俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

錦鯉・渡辺さんはかなり有能

なんだか今週はおじさんたちががんばっている姿をたくさんテレビで観た気がする。

『ロンドンハーツ』(日本テレビ系)では芸人運動会で46歳のアンタッチャブル柴田さんが第7世代の若手芸人を抑えて優勝。また同日夜の通常放送では50歳の藤本(フジモン)さんの”太夫フェス”だけで1時間。

また『水曜日のダウンタウン』では「第7回替え歌王最強トーナメントで47歳のハリウッドザコシショウがこれまた若手を抑えて優勝。

そして週の最後の今日、『M-1グランプリ2021』(テレビ朝日系列)で50歳と43歳のコンビ”錦鯉”が優勝。

今年4回目の年男となる僕も実に勇気づけられる1週間だった。

f:id:Yamazy2019:20211220004650p:plain


で、M-1グランプリ、僕もライブで観ていたのだがなかなか見ごたえがあった。他のコンビのほうがおもしろかったという声も当然出るだろうけど、錦鯉の優勝もまた頷ける。特に印象に残ったのが錦鯉のツッコミ、渡辺隆さんの有能さだ。

錦鯉といえば、どうしてもボケの長谷川さんが目立つのは仕方がない。あの見た目、50歳という年齢に関わらずハイテンション、あまりにもバカバカしいボケと動き。一歩間違えば”おじさんがハシャいでいるのを観るのは痛々しい”と若い人に思われてしまう錦鯉のネタをギリギリのところでとどめているのが渡辺さんだ。

渡辺さんは43歳に思えないほどの落ち着きで、しっかりしたおじさん然としている。白いYシャツにネクタイ、黒か紺のスーツと身なりもしっかり、体型も中肉中背とどこにでもいるおじさんだ。だから長谷川さんの隣に立つと保護観察官とか教務主任とか、警察官に見える。そして大声でバカバカしいことを言う長谷川さんの後頭部を絶妙な力加減ではたきながら、やや小さい声で的確にツッコミのワードを入れる。僕はあまり大声でがなりたてるようなツッコミが好きではないので、渡辺さんのツッコミは好印象。またあれだけ後頭部をはたいているのが、スキンヘッドがきれいに「ピシャ!」「ピシャ!」と小気味良くなるので不思議と嫌悪感がない。

M―1】王者・錦鯉に「もらい泣き」…SNSでトレンド入り「こんな全員もらい泣きするんだったか?」などの声:中日スポーツ・東京中日スポーツ

渡辺さんは時にぶっきらぼうに「おじさんが合コンとかいうなよ」「穴でも掘ってろテメーは」と口の悪いツッコミをするが、基本的には奇行と虚言が目立つ相方に振り合わされるので威圧感がない。むしろジジイの徘徊に付き合う介護職のようにも見える。

渡辺さんの真骨頂は黙っている時の視線、姿勢、表情にある。長谷川さんの話を聞くときにしっかりと演技をしているにも関わらず、強烈な相方のキャラクターを生かすためにその存在感をしっかり消している。そしてネタ後半の「紙芝居」のくだりではしっかりテンポと感情を上げて盛り上がりと見せ場を作っていた。

ツッコミのタイミング、ワード、強さ、演技、ボケの活かし方、自身の存在の消し方、どれをとっても渡辺さんは・・・ウマい。

錦鯉【決勝ネタ】1st Round〈ネタ順8〉M-1グランプリ2021 - YouTube

そして何度か錦鯉のネタを観返すと、実によくできたコンビとネタだと思う。

長谷川さんは大声で話すものの、テンポ自体はスローだ。そしてボケとボケの間にしっかり間があるのはインディアンズと対照的だ。そしてその間(ま)を渡辺さんのツッコミが埋めて客に笑うタイミングを与えている。また昨年に引き続き2回目の決勝進出と言うことで観客は「異常に元気なおじ(い)さん、長谷川さんのバカバカしいボケ」で笑えばいいということがわかっているので安心して観ていられる。この”わかりやすさ”は令和では逆に新鮮だ。昭和の芸人さんが昭和のまま、おじさんのまま受け入れられているというのは本当にすごいこと。きっと幼稚園でも老人ホームでも錦鯉のネタはウケると思う。(フォーマットとしては”キャイ~ン”に似ているかな?)

 

ちなみに今回のブログを書くために、渡辺さんの動画をYoutubeでいくつか観てみたのだが、トークも上手いし、キャラも立っていてテレビの世界でもまだまだ活躍できそうな気がするし、大のAV好きということで裏舞台での活躍も期待できる。

とにもかくにも、錦鯉は長谷川さんのキャラクターだけのコンビではない。実は有能な渡辺さんがいて、ネタが輝くというのを実感した今年のM-1でした。

錦鯉のお二人、おめでとうございます!

錦鯉【決勝ネタ】最終決戦〈ネタ順2〉M-1グランプリ2021 - YouTube