俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

忘年会2010

みなさんは、忘年会というものはどれくらいあるものなのだろうか?

学生さんだったらサークルの忘年会、ゼミの忘年会、バイト仲間の忘年会、高校時代の仲間、地元の仲間との忘年会など、いろいろあるだろうし、

社会人だったらまあ、会社の忘年会を盛大にやる、といったところか。



ちなみに僕は今年、どこからも声がかからず、もちろん僕から声をかけることもなかったので、忘年会なしの寂しい年末を迎えるはずだった。

が、急に旧友から声がかかって、一緒に飲むことになったのだ。

彼は国際結婚の先輩で、外国人妻を持つ、僕より一つ年上の同業者。

若い頃はよく一緒に大人の遊びなんぞをしたものだ。

まあ、彼なら気兼ねなく飲んで話せるなと、久々の再会を楽しみに、待ち合わせの新宿へと向かった。

久しぶりに見る彼は、開口一番

「よぉ!ソープ行こうよ!君の結婚前に、独身最後の遊びだ!」

などと抜かした。


何を言っているんだろう、この人は?

もうすぐ入籍を迎えようとしている僕を、なんてものに誘うのだ?

僕「あの、年末、彼女に会いに行くので、ちょっと弾を残しておかなきゃいけなくて・・・」

友「なんだって!君が誘いを断るとは!君も女ができて変わったな!」

僕「というか、奥さんに怒られないんですか?」

友「だいじょうぶ!奥さん、国に帰ってるから!」

僕「・・・・(じゃあ一人で行けよ!俺を道連れにすんな!)」


この友だちは汚いのである。

奥さんは「だんなの浮気がわかるとチンコをちょんぎって庭のアヒルに食べさせる」という説話があるくらい、女性がヒステリックなお国の方なので

自分が遊びたい時は必ず僕を道連れにするのである。

そのくせ、僕がいないときに「俺の後輩はね~、結婚もしないで、タイで女遊びばかりしてるんだよ~。馬鹿だろ~?」なんて奥さんと笑い合っているのである。

いつかバラしてやろうと思っているのだが。



とりあえず飯を食べに行こうと思ったのだが、ここでも彼はいきなり

「京王ホテルのビュッフェ、予約しといたから!」なんて抜かすのである。

僕「は?京王ホテルですか?」

彼「まあ、忘年会だからね、パァ~っとやろうと思ってさ。」

僕「男二人で京王ホテルのビュッフェ・・・・ですか?」

彼「まあまあ、他の探したんだけど、どこもいっぱいでさ」

僕「・・・・・・・・ちなみにいくらですか?」

彼「一人8000円ちょっと(+税金)。ま、他のレストランだと1万円くらいするからね。お得だよ」


8000円ってことは、税込みだと9000円である

僕は生まれてこのかた、飯に9000円も費やしたことはない。

それをなんで男二人で、クリスマス前(12月22日)に使わなきゃならないのか。

てっきり居酒屋+コーヒーで3000円ってとこだと思ったのに・・・。


僕「クリスマスって、毎年こんなんなんですか?」

彼「うんにゃ。嫁とは普通に天ぷら屋とか、寿司とかかな?」

僕「高いやつ?」

彼「いやいや。二人で1万円くらいじゃない?」


思い出した。

この友だちは、食い物には意外に金を惜しまないタイプなのだ。

この人とコーヒーを飲もうものなら、1杯500~600円もするサ店に連れて行かれるのだ。

にしても、嫁と過ごすよりも豪華に僕との夜を過ごそうとするこの男の魂胆に、尻の穴の危険を感じずにはいられないのであった。

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京王プラザ地下1階

受付で名前を告げ、席に着く。

この季節だから、カップルが多いのかと思いきや、意外に家族、女子会なども多い。

ちなみに僕らの左隣りは中年サラリーマンの二人組みだ。

少し気が楽になったので、さっそく料理を取りに行くことにした。


中央に「LIVE KITCHEN」なるものがあり、その場でシェフが取り分けてくれる。

まずはここで「ローストビーフ」と「フォアグラと牛ステーキのソテー」をもらった。

さらに「鴨のオレンジソース」「鶏肉のなんとかソース」というのももらった。


”フォアグラ!”

生まれて初めてのフォアグラ!

死ぬまでに食べてみたかったフォアグラ!

そのフォアグラが僕の目の前に!!

9000円も払ったんだから、元をとらなくては。

ビュッフェでどんどん振舞うくらいだから、どの程度のフォアグラかは知らないが、

とにかく!食べて人に自慢しなくては!


僕は震えるフォークでフォアグラとステーキを切り取り、口中に入れた。

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僕「ん~~~~~~~」

彼「どう?初めてのフォアグラは?」

僕「ん~~~~~~~。レバーだね。」

彼「は?」

僕「すごく柔らかいレバー?ちょっと皮がプチッとしてて。うん。しょっぱくて」

彼「・・・・・・・・フォアグラをレバーに例えるとは・・・・・・」


しょうがない。僕は舌バカなのだから。

まあ、もちろん、旨い。

が、”想像をはるかに超える”というほどではない。

すごく上品なレバー?かな?


が、ローストビーフ、鴨のオレンジソースなどを食べると、やはり先ほどのフォアグラの旨さが引き立ってきたのである。

これはもう一度食べるべし!

思わずお代わりをしてしまった。

さらに寿司、タコのカルパッチョビーフシチュー、真鯛のソテー、エビの天ぷらなどなど

野菜などには目もくれず、

ひたすら高いものを胃袋の中に放り込む僕。


慣れない高級料理を高速で胃袋に詰め込んだため、開始1時間ですでに気持ち悪くなっていた。

食後のショートケーキ、アイス、クレープなどをコーヒーで流し込みながら、やっと落ち着いて周りを見回すことができた。


僕らの右隣は、どうやら会社の接待のようだ。

「どうです?ここのカニ、おいしいでしょう?どうぞ、どうぞ!好きなの、とっちゃってください!」

なんて相手に勧めている。


一方、相方のすぐ後ろには、妙齢のおっさんと若い女性2人の3人組が。

会社の同僚にしては・・・・女性がおっさんにタメ口

しかし、ホステスとおっさんにしては、ホステスが地味だ。普通のOLっぽい。

すると、おっさんはおもむろに二人にきれいな紙袋を渡す。

中はよくわからん動物の毛でできたファーだった。

「かわいい~~!」と喜ぶ女達。

満足そうなおっさん。

ん~~~やっぱり、ホステスとおっさんかな?

僕はパンパンに張り詰めた腹をさすりながら「ま、幸せならいいがな!」と納得した。


そして遅れて左隣りに座ってきたのが、これまた解せないカップルだった。

男のほうはかなりのおデブちゃん。

女の方は、背が高くてスラっとしていて、お化粧も大人し目の、割ときれいな女性だった。

隣りの席とは1メートルも離れていないので、なるべく見ないようにはしていたのだが、その男の食べる順番に僕は驚愕した。

男がビュッフェでとったのは、「フォアグラの牛ソテー」「大盛りのやきそば」「カレー」だったのである。

こいつ、馬鹿か?

ビュッフェでいきなり焼きそばって!カレーって!しかもフォアグラと同じ皿って!

小学生か!

しかし、この豚、そんな俺の視線に臆することなく、旨そうにバクバク食うのである。

女の子のほうも、あまり気取らない性格らしく

サラダなどには目もくれず、寿司やエビチリなどからスタート。

こういう女性は好きだ。

おデブちゃんはその後もビーフシチュー、チャーハン、寿司と、炭水化物を攻めまくる。

わかりやすいやつだ。

そして、彼女に気を使って、フォアグラと牛ソテーを勧めると、なんと彼女はレバーが嫌いなため、フォアグラが食べられないのである。

こういう女性は素敵だ。

その女性がデザートをほうばる間も、おデブちゃんは食べ続け、彼女はもうコーヒーを飲み始めているというのに、ミニラーメンなんぞを二人分作ってきて、彼女に差し出すのである。

デリカシーの欠片もない。

が、彼女は嫌な顔1つ見せず、コーヒーカップを置き、ラーメンをすすり始めるのである。

「ああ、いいな。こういうカップルはなんともいいな。」

僕は唸ってしまった。

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すると僕の正面に座っている友人もようやく腹が落ち着いたらしく、語り始めるのである。

「嫁が娘を連れて帰国しちゃったらさ~。なんかやることなくてさ。」

「いつもは嫁も”あれやれこれやれ”ってうるさいし、娘も夜なかなか寝てくれなくてさわがしいしさ」

「自由な時間がほしいと思ってたんだけど、いざ、いなくなるとさ~、寂しくてさ」

「テレビもつまんないし、DVDもつまんないし、パソコンもつまんないしね。やることないんだ」

「だから寂しさを紛らわそうとソープに誘ったんだけどね~。」


最後のはともかく、彼もまた家族を愛する一人の男だったのだ。

そしてまさに、そんな家族像を僕も夢見ていたりするのだ。

彼は年末には戻ってくる妻と娘の帰りを首を長くして待っているのだろう。

そして”しばらくは”妻と娘を大切にする良き父・夫になるのであろう。


家族とは、離れてはじめてその存在感の大きさに気づくもの。

離れてはじめてその大切さに気づくものなのかもしれない。

高い授業料だったが、いろいろな人々の幸せの形を見ることができただけでも

あながちムダではなかったかもしれない。


こうして2010年唯一の忘年会は無事、幕を閉じる・・・・・・・・・・・・・はずだった。




レストランを出た途端、僕は猛烈な腹痛に襲われ、そのままレストラン隣りのトイレに直行。

そしてたった今、摂取したばかりのフォアグラやら牛肉やらを全てトイレに流してしまったのである。

ま、これも青春・・・・・・・



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