俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

TikTokは避けられぬ?

社員:社長、今月も我が帝徳自動車学校の入学者は前年度を下回りました。

校長:少子化で若い子も少なくなってるし、自動車離れも進んでますしね。

社長:コロナの影響もあるしな。せっかく8年前にマナー講師のH林都先生にしごいてもらって、「笑顔で優しく丁寧に教える自動車学校」へと生まれ変わったのに・・・

校長:いや、ネットでは「作り笑顔の鬼教官、キモ!」って書かれてましたよ。

社長:え?そうなの?

社員:とにかく、若い人にもっとアピールしないと。学生さんとかがたくさん来てくれれば、知り合いとか後輩にも紹介してくれますし、いい流れができるんじゃないですか?

社長:そうだな。じゃあ、若い人にもっとうちの学校を知ってもらわないとな。新聞、電車の広告、近くの大学にもパンフレットを置いてもらおうか。

校長:あと駅とかロードサイドの大看板とかですかね。

社員:いや、そんなの今の若い人は見ませんて。SNSですよ、SNS

社長:MSN?

看板制作 | 自動車学校の広告はマーケティングデザインへ

 

校長:社長、あれですよ。Facebookとか、mixiとか。

社員:いや、いつの時代ですか。Z世代はmixiなんか知りませんよ。

社長:ぜ、Z?水木一郎的な?

校長:いやだな。社長ってば昭和なんだから。Zといえばももクロですよ。早見あかりが抜けた後の世代。

社員:いや、それもちょっと・・・

校長:今、若い子って何使ってんの?LINEとか?あ、あれか、インスタか?

社員:今ならTikTokじゃないっすか?

校長:ああ、あれか。

社長:何それ?てぃっく?

社員:あの・・・これです。若い子みんなやってますし、”TikTok売れ”なんて言葉もありますし、企業も広報戦略の1つとして、結構利用してます。

社長:・・・・これをどうしろと?

社員:いやだから・・・撮るんですよ。

社長:だれが?

社員:ま、撮るのは僕がやりますよ。その代わり社長が出てください。

社長:は?おれ?やだよ、恥ずかしい。

校長:出たらいいじゃないですか。目立ちますよ。有名になったりして(笑)。

社長:やだよ、恥ずかしい。俺、もうすぐ60だよ。若い奴に媚びてるみてーじゃん。

校長:でも日本のTikTokユーザーの平均年齢は34歳くらいだって言ってましたよ。けっこうおじさん、おばさんのクリエーターもいますし。あ、この人なんて70歳ですって。よく踊れるな。

社員:別に上手に踊る必要はないんですよ。むしろ社長の世代はちょっと不器用なくらいがかわいく見えます。

社長:・・・ピエロになれと?

社員:・・・

おじさんがオフィスで踊りまくり! タクシー会社のTikTokが話題→なぜ始めた?出演社員に聞いた(全文表示)|Jタウンネット

社員:えっと・・・まあ、フレンドリーな社長とユニークな校長がいる自動車学校をアピールすれば若い子も来やすいかな、と。

校長:え?俺も?

社員:ええ、もちろん。校長は頭もあれですし、ちょび髭かなんか描いて社長の横で踊ったらけっこうキャッチ⁻かも!

校長:やだやだやだやだやだ!絶対に嫌!

社員:なんでですか?やってみたら楽しいかもしれませんよ?

校長:え~、絶対いや!だって、コレ見てみ?いい年したおっさんがみっともない!社長だけならまだしも俺までピエロになるなんて絶対いや!。俺はインスタグラムもTikTokもやらないって決めてんの!若い奴らは若い奴らで楽しめばいいんだよ。おじさんが無理やり若い人のマネをしようとするなんてみっともないったらありゃしない!俺はね、もう若者の文化を無理やり理解しようとするのは止めたの。もう若い人と関わらないまま定年まで過ごすって決めてんの!

社員:でも仕事ですよ。

校長:!!

社長:仕事のためには・・・プライドを捨てて、踊らにゃならん。

校長:社長まで!?

社長:これはビジネスのためだ。客を呼ぶためならピエロにでもなろう!

校長:まじっすか?

社長:まじだ。

校長:他に方法はないんですか?

社員:まあ、TikTokはうまく行けば一気に拡散されますし、対費用効果は計り知れません。早ければすぐ申し込みが来るかもしれません。もちろん毎日更新したり、面白い動画を作り続けないといけませんが。

社長:広告費もバカにならないしな。自分がピエロになることで経費が浮いて、売り上げが伸びるならこんなに効率的なことはない。

校長:でも社長!いくらなんてもTikTokなんて!僕ら50代ですよ!そこまでしないとダメなんですか?

社長:そこまでしないとダメなんだよ。若い世代に媚を売ってでも、学校に来てもらわねば・・・そして収益を上げなければ・・・今年もボーナスが出ないんだよ!

校長:!!僕らは・・・そこまで追い詰められているんですか?魂を売ってまで、プライドを捨ててまで、踊らなければならないんですか?

社長:踊らなければならんのだ!バズらねばならんのだ!

社員:いやあの、TikTokってもっと気楽にやったほうが・・・。観ている人に楽しさが伝わらないと・・・

社長:やるぞ!校長!我らが踊らにゃ、家族が路頭に迷う。お前の息子も大学に行けん!

校長:・・・わかりました・・・やります。

社長:元気を出せ!辛気臭い顔をしとると若者がよってこんぞ!ボーナスのためだ!笑顔を作れ!必殺!平林スマイル!

社員:いや、きついって・・・。あの、もっと楽しみましょうよ。踊ってるうちに楽しくなりますから。

社長:そうだな。昔ディスコで鍛えた腰がうなってきたぞ!

校長:・・・

社長:こんなのはどうだ!サタデーナイトフィーバー!ジンギスカン!ステインアライブ!

社員:・・・あの、僕が振り付けを考えますね。ちょっと運転の動きとか、バックする時の振り返ったポーズなんかも入れたほうがおもしろいかな。

 

社長:こうか!こうか?もっと腰をこうか?!

校長:・・・

社長:こうか?こうなのか?これでフィーバーなのか?!

校長:・・・

 

おしまい

TikTokで大人気となった“踊るタクシーおじさん”誕生秘話、採用活動に効果も!|TikTok Japan【公式】ティックトック|note