俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

カニは面倒

先日、『23時の密着テレビ「レベチの人、見つけた」』(テレビ東京系)という番組を見ていたら、「カニの神様」なる人物が出ていた。

この方は鳥取で『カニ吉』というカニ料理店を経営する山田達也さんで、なんでも1杯10万円はする松葉ガニを使い、カニづくしのコース料理(お一人様10万円~)を出すのだという。にもかかわらず2か月先まで予約がいっぱいで、全国から彼のカニ料理を食べるために食通が集まって来るという。

店主が仕入れた最高級のカニを、店主が極めた最高級の技で食べさせるので、きっとおいしいのだろうが・・・なんだろう・・・この惹かれない感じは・・・。

レベチな人、見つけた」【超一流が認めた!常識を変える職人SP】(テレビ東京、2022/3/15 23:06 OA)の番組情報ページ |  テレビ東京・BSテレ東 7ch(公式)

僕は神奈川県出身なのだが、子供のころからカニというものをほとんど食べてこなかった。大阪の人などはちょっと贅沢したい時やお祝い事などで仲間や家族とカニ専門店へ行ったり、カニ食べ放題のバスツアーに参加したりすることが多いという。また北陸の人なども季節になるとズワイガニやら香箱ガニやらを食べるのが楽しみだというし、北海道でもタラバガニ、ズワイガニはもちろん、毛ガニなんかも食べているイメージだ。きっとそういう人は「ああ、カニの季節だ!」「カニ食べたい!」「うわぁ!今日はカニ?!すげぇ!」って思うんだろうな。

でも僕は違う。繰り返しになるが、子供のころからカニというものをほとんど食べてこなかった。せいぜいカニカマとかカニらしきものが入った加工品・冷凍食品くらいで、取り立てて旨いと思ったことがない。「確かにカニの味だ」というくらい。旬の、新鮮で高級なカニなんて一度も食べたことがないので舌がカニの味を知らない。記憶していないのだ。だからカニの映像を観ても舌が反応せず、「食べたい!食べてみたい!」という考えが出てこない。

子供のころ、お歳暮か何かで実家に冷凍のカニが贈られてきたことがあった。両親がそれを茹でて、食卓に出してきたのだが、その時に思ったのは「面倒な食い物だ」ということだけだった。カニはとにかく食べにくい。殻は固いし、トゲがあると痛いし、中身がうまく取れないし、穿り出すのが面倒でみみっちいし、中身は少ないし・・・。味はまあ、まずくはないけど、特別うまくもない。なんであんなものを有難がるんだろうといつも思っていた。

僕は面倒なことが大嫌いなのだ。カニがみかんくらい簡単に剥けたら僕も少しはカニを食べてみようと思うのだが、そうはなっていない。一番大きい頭の部分にすべての身が詰まっていて、手足は食べずに捨てていいならどんなに楽だろう。あのスキあらば歯の間に侵入してくる薄いプラスチックみたいなのがなければどんなに食べやすかったろう。でもカニはそうなっていない。だから面倒だ。

もちろんカニ側にも言い分はあるだろう。カニは別に人間に食べられるために生きているわけではないし、生物学的にはあの薄いプラスチックみたいなのだって必要なのだ。だからカニに文句は言わない。僕が食べなければいいだけだ。

カニ味噌なんかも大人はみんな「これが旨いんだよ!」と大げさに騒いでいるのをよく見るが、本当に・・・騒ぐほど旨いか?もしかしたら日本酒を飲むような人には最高に珍味なのかもしれない。大人になると苦いものが旨く感じられるということもあるかもしれない。が、来年50になる僕は思う。「そんなに旨かねーだろ?」

かにみそ」って、なぜ美味い? - 蟹は祭だ!

僕は時々思うのである。カニが鶏肉と同じ値段だったら、みんなはカニを今ほどありがたがるだろうか?カニが豚肉と同じ値段だったら、牛肉以上に日本人の食卓に上がるだろうか?僕はカニ弁当と鶏のから揚げ弁当があったら、迷うことなく唐揚げを取る男である。カニ食べ放題と焼肉食べ放題、どちらかをご馳走してくれると言われても、カニは選ばない思う。面倒だからだ。

最初はいい。太い足の部分はまだ身が取りやすい。でもあの細いスプーンみたいなので殻からほじくる段階まで来るともう「旨い」という感じはなく、「取れた!」という喜びのほうが強い。これはどちらかというと「お宝ゲット」というよりは「こびりついた汚れが取れた!」とか「これで料金分の元が取れた」という喜びに近い気がする。カニを食べる作業ってもはや労働だ。

で、『レベチの人、見つけた』に出ていたカニの神様・山田達也さん。カニ料理の日本一を目指し、カニの目利き、さばき方、火の入れ方、食べ方、味付けなどなど、全てを研究しつくしたその努力は本当に素晴らしいし、けなす気はさらさらない。

が、僕はちょっと苦手。なんかあの方、カニを食べる以上に面倒くさい。

「今日はいいカニが入っています。1日一杯、入るか入らないかの超高級品です」

「はい、これが最高級の松葉ガニね、みなさん写真撮ってください」

「次の料理(焼きガニ)は瞬殺です。写真を撮る暇はありません。すぐ食べてください。はい、今!」

「今日のカニはこんなに味噌が詰まっています。これ以上の味噌はありません。これを贅沢に使いますからね。」

「お客さん、これ写真を撮るコツがあるんですよ。ちょっと貸して。この角度から、こう撮って!」

別に威圧的なわけではないし、自慢のカニをおいしく食べてもらいたい、存分に楽しんでもらいたいという熱意の表れなんだろうけど・・・なんか面倒だ。高い金出して飯を食いに行って「ああしろこうしろ」とうるさく言われるのはSの僕にはちょっときつい。あの店、カニの構造以上に面倒だ。

きっと僕は今後もカニに深く関わることなく生きていき、「カニ食べたいなぁ」と思うことなく死んでいく。でもそれでいい。僕の舌はもともとカニの味がインプット、インストールされていないんだから、後悔はない。

ただ今後「本当にカニを知らないんなんて、お前、人生の半分損しているよ!」なんて言うやつが出てきたら・・・面倒だなぁ。

山田達也の「かに吉」の評判や値段・予算はいくら?場所や行き方は?情熱大陸