先日、『秘密のケンミンSHOW極』(日本テレビ系列)にて調査の結果「カレーに豚肉派」と「カレーに牛肉派」の境界線は三重県桑名市長島町”だということがわかった。
西に長良川、東に木曽川を有する長島町は東西文化の分岐点となっており、長島町から東は「カレーに豚肉派」が多く、西は「カレーに牛肉派」が多いとのことだった。
ちなみに僕は神奈川県出身なのでカレーには豚肉だった。
というか、高校を卒業して一人暮らしをするまで牛肉ってほとんど食ったことがなかったな・・・
僕の実家は近所の人だけが使うような小さなスーパーだった。
肉、魚、野菜、酒など一通り揃っていたが、なぜか牛肉だけは置いていなかった。
我が家の夕食は売り物の残りで作るのがルールだったが、特に不満はなかった。
鮭も鯵も鯖も鰯も食卓に上がったし、トンカツもから揚げも普通に食卓に上がった。
牛肉だけは上がらなかったのですき焼きは豚だったし、ステーキも豚だったが、それが普通だと思っていた。
牛肉の存在は知っていたが、子供ながらに「あれは金持ちの食べ物だからな」と割り切っていた。中学を卒業して生まれて初めて牛丼を食った時に「旨い食い物があるもんだな」と思ったが、牛肉のすごさを知ったというよりは「生まれて初めての親抜きでの外食」という感動のほうが大きかった気がする。
そして高校を卒業して僕は一人暮らしをするようになった。
である時、大学の先輩や同級生とすきやきパーティーをすることになり、各自食材を分担して買ってくることになったのだが、なんと”肉のハナマサ”に買い出しに行った連中はあろうことか学生の分際で牛肉を買ってきたのである。
マジか!?あれって大人の食い物じゃないのか!?それも金持ちの!!
頭がパニックになっている僕をしり目に鍋に牛肉をためらいなく投入する下郎たち。
で、恐る恐る食べた牛肉のすき焼きは・・・とてつもなく旨かった。旨くて頭が真っ白になった。世の中にこんな旨いもんがあるなんて・・・
あれから約30年。
僕も社会人となり、結婚して家庭も設けた。
決して裕福ではないが、まあ普通に焼肉くらいは食べられるようになった。
でも未だにカレーは豚だ。
正直、関西の人に「カレーは牛やろ!絶対牛や!牛以外のカレーなんてありえん!」と言われても反論できない。だって我が家が豚カレーだったのは別に「豚のほうが旨い」といった確固たるポリシーがあったわけではなかったからだ。
「子供の頃からカレーは安い豚コマで作るもの」「ビーフカレーは喫茶店で親が食べさせてくれるたまのご馳走」「というか、安くて旨いもんが好きな大坂の人がなんで庶民の味・カレーに牛肉?」と今でも思っている。
そして今晩の我が家のメニューは偶然にもカレーだった。
昨日コロナのワクチンを打って動けない奥さんに代わりに僕が夕食の担当になったのだ。奥さんに「材料は大体うちにあるからカレー用にお肉だけ買ってきて。豚でも牛でもいいわ」と言われ、僕は意を決して赤身の細切り牛肉を買い、ビーフカレーを作ったのだ。
脂身のほとんどない真っ赤なオージービーフはカレーにすると・・・固かった。
肉汁もなくパサパサで、ゴリゴリとした歯ごたえでなんとも微妙だった。
やっぱり僕には豚カレーがお似合いなんだと思う。
きっと関西の人は脂のさしが入った立派な牛肉を使っているんだな。
噛んだ瞬間に肉汁がじゅわっと溢れでて、口の中に牛肉と脂のうま味がぶわぁ~っと広がるようなお肉を使ってるんだろうな。
次回からおとなしく安い豚コマで豚カレーを作ろう。
そして今日のカレーは明日はうどんにかけて食おう。