子「パパ、僕、将来はYoutuberになって宇宙に行きたい」
父「・・・。Youtuberはわかったけど、なんで宇宙なの?」
子「なんか今、ちょび髭のYoutuberが宇宙に行ってるんだって」
父「あの人、Youtuberじゃないよ」
母「あ、でもWikipediaには”実業家、起業家、ミュージシャン、Youtuberって書いてあるわ…」
父「ミュージシャンって・・・」
子「ね、だから僕もYoutuberになってお金持ちになって宇宙に行くよ」
父「うん・・・でも宇宙に行くならその~・・・宇宙飛行士になって行ったらどう?」
子「宇宙飛行士ってどうやってなるの?」
父「そりぁあ・・・まあ大学行って勉強して、何か専門性を手に入れて、そんで宇宙センターみたいなところに務めてっていうのが王道だろうな・・・」
子「う~ん・・・ちょっと遠回りじゃない?」
父「遠回り?だって、それが一番ストレートな道じゃない?」
子「ネットで一発当ててお金持ちになれれば宇宙に行けそうじゃない?」
母「あ~・・・イマドキねぇ~」
父「いや、ネットで一発当てるのって近道か?」
子「HIKAKINとかヒカルみたいになれれば簡単じゃない?」
父「いや、それが難しいんだって。別にYoutuberになってもいいんだけど、それで生計を立てられるようになるにはだね、いろいろと・・・」
子「なんか宇宙から友だちに電話したり、Twitterに投稿してるんだって。”宇宙なう”って」
父「なんか、宇宙も安っぽくなったな・・・」
母「他のYoutuberはまだできてないからね。生配信とか動画投稿をしまくってるみたいよ」
父「ああ~・・・それで再生数も上がって旅費回収できたりして。でも本当に宇宙が安っぽく感じるな・・・」
母「ま、あくまで宇宙”旅行”だからね。今後他のYoutuberも宇宙に行っていろいろやるんじゃない?”〇〇やってみた”動画なんてぴったりだし。」
子「僕もやってみたい。”宇宙でメントスコーラやってみた”」
父「いや、宇宙って、もっとこう人類の進歩のために研究をしたり・・・」
母「でも若田さんも”一人野球”やったり、山崎直子さんも赤いシャボン玉作ったり、結構おもしろ実験やってたよ」
子「僕もやってみたい。”Uber Eatsで注文したら何分で届くのか?”とか”シャトルの空気、全部抜いてみた”とか」
父「・・・きっと壮絶な失敗に終わるからやめときなさい。」
子「え~・・・僕も宇宙から友だちに電話したり、TikTok動画投稿したりしたいなぁ。あ、撮影する人も必要だからな。あと50億稼いで友だちのアキラくんも連れて行こう」
父「・・・」
母「がんばってね」
(その夜)
妻「なんで子供の夢を応援してあげられないのよ」
夫「いや、だって・・・宇宙へ行くならもっとまっとうな道があるだろう?」
妻「いいじゃない。子供の夢なんだから。夢は叶うって前澤さんも言ってたし」
夫「いや、全く共感できないよ!俺が今から何億って稼いで宇宙に行きたいって思ってもその夢は叶わないだろ?」
妻「あんたには言ってないわよ。もっと子供たちとか、若い人に言ったのよ」
夫「・・・」
妻「あんたもネットで前澤さんを批判している人たちと一緒ね。がんばって夢を叶えた人を賞賛できないなんてね」
夫「いや、批判はしてないよ。応援もしてないけど。別に自分で稼いだお金なんだから自分の好きなことを使えばいいよ」
妻「じゃあなんでそんな否定的なのよ」
夫「だから、否定はしてないって。でも賞賛もしない。」
妻「なんでよ」
夫「・・・・ひがみだよ!わかるだろうよ!俺なんてどうやってもあんな金持ちになれっこないんだから。」
妻「だからって、いちいち非難しなくても・・・黙ってたらいいじゃない」
夫「非難なんかしてないよ。っていうか、向こうが勝手に自慢してきてるんだから、こっちだってひがみぐらい言ってもいいだろうよ。貧乏人が金持ちをひがむのは世の常だろうが!人の性だろうが!」
妻「・・・まあね」
夫「なんか、学生時代にバックパック背負って貧乏旅行してた友だちが自慢げに『インドで世界観が変わってね・・・ガンジス川で見た夕陽が・・・』なんて居酒屋で話してたのをみんなシラケた気持ちで聞いてたみたいな感じ?」
妻「わからん」
夫「セレブが夜の東京上空をヘリで遊覧したって自慢してるのをテレビで訊いても『ふ~ん、落ちれば良かったのに』って思うことあるじゃない?」
妻「ないけど」
夫「ニヤけた金持ちのちょび髭が若い女優とサッカーW杯を見にプライベートジェットで日帰りで行ったとか聞いたら、嫌にならない?」
妻「だれのことよ」
夫「それって別に憧れもないし、『俺もがんばっていつか・・・』みたいにも思わないし、『努力が実ったんですね。感動しました!勇気をもらいました!』って展開にもならないじゃない。」
妻「まあね。なんでだろ?」
夫「レベルが違いすぎるんだよ。俺が武井壮とか孫正義だったら、宇宙にいる前澤さんから電話が来ても『良かったね。楽しんでね。気を付けて帰ってきなよ』って言えるよ?精神的余裕があるからね!でも今の俺には無理!」
妻「ま、そもそも前澤さんから電話は来ないけどね」
夫「あと、前澤さんが苦労してがんばって財を築いた過程を俺は知らないからね。共感できんのよ。実は苦労人だったとか、実はチャリティーな人とか、情熱大陸に出てたとか、そういうの知ってたら見方は変わったかもしれんけど。」
妻「確かに、いつもにやけて幸せそうだしね。きれいな女優さんをとっかえひっかえしたり、普通の日本人にお金配ったり」
夫「だから興味ないの!所詮金持ちの道楽だと思ってるの!俺はやつが金を配っても受け取らないぞ!Twitterもフォローしない!チャンネル登録もしない!」
妻「ひがみもそこまで行くと潔いね。」
夫「たぶん世の中の大半は俺と同じなんだよ!貧乏人なんだよ(根拠はないけど)!だからみんなでひがんでんだよ!」
妻「でも応援の声もあるじゃない」
夫「そりゃあ俺だって10代、20代ならこんなにひねくれてなかった!自分の可能性を信じてたよ。なにかで一発当てようと思ってたからね!」
妻「それはそれでイタイけど・・・」
夫「悔しいじゃない・・・俺より年下で、俺より成功してて、大金持ちって・・・」
妻「その悔しさをバネにがんばって自分のできる仕事をするしかないじゃない」
夫「・・・でも宇宙にはいけんよ」
妻「それは息子に託せばいいじゃない」
夫「・・・そうね。息子が何かで一発当てて、前澤さんみたいな世界的なセレブに・・・」
妻「あ、でもWikiによると、前澤さん世界長者番付で1135位、日本で23位だって。」
夫「・・・え?まじ?」
妻「保有資産額は2020年5月時点で20億ドル(2272億円)か・・・それでも日本で23番目なんだね」
夫「上には上がいるな・・・」
妻「ま、下にも下がいるわよ。あなただって最低というわけじゃないんだから、がんばりなさい」
夫「ぎゃふん」