俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

おじさん力

その昔、作家の赤瀬川原平さんが『老人力』という言葉を作った。”老人力”とは「物忘れが激しくなった」「目が悪くなった・耳が遠くなった」といった老化による衰えをマイナスと捉えず「老人力が付いた」というプラス思考へ転換する逆転の発想だ。「記憶のほうで老人力がついて、メモをするようになった。最近じゃメモしたことも忘れて大爆笑!」なんて言えるようになったら、確かに人生楽しいかもしれない。

そこからすると、僕は最近、だいぶ「おじさん力」がついてきたような気がする。嫁がそれをプラスに受け取っているかは不明だけど。

老人力(赤瀬川原平 著) / 古本、中古本、古書籍の通販は「日本の古本屋」 / 日本の古本屋

それは先月のこと、3年ぶりに会った知人から、「ああ、どうもお久しぶりです。あれ、〇〇さん、だいぶ貫禄がつきましたなぁ」なんてことを言われた。それを言われた時は単なる社交辞令だと思っていた。だって中身はほとんど成長していないことは自分がよくわかっている。

男というものは何歳になっても中二病が抜けないものである。僕の中で思い当たることと言えばいまだに

・不良に絡まれて、相手をボコボコにしている自分を妄想

ひろゆき氏を論破している自分を妄想

・いつまで経ってもスポーツ万能でパワフルで、仕事中にちょっと手を貸しただけでもその片鱗が見えてしまい、女子社員に「すご~い」と言われる自分を妄想

・仕事ができる上司として、密かに女子社員に言い寄られ、AVみたいな展開になるシーンを妄想

・自分がスターになったストーリーを頭の中で創作(プロ野球編、プロサッカー編、プロレスラー編、力士編、バスケ編、役者編、タレント編、スパイ編などなど)

・テレビのコメンテーターとして、池上彰さんと林修先生を足して2で割ったような、物知りで解説上手で、バラエティ番組にも絶妙に対応できる自分を妄想。

・本気を出せば、今でも学生時代のように徹夜で勉強したり、体を鍛えたりはできるはず。

・仕事でどんなトラブルが起きても、クレームが来ても、感情を一切出さず、冷静に大人の対応をしているつもり(が内心ガクブル)

・クワガタとかカブトムシを見ると今でもいじりたくなる。

・今でも普通にJKモノに欲情

などなど。僕は自覚症状があるだけましだと思っているが、とにかく「俺って成長していないな。未だに脳みそ少年だな。まずいな、来年50歳なのに。俺が思い描いていた50と違うぞ。50って、もっとこう何でも知ってて、頼りになるイメージだったのに・・・」なんてことをこの10年ずっと思っているし、「これで実は中身が大人になりきれていない頼りにならないやつってバレたらどうしよう・・・」といつもビビっているのである。

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そんなある日のことである。職場の同僚に「〇〇さん、この前の集合写真送りますね」と言われ、LINEで送られてきた職場の集合写真を見て驚愕してしまった。そこにはサイドが白髪だらけの、でっぷりと太ったおじさんが映っていたのだ。で、スマホを縦にしても横にしても、ピンチアウトしても、何をどうあがいてもやっぱりそれは僕だったのである。

僕は毎朝鏡は見ているし、おなかが出ていることもわかっている。でも鏡で見る自分の顔は自己評価が高くなりがちなのは承知の如し。おなかも鏡の前では都合よく息を吸ってへこましたりして「うん、まだ大丈夫」なんて自分に言い聞かせていたのだが、この写真の中の僕はごまかす隙もないくらい、中年太り・白髪交じりの完璧なおじさんだった。

しばらくショックで固まったのち、「これが・・・知人の言ってた”貫禄”ってやつなのか?」と都合のいい変換をするようになった。

僕の同年代の同僚にはヒョロヒョロっとしたやつが多く、僕はいつも「おいおい、ビシっとせんと若い奴らにナメられるぞ」なんてちょっとマウントを取りつつ、自分の腹をさすりながらちょっと「いいな、なんであいつ酒好きなのに腹出ないんだ?」と羨ましく思っていたりした。

で、ここ数年、その同年代の同僚と一緒にいるときに外部の人に会うと、妙に僕のほうに気を遣われるというか、先に挨拶されたりヘコヘコ頭を下げられたりするのである。最近僕はおなかが出てきたことに加え、猫背矯正のために胸を広げて肩甲骨を寄せるようにしているのだが、それが”ふんぞり返って偉そう”に見えるらしい。頭の中身はスケベなことしか考えていないのに、横柄な役職持ちに見えてしまうのか、妙に大事な相談をされたり、丁寧な接客をされたり、相手がこちらの話を聞いてくれたりするのだ。

中年太りが幸か不幸か”貫禄”に変換されているのだ。これは”おじさん力”がついたと言っていいのではないだろうか。これを言い分けに餃子と唐揚げをビールでやっつることを嫁に提案してもいいのではないだろうか。

おじさんがどんなに若作りしたってストレスになるだけだし、おじさん然としていたほうが職場で信頼されるなら、それはもうおじさんでいたほうがいい。若い人に見た目でバカにされても、社会ではおじさんのほうが仕事の信頼度が高い、はず。

よし、これからは親父ギャグもガンガン行って、どこでもブリブリおならしちゃうぞ。昭和大好き!

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