俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

老人と海 その3

老人「ぐろ~りあ~、あいに~じゅら~ぶ、おま~えの熱いは~とで~♪」

 

所長「?」

 

老人「お、ここか、満がおるのは。まったく、父親にわざわざ遊びに来させる息子がどこにおる・・・」

 

所長「こんにちは。おじいちゃん、お一人?」

 

老人「ん?また逆ナンか?しかしそれにしては妙齢な・・・。ま、みのもんたから見たら”お嬢さん”か。お嬢さん、ワシに惚れると火傷するよ」

 

所長「おもしろいおじいちゃんね。どこから来たの?入所希望の方?」

 

老人「はあ?なんでワシが老人ホームなんかに入らにゃならんのだ。ワシはまだ89と10ヶ月だぞ!」

 

所長「あら、それは失礼しました。ご面会かしら?奥様が入居されてらっしゃるの?」

 

老人「いやいや。妻は12年前に餅を喉につまらせて死にました。なかなかツッコミのうまい妻でしたな。”柴又のあした順子”の名をほしいままにしていましたな。」

 

所長「(事務所のほうに)だれか!一人外に出てるわよ!」

 

老人「旧姓は久留間、名はトラ、人呼んで通風のトラとはうちのかみさんのことでして・・・」

 

所長「おじいちゃん、ちょっと待っててね。(事務職員に)だれか!ちゃんと見てなきゃだめじゃないの!」

 

老人「(所長に合わせて)だれか!早くお茶とお菓子持ってきてちょーだい!」

 

所長「おじいちゃん、静かに。お部屋に戻りましょうね。」

 

老人「は?何を言っておるんだ。ワシは息子に会いにきたんだ!満を出せ!」

 

所長「完全にボケてるわね」

 

老人「ちょっと待て!まだボケてないぞ。突っ込むならボケてからにしてくれ!」

 

所長「(事務所に向かって)だれか!早くしなさい!」

 

老人「早くしないとここで野グソしちゃうわよ!早くシロたいやきを持ってきなさい!」

 

所長「はいはい。おじいちゃん、ちょっと待っててね。」

 

老人「いや、そこは突っ込んでくれ。なんだここは?冗談のわかるやつはおらんのか?」

 

職員「所長!お待たせしました!お茶とたいやき持ってきました!」

 

老人「お、いた」

 

所長「おちゃとたいやきはいいのよ!それより、この方、入居者じゃないの?」

 

老人「いただきま~す!」

 

職員「いえ、違いますね」

 

所長「入居所の家族の方?」

 

職員「ちょっと、面識ないですね」

 

老人「たいやき旨し!」

 

所長「おかしいわね。どこかから徘徊してきたのかしら?」

 

職員「警察呼びますか?」

 

所長「そこまでしなくてもいいわよ。それよりたいやきなんてどうしたのよ。」

 

職員「あ、あれおやつです。所長の分」

 

所長「え!あれ、あたしの?」

 

職員「だって所長、『お茶とたいやき』って言うから・・・・」

 

所長「なんであげちゃうのよ!あたしのおやつ。しかもこんなじいさんに・・・・?あら?おじいちゃん?」

 

職員「あら?どこ行ったんでしょうね?」

 

所長「ああいうのが一番危ないのよ。徘徊しているうちにとんでもないところに行っちゃうんだから。」

 

職員「怖いですね」

 

所長「だから入居者から目を離しちゃだめよ。」

 

職員「わかりました。」

 

所長「それから知らない人にあたしのおやつあげちゃだめよ」

 

職員「・・・・・・・わかりました」

 

(老人ホーム内)

 

老人「ここが老人ホームか。ずいぶんしわくちゃな場所じゃな。若い子が一人もおらん。じじいとばばあばっかり」

 

職員B「おはようございます。お元気ですか?」

 

老人「はい、おかげさまで。あっちのほうはさっぱりですけど」

 

職員B「うふふふ」

 

老人「うふふふって・・・もっとなんか言ってくれよ・・・」

 

職員C「あら、新しく入った方?」

 

老人「ええ、今年からDA PUMPのメンバーになりました。ICCHAです。よろしく」

 

職員C「はい、よろしく。(右を見て)あ~田中さ~ん、おトイレ一人で行ける?」

 

老人「いや、よろしくじゃなくて・・・・なんじゃここは?ワシのボケが通用しない?」

 

満「と、父さん?」

 

老人「あ!じいちゃん!会いたかったよ~~!」

 

満「なんで僕がじいちゃんなんですか。」

 

老人「だって老人ホーム入ったじゃん。ワシより先に。」

 

満「父さんが元気すぎるんですよ。それより、わざわざ僕に会いに?」

 

老人「かわいい息子のためじゃ。なに、遠慮はいらん。コーヒーとケーキさえあれば」

 

満「ありませんよ。そんなもの」

 

 

満「何キレてんですか。そんなの老人ホームにあるわけないじゃないですか!」

 

老人「なんじゃ、つまらん。」

 

満「それより急にどうしたんですか?」

 

老人「ちょっと近くまで徘徊してきたのでな。」

 

満「冗談は止めてください。それより、息子達とはうまくやってるんですか?」

 

老人「おう!ばっちり!隆はあんま相手してくれないけど、海さんも葵も突っ込んでくれとる」

 

満「父さん。そんなにボケてばかりじゃ、いつか本当にボケたときに区別つかなくなりますよ」

 

老人「人を狼少年みたいに言うな。その時は”天然”と呼んでくれ」

 

満「”天然”っていうか、そこまでいったら”自然”ですけどね。」

 

老人「おう!それで結構!人はいつか自然に還る。素晴らしいことじゃないか!」

 

満「縁起でもないこと言わないでくださいよ。」

 

老人「人はいつか死ぬ。それが自然の摂理じゃ。わしだっていつかは死ぬ」

 

満「父さん・・・・」

 

老人「順番から言ってまずお前が先に死ぬ。次にわし、それから隆」

 

満「ちょっと待ってください!なんで僕が先なんですか!」

 

老人「いや、なんとなく。お前、先死にそうだし。」

 

満「いやですよ。父さん先死んでくださいよ」

 

老人「お前、親に向かって『先死ね』とはどういうことだ。この親不孝もん!」

 

満「子どもが親より先に死んだらそれこそ親不孝じゃないですか」

 

老人「そんなことないよ。お前が遺書に『遺産は全て父さんに譲ります』って書いてくれたら最高の親孝行だよ」

 

満「書きませんよ!遺産は隆に譲りますから!」

 

老人「じゃ、ワシの遺産は海さんに渡す!」

 

満「なんでですか!僕にくださいよ!」

 

老人「じゃ、お前の遺産、わしによこせ!」

 

満「だから何で僕が先に死ぬんですか!」

 

老人「だって、ワシが先に死んだら、だれが葵の面倒を見るんじゃ」

 

満「隆と海さんですよ」

 

老人「じゃ、だれが矢田亜希子の面倒を見るんじゃ!」

 

満「それは・・・・押し・・・とにかくお父さんが面倒見る必要ないでしょ!」

 

老人「じゃ、広末涼子は?内田有紀は?だれが面倒見るんじゃ!」

 

満「お父さんは磯野貴理の面倒でも見てあげたらどうですか?」

 

老人「・・・・・・・・それはヤダ」

 

満「・・・・・・・・・とにかく、僕は元気ですから。ここに来たのも隆たちに迷惑をかけたくなかっただけですから」

 

老人「満・・・・・・お前、しばらく見ないうちに、大人になりおって・・・」

 

満「・・・・・・もう68歳ですからね・・・」

 

老人「68歳でも98歳でもワシのかわいい子どもじゃ!いや、もうあんまりかわいくないけど、とにかくワシの息子じゃ!」

 

満「どうせかわいくないですよ!それにもし98歳だったら父さんより年上になってるでしょ!」

 

老人「そんな関係、ふぁんたすてぃっく!!」

 

満「もう帰ってください」

 

老人「それより、便所どこ?」

 

満「廊下の突き当たりを右ですよ」

 

老人「よし!じゃ、でっかいうんこしてくるからな。覚えておけよ!」

 

満「なんで覚えてなきゃいけないんですか・・・」

 

老人「お前に父親の心意気ってやつを見せてやる!」

 

満「見せなくていいですよ。」


(便所にて)

 

職員D「大丈夫ですか~?お一人でできますか~?」

 

老人「なにやつ!(振り返る)はぅあ!なんてきれいな・・・・まるで観月ありさちゃんじゃ・・・」

 

職員D「お手伝いしましょうか?」

 

老人「え、あ、お、お願いします。」

 

職員D「はい、じゃ、ズボンおろしましょうね」

 

老人「おぅ!ちょっと恥ずかしい・・・」

 

職員D「うふ、大丈夫ですよ。はい、しゃがんで~」

 

老人「ほぁた!はう!いやっほぅ!」

 

職員D「あら、たくさん出ましたね~」

 

老人「うお~~、ふぁんたすてぃっくぅぅぅ!」


(満の部屋)

 

老人「(ガラガラ・・・)」

 

満「・・・・・・・父さん、まだいたの?」

 

老人「満・・・・・・・・わしはもう、ダメかもしれん・・・」

 

満「どうしたんですか?」

 

老人「ばあさんというものがありながら・・・・・・・わしという男は・・・」

 

満「母さんがどうしたの?」

 

老人「母さんともしたことがないアブノーマルなプレイを・・・」

 

満「・・・・・・何があったか知りませんけど、大丈夫ですよ。母さんはもう12年前に死んだんだから」

 

老人「そうか?じゃ、自分を責める必要はないな?そうだよな。タイガーウッズに比べればかわいいもんだよな?そうかそうか。母さんは死んだんだった。あ~いい思い出!」

 

満「父さん、もう帰ったら?海さん心配してるよ」

 

老人「は!海さん?そうだ!忘れてた!」

 

満「え?どうしたの?」

 

老人「わし、買い物の途中だった!」

 

満「あ~あ、また海さんに怒られるよ!」

 

老人「またチクビに蝋を垂らされる!早く行かなきゃ!」

 

満「そんなわけないでしょ。でも早く帰ってあげて」

 

老人「おう!満、達者でな!夜泣きするなよ!寝る時はパンツ履けよ!」

 

満「父さんもね!長生きしてよ!」

 

老人「ふふふ・・・満、人生ははかない・・・・・・・・だからパンツもはかない・・・」

 

満「早く帰りなさい」

 

老人「は~~い!」