンタンとかシュウマイじゃダメなのか?

 とにかく50代の僕はもうチャーシューの脂身を見るだけでギブアップ。もうチャーシューに期待はしない。今や僕にとってラーメンに必要なのはメンマと煮卵。あと小さめの海苔数枚。ネギはいらない。

なぜに刻みネギ - 俺よ、男前たれ (hatenablog.com)

日本が誇る食材を一杯のどんぶりに~ 世界一うまいラーメンをつくれるか!?