名古屋市の河村たかし市長が金メダルを噛むパフォーマンスをして批判を浴びている問題。
もちろん批判されて当然、謝罪をして当然、弁解の余地もないし擁護する気は1ミリもないのだが、同じ”おじさん”の僕はいろいろ思うところがあって心が痛い。
実はおじさんという生き物は調子に乗ってよくあのような失敗をするものなのだ。
明日は我が身。くわばらくわばらくわばたおはら・・・
東京オリンピック2020女子ソフトボールで金メダルを獲得した後藤希友選手は地元の名古屋市役所を表敬訪問、獲得した金メダルを記念に河村市長にかけてあげると市長はおもむろにマスクを外して金メダルを噛むパフォーマンス。
しかしこの行為に対してSNSで批判が殺到、他のメダリストやテレビコメンテーター、後藤選手が所属するトヨタ自動車まで批判のコメントを発表し、市長は謝罪をすることになった。
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もちろん河村市長を擁護する気はサラサラない。
苦労して獲得した金メダルを他人が傷つけていいわけがない。
特にコロナ禍で感染の危険性を考えたら普通に考えて触るのだって遠慮するだろう。
現に東京オリンピックの表彰ではメダルは首にかけてもらえず、自分でお盆から取って首にかけるという方法が取られている。
河村市長のあまりの不注意、無礼は弁解の余地もない。
では仮にコロナ禍でなかったらどうか?
「ちょっとメダルを嚙む真似していいですか?一度やってみたかったんです」と断りを入れていたらどうか?
それでも批判は来るだろう。
あのパフォーマンスが許されるのはやはりオリンピアの、しかも結果を出した人だけの特権だし、そもそも死ぬほど練習をして獲った価値のあるメダルにおじさんの唾が付くのは気持ちが悪い。本当なら素手で触るのも止めてほしい。おじさんの指紋や手の脂が付くのは不快だ。手袋をつけてほしい。
だがおじさんという生き物は調子に乗るとああゆうことをすることがよくある。
ゴルフコンペで優勝カップをもらえば気分はメジャー制覇。とりあえずカップにキスをしておどけて見せるし、居酒屋に大きな杯が飾ってあれば気分は優勝力士、とりあえず口をつけて飲み干す真似をしたがる。バーベキューでだれかがシャンパンを持ってこようものなら気分はF1レーサー。だれかにかけてひんしゅくを買ってしまう。
だけどもちろん悪気はない。おじさんなりのサービス精神だ。
ただおじさんが”こうやったらおもしろいだろう”と考えるほとんどのことは、多くの人にとっては気持ちが悪いし、つまらない。
お父さんが寝癖を直したくて高校生の娘のヘアブラシを使ってしまうのも、職場でお茶でも飲もうと思って間違えて女子社員の私物の湯飲みを使ってしまうのも、飲み会で大皿から直箸でつまみを取ってしまうのも、・・・・おじさんには悪気がない。単に気が回らないだけだ。
僕はアラフィフのおじさんだが、なるべく女性に「気持ち悪い」と思われないようにいろいろ気を使っている。こまめに床屋に行き、背広にフケが落ちていないか常に気にしているし、お風呂では耳の後ろをゴシゴシ洗い、加齢臭をセーブ。トイレに行ったら鏡の前で鼻毛が出てないか、歯に食べ物が挟まっていないかをチェック。顔の脂も常に気にしてこっそりゴシゴシ拭いている。
たまに同僚女性のスマホにお客さんから電話がかかってきて、急に代わらなければならないときは本当に気を遣う。手の脂、耳の脂がその女性のスマホにつかないかばかり気になってお客様の話なんてまるで耳に入らない。女性にスマホを返すときは見えないように袖でさっと拭いてみたりする。
それほど気を遣う僕でも、まあくだらないギャグを思いついてしまう。
部下を表彰する時には「痛みに耐えて、よく頑張った!感動した!」なんて小泉元総理の真似をしたし、ビリヤードに行けばトム・クルーズの映画「ハスラー」を思い出してできもしない”マッセ”なんて技を「マッセしまっせ~」なんて言いながらやったりした。
今思い返すとゲロが出るほどつまらない。
でも”おじさん”とはそういうことを思いついてしまう生き物だ。
周りにはやし立てられ、おだてられたりするとさらにタチが悪くなる。
「なんか期待されてるな。一発かましたれ!笑かしてやれ!」なんて思ってしまう。
例えばカラオケ。
昔『ものまね王座歌合戦』(フジテレビ系列)で観たモト冬樹の平尾昌晃さんのマネがメチャメチャおもしろくて今でも記憶に残っているのだが、これを令和にしたら完全にアウトだ。セクハラ、パワハラで訴えられ、とたんに謝罪に追い込まれる。でもおじさんの頭の中には”モト冬樹のマネだよ!平尾昌晃だよ!昔、みんな笑ってたじゃん!”という思いが残っている。だからしてしまう。
モト冬樹&斉藤ルミ子「カナダからの手紙」vs コロッケ&森口博子「夏ざかりほの字組」 1991年 - YouTube
この「昔、これでウケたんだよ」というおじさんの思い出が多くの若者を混乱させる。
この「昔、これでウケた」という記憶は風呂場のカビのように、換気扇の油のようにしつこくおじさんの記憶にこびりつく。これが多くの人にとって不快でしかないのに、なぜかおじさんは必殺の武器だと思ってしまう。
今思えば女性差別発言でJOC会長を首になった森喜朗おじさんなんかもそうだったんだと思う。
もし僕が何かのコンペで優勝してメダルをもらったとして、「写真撮りましょうよ」なんて言われたら・・・まあ、噛むね(自分のメダルだからこの場合はいいのだろうが)。
もし誰かが苦労して獲得したメダルを見せてもらったとしたら・・・まあ、噛むね。というか口の中に入れるねとか、そのままポケットに入れるとかして笑いと取りにいくね。
だって昔『天才たけしの元気が出るテレビ』(日本テレビ系)で高田純次がそうやって金メダリストの小林孝至氏さんをからかってたんだよ。知ってるでしょ?あれ、ウケたよな~。え?知らない?
「あれは最大の愛情表現のつもりでした。迷惑をかけたならごめんなさい」
天才たけしの元気が出るテレビ ソウルオリンピック金メダリスト 小林孝至2 - YouTube