俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

スキャットって・・・いいよね

先日、エレファントカシマシのことをブログに書いたら「『歴史前夜』って曲もいいですよ!」とのコメントをいただいた。Yahoo!ブログからHatena Blogに移ってから初めていただいたコメントだったので嬉しくなってYouTubeで見てみたら、確かにすばらしい動画だった。

で、改めて思ったんだけど、このスキャットって・・・いいよね・・・

歴史前夜 - Twitter Search / Twitter

この曲は2003年にエレファントカシマシROCK IN JAPAN FESTIVALで披露した曲だそうで、一切の歌詞がなくスキャットで披露されている。タイトルもなく、ステージ初披露だったそうで、当時のお客さんは相当ぽかんとしたと思う。「悲しみの果て」や「今宵の月のように」といったヒット曲を期待していたら全然知らない曲を演奏し始めて、何か歌っているようだけど何言っているかわからない。フェスにはファン以外の人もたくさんいただろうから「もしかして外国語?」と思った人もいたかもしれないし、「活舌が悪いのかな?全く聞き取れないぞ」と思った人もいたかもしれない。

僕は40代、50代の円熟味を増した宮本さんの魅力を知った上で令和に動画で観たので「お~かっこいい!」と思いながら見られるが、当時観客席にいた人は相当戸惑ったと思う。現に映像にもいまいち乗り切れずに呆然としているような観客や唖然とするスタッフが映っている。

のちに『扉』(2004年)というアルバムの中に歌詞の付いた「歴史」という同じメロディの曲が収録されたことからこの時のスキャット版は「歴史前夜」とファンの間で呼ばれるようになったらしい。またこの時のライブは新曲ばかりを披露し、ヒット曲を演奏しなかったことで結構叱られてしまったのだとか。Rockですね。18年前のまだ反骨心たっぷりのロックスターの姿がそこには映っています。

何度か聞くとこの時のパフォーマンスは実に味わい深い。歌詞はないが、なんだか少年時代の自分の歴史を静かに振り返り、「そして今も俺は歴史を作っている!」「まだまだこれからだ!俺たちが歴史を塗り替えるんだ!」というようなワクワク感を感じる。ベースのドドドドドドドドという音が心臓の鼓動のようでもあり、振動のようでもある。何か革命前夜のドキドキがどんどん増していき、サビになってさらに疾走感が増していく。「いくぜ!俺たちで歴史を作ろう!」と言われているみたい。これ、ドラマとか映画とかにもぴったりだな。不思議な高揚感がある。

エレファントカシマシ 歴史前夜 - YouTube

で、当然「歴史前夜」を聴くと、本編の「歴史」も聴いてみたくなるのだが、ネット上では「歌詞がないほうが良かった・・・」と酷評の嵐。どんな曲なんだろうと逆に興味がそそられて本編の「歴史」を聴いたみたら・・・・ははは・・・納得です。ま、宮本さんらしいといえばらしいのかな?

歴史 - YouTube

 

ちなみに、僕はお気に入りの動画の中に、歌詞抜きの歌唱のものが結構あって、改めて「俺って、スキャット好きなのかもしれない」と思った次第だ。

僕は昔、即興劇を習ったことがあるのだが、その時に「日本語や外国語など意味のある言葉を使わずに表現をする」という練習があった。それが想像以上に難しく、どうしても「パパラピポー」「バブバブー」みたいな単純な音の繰り返しになったり、感情が全く伝わらなかったりしてしまう。だからスキャットの難しさもなんとなくわかる。「ルルルー」や「ラララ―」だけでなく、言葉にありそうでない音の羅列で歌うことって本当はすごく難しい作業だし、それで感情や意味、イメージを伝えることはさらに困難だ。

 

僕が特に「すげぇ」と思ったのが玉置浩二さん。Kinki Kidsのために即興で曲を作った時の映像が大好きで、何度も観ている。

【驚愕映像】玉置浩二さんが秒でたかみなを泣かしてしまう《みなさんチャンネル登録ありがとうございます✨》 - YouTube

玉置さんはこの”スキャット”の達人らしく、J-POPアーティストの中では随一と言っていいと思う。

玉置浩二 進化の軌跡 2015〜2019 田園 スキャット - YouTube

ASKAと玉置浩二のお遊びを、お楽しみください。 - YouTube

 

もう一つはSuperflyさんの「Ah」

これも最初に聴いた時の衝撃はすごかった。

「あ」だけで歌っているのに、優しさ、慈愛の深さ、壮大さ、はかなさのようなものが自然に伝わってくる。Superflyさんの表現力に脱帽だ。今、ネット上には歌の上手い女性ボーカリストやら歌ウマキッズなんかの動画がたくさんバズっているけど、Superflyさんはちょっと次元が違う気がする。本物中の本物。歌ウマを自称する人たちはぜひともチャレンジしてほしいお手本のような動画。そういえば平原綾香さんなんかもレコーディングの時はまずはスキャットで歌うとテレビで言っていたな。言葉(歌詞)があることで却って表現力が弱くなってしまうことがあるのかな?Superflyさんの「Ah」は歌詞ありもいい曲なんだけど、僕はなぜか歌詞なしのほうを何度も聞きたくなる。歌詞がないほうが聴く側に色々なイメージを持たせる自由を与えてくれている気がする。

Superfly 『Ah』Music Video - YouTube

 

『歴史前夜』もそんなパフォーマンスだったように思う。

でも僕が人に勧めるときにはやはり「『歴史』のほうは聴くなよ。『歴史前夜』だけにしておけ」と言うだろうな。森鴎外のファン以外には。