僕は現在、仕事でマレーシアに住んでいる。
んで、ペーパードライバー歴20年を卒業し、毎日車で通勤をしているのだが、これがなかなか快適なのである。
車の運転は緊張もするが、意外に楽しい。
なんか”自分だけの空間”って感じが実にいい。
大声で歌いながら運転すると、個室カラオケっぽい感じもしてなんとも爽快。
ちょうど僕が買った車にはカーステレオがついているので、お気に入りのCDでもかけながら運転したらそれは気分がいいだろう。
ということで、僕はマレーシアでCDを探すことにした。
が、探してみるとこれが意外に難しいのだ。
僕は10年以上前にもマレーシアに来たことがあった。
その時は、街中にCDやDVDを売る店はたくさんあったし、日本では売っていないようなCDもよく目にした。
Kinki Kidsのシングルコレクションやサザンのシングルコレクションなどは、おそらくマレーシアで勝手に編集して売ってしまっているものだったが、僕にはありがたかった。
BackstreetBoysやWestside、RickyMartinのCDなんかも買ったな。
間違いなくコピー商品だったけど。
間違いなくコピー商品だったけど。
で、今回も苦も無く見つかるだろうと思っていたが、これがなかなか難しい。
DVD ショップはあるのだが、CDはほんの申し訳程度にマレーシアのアーティストのものが置いてあるくらい。海外のアーティストはマイケルジャクソンが少しあるくらいだ。
DVD ショップはあるのだが、CDはほんの申し訳程度にマレーシアのアーティストのものが置いてあるくらい。海外のアーティストはマイケルジャクソンが少しあるくらいだ。
ま、考えてみれば今はもうCDを買う時代ではない。
音楽はダウンロードしてスマホやら携帯音楽器で聞くものだ。
握手券やら投票権やらをつけたって、マレーシアじゃCDは売れまい。
僕もパソコンにダウンロードしてCDを焼ければいいのだが、そんな技術がない。
すると同僚が「チャイナタウンならあるんじゃないか」という情報を僕にくれた。
確かに、10年前に僕もチャイナタウンで違法コピーモノをよく買っていた。
僕はとある土曜日にチャイナタウンに行くことにした。
チャイナタウンは10年前とちがってきれいに整備され、観光地化されていた。
昔は違法DVDを大量に露店に並べて、パトカーのサイレンの音が聞こえると蜘蛛の子を散らすように消えていき、警察が行ってしまうとまた性懲りもなく違法DVDを並べるという、いたちごっこの光景がよく見られた。
エッチなDVDを物色していた僕はなぜか一緒に逃げた記憶がある。
しかし今はそうした路面店はない。
あるのは時計やカバンのコピー、有名スポーツメーカーのコピー物、土産物屋やTシャツ店といったところだ。
僕は店の奥のほうに目を凝らし、それらしき店を探す。
昔、エロDVDを売っていた露店も、こうした小さい店の奥から商品を出していたのだ。
すると1軒のDVDショップを発見。違法コピー物が壁にずらりとかざられており、さらに日本のAVの違法コピーまで発泡スチロールの箱に詰められすぐに隠せるようにしてある。
店の端ではパソコンで今もコピーを製作中。
店番の女は客である俺には一瞥もくれず、ひたすらケータイ電話でしゃべっている。
僕は女の電話が終わるまで店内を物色していたのだが、どうやら音楽CDはおいてなさそうだ。
女は一向に電話をやめる気配を見せず、こちらに接客をするそぶりすら見せなかったので退却することにした。
次に、ちょっとガラの悪そうな男が店番をしている店で足を止めてみた。
すると男は「ジキジキ!OK!GOOD!」と嬉しそうに親指を立てる。
”ジキジキ”は隠語で”アレ”を指す。
ようは「アダルトビデオ(の違法コピー)がある」と言っているのだ。
ま、男が一人で歩いていれば当然そうなるわな。
現に10年前なら喜んで買ってたし。
が、僕はすでに妻子のある身。
僕「音楽CDないの?」
男「は?あるわけねーだろ。それより、ジキジキはいらないのか?」
僕は苦笑いをしながら店を後にした。
次に入った店は、日本のドラマの違法コピーを大量に扱っていた。
日本でもそれほどヒットしていないようなドラマまで、TSUTAYA並みにそろっていたので驚いた。
マレーシアにも日本のドラマのファンっているのかな?
しかしここでもCDは見つからず。
もうあきらめようとトボトボ歩いていると、ボロボロで読めないほど古びた看板に「RECORD」の文字を発見。
しかし店の広さは6畳ほど。しかも中華系の歌手のポスターばかり貼ってある。
まあ、ここにはないだろうとは思ったが、一応入ってみることにした。
チャイニーズのおばちゃんに「日本のCDない?」と声をかけると
なんとそのおばちゃんは「日本の?お、あるよ!」と声を返したのだった。
なんと意外な!こんなオンボロの小さなレコード店に日本の音楽CDは追いやられていたのだ。
おばちゃんは棚の一番下の引き出しから、それらしきものを何枚か出してくれた。
・・・なんとも渋いチョイスだ。
日本でも探すの苦労するようなCDが、よくここマレーシアに残ってたな。
ただ、深田恭子のベストを聞きながら通勤するというのは・・・どうも思い描いていた海外生活とは違うような気がする・・・
するとおばちゃんはさらに引き出しの奥から
「これも・・・日本のCDかね?」と僕に差し出したのがなんとDA PUMPのベストだったのである。
僕は思わず「え?マジ!!」と思ってしまった。
きっかけはネットの記事だった。
DA PUMPは現在、東京郊外のイオンやスーパー各地で無料ライブを開催している。
全盛期を知る者にとっては寂しい限りだが、メンバーはそれに全力で取り組んでいる。
その姿勢がすばらしい!というものだった。
で、Youtubeでその営業の様子を見てみたのだが、改めてISSAのすごさに驚嘆した。
結成当時からの唯一のメンバーISSAは今年35歳。
しかしまだ踊りのキレは抜群だし、なんといってもそのボーカルのすごさに驚かされる。
あれだけ激しく踊りながらも伸びやかな魅力のあるボーカルは健在、息が切れることなく何曲も歌い踊り続けるのである。
今、日本の芸能界は人数が多いだけのダンス&ボーカルグループやら歌って踊る男性アイドルグループが芸能界を席巻しているが、ISSAの才能を超えるものは一人も出ていない。
彼こそ日本のマイケル・ジャクソンといっていいかもしれない。
そんなエンターテイメントの天才が、地方のデパートで歌っているのである。
DA PUMPの全盛期を知る主婦は驚いただろう。
「あれ?この声?まさか!」と思ってステージにかけよったことだろう。
で、ぼくも懐かしくなって昔のDA PUMPのミュージックビデオを見直してみたのだが、これがまたカッコいいのだ。
「Live is final liberty」「if・・」「Pain of Rain」「CORAZON」などなど
本当に一生懸命踊っている様子を見てとれる。
ジャニーズばかりの芸能界に嫌気がさしていた当時の僕にとって、DA PUMPのけなげな姿勢が非常に好感が持てたのである。
これはもう運命だ。
僕は即決で購入した。
僕とDA PUMPはマレーシアで出会う運命だったのである。
んで、今は毎日DA PUMPを聞きながら通勤しているのだが、これがなかなか
”Feelin' Good”で、僕の車の中は”It's a Paradise”なのである。