旅行に行く際の旅のお供として近所の図書館で借りてきたのだ。
これが実に良かった。
おもしろい本だった。
僕はもともと椎名誠さんの旅本が大好きで、ほとんどの本を読んでいるが、野田さんとカヌー犬ガクのことも椎名さんの本で知っていた。
野田さんは椎名さんの旅仲間なのだ。
しかし、野田さんの本を読んでいるうちに、最初持っていたイメージと大分変わってきた。
この人はすごい!
とにかくワイルド。
とにかく野生児。
とにかく変人。
すごい日本人がいたもんだと感心してしまった。
実は最近、犬にはまっているのだ。
犬のしつけの本を立ち読みしたり、「きょうのわんこ」に感動したり
動物番組の犬特集を見るたびに「ああ、犬飼いて~」と思っていたのだ。
犬ってかわいいよな~。
飼い主と犬の関係っていいよな~。
俺の孤独を癒してくれそうだよな~、なんて妄想していた。
しかし、この野田さんとカヌー犬ガクの関係は、別の意味で実に興味深い。
この人はいわゆる”愛犬家”とは全く違う。
この人は犬を連れて世界中の川を下っていく冒険家だが、犬が川に落ちても助けないし、犬が熊に襲われても熊のテリトリーを犯した犬の方を叱る。
犬が森の中に入って2日帰ってこなくても、うろたえることなく、じっと待っているし
たまに旅先で仲良くなった人に犬を預けて一人で帰ってきてしまう(アラスカのエスキモーに預けた時は「留学」と称し、子どもを作って帰って来いと実にのん気だった)。
さらに、カヌーから犬が落ちて、犬が怖がってカヌーに乗りたがらない時は「乗りたくないならそのままそこにいろ」と犬を置いて帰ってきてしまう。(犬が帰ってきたのは10日後だったそうだ)
いわゆる愛犬家の人が読んだら「信じられない!」「犬が可哀そう!」というエピソード満載だが、野田さんは揺るがない。
そしてそうした愛犬家をあざわらうかのように、ガクはたくましく生きる。
小さい頃から鎖につながれたことがなく、自由に野原を走り回っているガクは普通の犬の10倍は走っているそうで、脚力が強い。
また、相手が熊だろうが立ち向かっていく強さと野性味
野田さんが食料が尽きてビスケット3枚で過ごしていた時も、川に打ち上げられた腐ったサーモンを食べたり、野鳥の卵をかじって中身を飲んだりとひょうひょうと生きている。
風貌も野犬そのものだ。
僕は公園などで服を着せられている犬や、踏んだら一発でつぶされそうな小さな犬を見て、つくづく哀れだと思っていた。
犬は強くあってほしい。
ちゃんと主人を守れる気の強さと体の強さをもっていてほしい。
そしてそのためには飼い主は犬を決して甘やかさず、調教していかねばならない。
それはお行儀をよくする躾ではなく、本当の主従関係=信頼関係を作るためでもある。
野田さんとガクの関係に比べると、前に読んだシェルパ斉藤(と愛犬ニホ)なんて馴れ合いに等しい。
言葉は野田さんの放つもとの同じでも、重みが違う。
ちなみに野田さんはガクの死後、その毛皮でベストを作り、身につけているそうだ。
これを「深イイ」とするかどうかは意見が分かれるところだが
この本を読んだ後では、なんとなくガクも喜んでいる気がした。