俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

宣材写真

先日、生まれて初めて”宣材写真”なるものを撮った。

僕は別に芸能人でも有名人でもなんでもないのだが、ここ中国の職場では研修やセミナーでちょこっと日本のことを紹介するように依頼されることがある。その際、広報用に写真を提出してくれと言われることがあるのだ。

それまではスマホで自撮りした写真を送って適当に使ってもらっていたのだが、ある時、主催者側から「ちゃんとした写真を送ってほしい」と言われてしまったのだ。実は中国の人は大学の先生やセミナー講師、営業マンや大企業の社員にいたるまで結構ちゃんとした宣材写真を持っている人が多く、さすがにそういった人の並びで僕の間抜けな自撮り写真が並んでいると恥ずかしいと思うようになっていた。

そこで僕も50歳にして初めて宣材写真を撮ることにしたのだ。

(*↓ これは私ではありません。ビジネスプロフィール写真の見本です)

https://www.hommezup.com/contents/category/business/

会社事務所の近くに小さな写真屋があって、そこで撮ってもらえることを知った僕は中国人スタッフと共に撮影に向かった。普段はラフな格好でオフィスにいる僕も今日だけは一張羅にネクタイまで締めて出勤していた。

写真屋につくと「どんな写真がいいんだ?」と訊かれた。

まあ、使うのは中国にいる間だけだし、せっかくならちょっとカッコいいやつを撮りたい。背景はブラックで、ちょっと斜めに構えた感じかな?もういい年したおっさんなのでちょっと威厳もほしいな。ネット上で「投資の仕方教えます!」「会社運営なら…」とか言い出しそうなおっさんは腕組んでるイメージだな。

中国人スタッフに通訳してもらって、自分のイメージを伝える。するとカメラマンは僕を立たせ、細かい指示を与えてくる。「顎を引いて」「体が横に傾いてる!まっすぐ!」「スーツの腕の部分の皺が気になるな」「ちょっと笑って」「顔をちょっとだけ正面に!」「顎が前に出てる!」「顔も傾いてる」「表情を柔らかく」「歯は見せるな!」「次は歯を見せて!」

小さな写真屋だと侮っていたが、意外に細かい。プロの仕事をしてくる。で、これも不思議なのだが、写真を撮ってもらっている間、なんだかちょっと”嬉しい”のだ。”嬉しい”と感じている自分がいるのだ。

幼少のころから写真が苦手でカメラから逃げるような子だったし、青年時代も「こんな不細工な瞬間を撮るなんて性格の悪い奴だ」と友達に陰口を叩き、自分の写っている写真を見たがらないような自意識過剰な男だった。

でもアラフォーになったあたりから見た目をあきらめるようになり、「ま、他人にはこう見えてんだな。モデルじゃあるめーし、別にいいや。結婚もできたし。おっさんはおっさんらしくしてるのが無難」と思うようになった。写真撮影も「撮りたきゃ撮れ」と無感情で収まるようになった(集合写真の類は送られてきても保存せず)。

でも今回、宣材写真をプロに撮ってもらったことにちょっと興奮し、出来上がりの写真にまたニヤニヤが止まらないのだ。ちゃんとこめかみのシミは消してくれたようだし、白髪交じりの恰幅の良いスーツ姿のおじさんは貫禄すらある。いかにも「仕事ができそう」「いいアドバイスをくれそう」な感じに映っているのだ。これには僕も驚いだ。年を取って初めて見た目で得をした気分になった。セミナー講師の宣材写真みたいなものは、新進気鋭の若手実業家もいいが、おじさんも映える。で、プロのカメラマンはちゃんと冴えないおっさんを”映えるおっさん”に仕上げてくれる。いや~うれしいな。

料金は50元(約1000円、データのみ)。嫁も「いいじゃん。仕事できるっぽいよ。これなら情弱くらいなら騙せるよ」と太鼓判。「実家の両親にも見せてやれば?」という提案は丁重に断ったが、自分のスマホにはちゃっかり保存。時々見てニヤニヤしている。

セミナーで話すことはまったく準備できていないが宣材写真は準備万端。あ~、この写真使いたいな~。だれか声かけてくれないかなぁ~

https://pro-reversi.com/2021/05/29/portrait-biz-8/