俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

中年男、久しぶりにブランコに

みなさんはここ最近、いつ「ブランコ」に乗っただろうか?

先日、僕は本当に久しぶりにブランコに乗ったのでちょっとばかし報告したい。


それは5月2日の月曜日にこと

ゴールデンウィークを実家で過ごしていた僕は、しゃれにならないくらい時間を持て余していた。

実家にいれば、自然に朝・昼・晩とご飯が出てくる。

パソコンがないので、それ以外の時間はテレビを見たり、惰眠をむさぼったりするしかない。

僕は自然の摂理に従い、ダラダラとすごしていたのだが、あまりに何もせずゴロゴロする37歳の息子を見て母親は次第にイライラし出し、

「飯ができるまでその辺をウロウロしてこい!」と告げたのである。


だから僕は食事までの1時間半をあてもなく彷徨うことになった。

首がダルダルのTシャツ、パジャマ替わりにもつかえるヨレヨレのスエット下、そしてボロボロのサンダル。

本当に油断しまくっていた。

が、当時の同級生などもうこの町にはおりゃせんだろうし、別にもうこの町に住んでいるわけでもないので「小汚いおっさん」と思われても構わなかったのである。

ちょっと自販機にジュースを買いに行くような恰好のまま、僕は近くの神社、裏の河原、昔通った幼稚園、小学校、親父がすでに墓を買ってあるお寺、昔野球をしたグランドなどを徘徊。

気づくと1時間以上歩いていた。

脇汗もしっかりとかき、足の裏も痛み、ヘトヘトになりながら最後にグランド裏の公園にたどり着いた。

本当はどこかで一服したかったのだが、僕の実家は結構な田舎で、マクドナルドはもちろん、コンビニもない。

一休みできるところは公園のベンチ、喉を潤せるのは公園の水道の蛇口くらいしかなかったのである。


田舎の昼間の公園は、小さな子供を連れた若奥さんが数組いたほかは、なんとものどかで、静かだった。

それだけにおっさんが昼間に一人、公園をウロウロしているのは不気味だったに違いない。

僕は公園の水をがぶ飲みしたあと、ふとブランコに目を留めた。

ブランコ・・・・・・・・・

なぜだかわからないが、とたんに「久しぶりにブランコに乗ってみたい・・・」と思ってしまった。

なぜだろう?

子供の頃の血が騒いだか?

確かに僕はこの公園のこのブランコで、靴飛ばし世界記録(自称)を達成(推定記録5メートル45)していた。

また、ブランコに立ち上がり、それこそ大車輪するくらいこいで、華麗にジャンプをし、

ここでも推定3メートルくらいジャンプしたのだった。

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ブランコを思い切り漕いでみたい。

若奥さんたちの視線は痛いが、この機会を逃したら今度はいつブランコに乗ろうと思うかわからない。

僕は恐る恐るブランコに近づいた。

幸い、若奥様達はママ友たちとのおしゃべりに夢中で、このプータロー仕様のおっさんの怪しい行動には気づいていない。


が、いざブランコに座った瞬間!

僕はたとえようのない違和感に襲われた。

あれ?・・・・・・・・・・おかしい・・・・


ブランコの座板が後ろにウィリーするように傾き、油断すると一気に後ろに倒れそうである。

慌ててブランコの鎖につかまるのだが、なかなか体が起きない・・・

あれ?おかしい?


僕はとりあえず足を上げてみた。

するとその不安定なこと不安定なこと!

僕は急にプールに落とされた上島竜兵のように慌てふためき、

手足をバタバタさせながら体を起こした。

「こ、これって・・・・すげー危なくね?」

本当に手を放したら最後

僕は後ろに見事に倒れ、頭を強打すること間違いない。

37歳にもなるとその衝撃の大きさがわかるだけに・・・・・・・・・怖い。

これ、子供に乗せるの危険じゃないのか?


僕は一度足を着いて落ち着いて考えてみることにした。

足をつけばなんとか座れなくはないが、すわり心地は決してよくはない。

普段、座り慣れている座椅子の快適さに比べたら、ブランコとはなんて不快な乗り物なのだ・・・。

が、このままオメオメとブランコに負けるわけにはいかない。

僕は大人なんだ。


僕は今度はブランコに座ったまま、少しずつ後ずさりをし、立ち上がった。

このまま足を離せば、ブランコは自然に大きく揺れるという体勢だ。

僕はその場で軽くジャンプをし、体を後ろに倒した。

ブランコは勢いよく僕の体を前に振るのだが、その時の気持ち悪さと言ったら!!

腹の下のところが急に涼しくなって嘔吐したくなる感じというか、

とにかく・・・・・・・・・・不快なのだ!

それが前に振られる度に襲ってくる。

まずい・・・・これ・・・・酔うわ・・・


僕は急いで足を着いてブランコを止めにかかった。

不覚にもサンダルだったのでブランコはすぐに止まらず、土煙を巻き上げながら僕の素足を面白いように汚していった。

何度かズルズルと引きずられた後、やっとブランコは止まってくれた。

もう・・・結構です・・・



そそくさと立ち上がり、家路を急ぐ。

「こ・・・・こんなもんなのか?」

「俺は・・・・・こんなもんなのか?」

25年ぶりに乗ったブランコにボロボロにされた僕は、明らかに混乱していた。

「あんな危険で、あんな気色悪い乗り物を、なぜ子供は面白がって乗るのだ?なぜ俺はあんなに大胆に乗れたのだ?」


なにがなんだかわからなくなった。

もし20年以上ブランコに乗っていない男性がいたら、是非試してみてほしい。

マジで・・・・・・・結構くるから・・・・。

大人のブランコ

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