先日、”この歌の歌詞がいい!”としてマカロニえんぴつというグループが歌う『なんでもないよ、』という曲がテレビで紹介されていた。テレビでは
会いたいとかね、そばに居たいとかね、守りたいとか
そんなんじゃなくて ただ僕より先に死なないでほしい
という歌詞が感動的な究極のラブソングだ!などと紹介されているし、ネットでは曲のタイトルの最後の句読点(、)に大きな意味がある!と考察されている。
僕は今年50歳になるので、正直この歌の歌詞を見ても「なんかはっきりしない子だなぁ」とか「結局、恋愛をしている自分に酔ってる?」なんて思ってしまうのだが、それよりもこんな感じのフレーズを子供の頃にも聞いたことがあったなぁ・・・
なんの曲だったろうなと思っていたのだが、本当に偶然にもYoutubeのお勧めに出てきてびっくりした。それは曲ではなく、高橋留美子作の『めぞん一刻』という作品の中に出てきたセリフだった。
当時好きだった斉藤由貴さんがアニメの主題歌『悲しみよこんにちは』を歌ったのでなんとなく見てみたのだが、これがまた思春期の中学生には色々な意味での刺激のなる作品だった。
めぞん一刻 OP 4K高画質 斉藤由貴「悲しみよこんにちは」 - YouTube
簡単に言うとお人よしで損ばっかりしている浪人生の伍代勇作と一刻館というアパートの管理人としてやってきた音無響子の恋愛を描いた作品なんだけど、ヒロインの音無響子さんがすごく魅力的で良かったんだよな。年上で、美人でしかも未亡人。優しくて生真面目で、ちょっと天然で鈍感、しかもツンデレで可愛いんだ。ニキビ面の中学生だった僕は将来こんな人が僕の近くに現れたらどうしようかと本気で悩んだものだ。毎日毎日布団の中で「年上の女性と付き合えるのか?俺、ロリコンなのに」「未亡人って!重そうだよなぁ~。ご主人のことが忘れられなかったらどうすればいいの?」「でも恭子さんのリアクション、いじらしくてかわいいんだよな~」「あんな優しくてかわいい人と一緒にいられたら幸せだろうなl~」なんてニヤニヤしながら考えていた。そして一刻館の超個性的な住人にカラまれるのに怯え、恋のライバルの出現に怯え、冴えない浪人生なのになぜか美人にモテるシチュエーションに怯えていた。思春期の中学生男子は大変だった・・・。
で、最後は伍代君が「結婚してください」とプロポーズをするのだが、その後に響子さんが言ったセリフがいじらしかった。
「一日でいいから、あたしより長生きして…」
このセリフは若くして最愛のご主人をなくしてしまった響子さんだからこそ言える、響子さんだからこそ生きるセリフなんだろうな。(語感的にも「先に死なないで」より「私より長生きして」のほうがポジティブで響きがいい)
今は僕も結婚をして一児の父親になってしまった。だからそう簡単に死ぬわけにはいかない。毎日ウォーキングをしたり、ストレッチをしたり、納豆を食べたりしながら急にコロっと逝かないようにがんばっている。
が、正直言うと最後は奥さんに看取ってほしいなとは思う。僕は極端に人付き合いが少ないし、近所づきあいも下手なので、葬式で泣いてくれそうなのは奥さんくらい、参列者も親族数名といったところだと思う。仮に奥さんに先に逝かれて僕一人残されてしまったら、寂しいということに加えて「俺が死んだときは誰も処理してくれない」という事態が起きる。
そうか、ということは僕はマカロニえんぴつ的に「僕より先に死なないでほしい」と奥さんにお願いするべきなんだな。