俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

和式便所で老いを知る

先日、近所の図書館で本を探していたら、無性にうんこがしたくなった。

それはもう、急性のもので、うちまでは我慢できそうにない、かなり強烈な便意だった。

「うぉ~、ここ最近、図書館でのうんこ病は治まっていたのにぃ!」


しかたなく、抱えていた本を本棚に戻し、図書館のトイレに駆け込む。

するとそのトイレ、和式便所なのだ。



和式便所

最近の小学生は、その存在する知らないかもしれない。

僕だって、正直、15年ぶりかもしれない。


学生寮にいた時代にしゃがんで以来、僕はずっと洋式を使ってきた。

洋式便所のラクな姿勢に魅了された僕は、15年もの間、和式にしゃがんでこなかったのである。


しかし今は一刻を争う事態

僕はズボンとパンツを一気に下ろし、勢いよくしゃがんだ。

とたんに放出される大量のデミグラスソース


が、それよりもまず、膝裏に感じた痛みに、僕はびっくりした。

「痛っ!」

堅いジーンズとベルトがしゃがんだ膝の裏に食い込んでいたのだ。

僕はちょっとだけお尻を上げ、膝が痛くないようにズボンの位置を変えた。


強烈な便意の後の放出は、一気に行なわれるが、その後、残便を搾り出すのに数分を要する。

しばらくすると震えだす膝

「あれ?おかしい?あれ?あれ?オレ?しゃがみ方間違ってる?」


いや、間違っていない。

少年時代、野球チームでキャッチャーをしていた僕は、

かかとを上げた状態でしゃがみ、うんこをしていた。

子供の時から二十歳ぐらいまでその姿勢でうんこをしていた。


が、36歳になった現在、このポーズが3分ともたない。

「なんてこったい・・・」


僕は仕方なく、かかとを地面につけることにした。

が!

とたんに後ろに傾き始める上半身

「え?なに?なに?」

と思ったときには後ろに右手をついていた。(もちろん便器の外に)

まるで藤井隆が時々やるポーズのように

僕は片手を後方についていた。


「バカな・・・」

僕はうんこが便器からはみださないように、ゆっくり体を起こした。

が、やはり踵を上げた「キャッチャースタイル」じゃないとしゃがめない。

恐る恐る踵を下ろしてみたが、同時に上半身をかなり前屈させないとバランスが保てないのである。


おかしい・・・和式便所ってこんなに大変だったっけ?

僕は前傾姿勢のまま考えた。

もう目の前には壁があり、僕は壁に額をつけるような形になっている。

「みんな、こうやって用を足してるのか?」

僕はなんだか自分が今まで”正しい”と思ってしてきたことが全部否定されたような気がした。


これって、前に手すりみたいなものがないと、お年寄りはできないんじゃ・・・

昔のお年よりはそれだけ足腰が強かったってことか?


もし20年後、僕が和式便所しかない状況に追い込まれたら・・・

僕はどうやって人間の尊厳を保てたらいい?



36歳の夏だった・・・

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